百合小説 【第46話】同性愛でも受け入れてよ
朝7時30分、こんな朝から誰か来たと思えば嘉陽田さんだった。電車だとしても40分はかかるのに…。
「おはよう!さっちん〜行こ?」
「なんでわざわざ…そっちから言った方が近いのに…」
「いやー昨日は倒れちゃったしね、それにこうでもしないと来ないかな〜なんて」
「えぇ…」
来るのは言いけれど、来る時は予告もなく訪れるのはやめて欲しい。玄関で話していると階段から近づいてくる足音と元にママがサンダルを履いて嘉陽田さんに声をかけた。
「あら嘉陽田さんじゃない、ちょっと待ってね、あとこれ、おじい〜〜!!!」
玄関から大声を出しておじいちゃんを呼び出したようだ、1歩1歩ゆっくりと降りてくるようなそんな足音と共に2人は少し雑談をしている。
「朝からうるせ…」
「あ、おじいさん!初めまして小百合の彼女の嘉陽田です」
予告もなく金色の手榴弾は守りの隙を与えずに暴発した。
「はぁ?」
「いや、ちょその、それは」
そらそうなるだろう。だって私の家庭は
「ご冗談をまったく、小百合が男の子だったらそんな事もあったのかしらねぇ」
同棲愛なんで受け入れられるはずがないのだ。
「あの、冗談じゃなくて」
影井さんが声を張り威嚇するように主張する。
「んじゃ子供は産めないのか?産めないなぁ」
「女子同士、付き合う事の何が悪いんですか?今は同性愛も受け入れられていいご時世だと思いますけど。」
残念だが、うちの叔父は女性を産む機械という価値観が強いのだ。母親は、普通でありたいと思うが故こうなってしまったのだと思う。
「朝ドラの件といい今の件といい、中身は美人でもこれじゃぁなぁ。失望したわ」
「いいじゃん。別に」
ふと漏れた言葉が、私の本音だと言うことの気づくのはそう遅くはなかった。
「なんだ、わしはな、曾孫を抱きたいんだよ。進学校なら優秀な男子はいっぱいいるだろ」
「うるさい!!!人の人生に干渉してくんなよヨボヨボジジイ!あんたが年金貰える前に退職したから今もパパが朝から夜まで稼ぎに行ってんだろうが!」
「結婚する気ないなら働きゃ」
「学歴と年収は比例するんだよ!だから今頑張ってんだろうが!」
「あぁ…拉致あかない。」
「小百合!お父さんもそれ以上はダメです。」
まただ、また熱が入った。こうやって今まで人間関係をダメにしてきたんだ。
「その…ごめんなさい」
「俺らの時代なん」
「お と う さ ん !」
杖で私を叩こうとするおじいちゃんをママがすかさず止めに入る。
「小百合、帰ったら話あるから嘉陽田さんも大丈夫かしら。」
私は頷くだけで精一杯だったか、嘉陽田さんは、真っ向から立ち向かうつもりらしい。
「いいですが、条件があります。」
「あら、何かしら」
「話し合いは家の外、高校付近のの喫茶店を予約するのでそこでお話しましょう。」
「嫌だって言ったらどうするのかしら。」
「今のお話は録音させていただいていました。ですので、その後は分かりますね。」
「図々しいわね。わかったわ」
「いこ、小百合」
「…うん。」
私の意向で高校までバスで向かうことにした。土曜ということもありさほど混んではなく、中に入って右奥の席に座る。
「さっきの、ありがとう。」
「いいっていいって、いやぁ〜それにしてもムカつくねぇ〜別にいいじゃん人の恋事なんて。」
「けど…わざわざなんで…」
「私本気だから、まずご両親に説得しないと」
「その前に私のことを説得してくださいよ」
窓際にいる私の体に寄り顔を覗き込むように顔を下げた
「嫌だった?」
「ずるいですよそういうの」
「あイテッ」
バスの揺れで椅子についた黒い取っ手に頭をぶつけ、それを理由に太ももに頭を載せようとするも嘉陽田さんの背が高いせいか席の幅的に不格好になる。
「バランス悪いですね」
「ほんとにそれ、座高低くなれぇ」
「起き上がってください」
「うあ」
嘉陽田さんを起き上がらせると、今度は肩ではなく頭によりかかってくる。これもこれでバランスが悪いと思う。カバンを取るために下にしゃがみ、カバンから無線のイヤホンを取り出してスマホに繋いだ。
「バスの中でいつも何聞くの?」
「福山雅治」
「聞いていい?」
「あぁ、うん。」
つけようとしていたイヤホンを渡そうとすると、その片方を取って返してくる。
「一緒に聞こうよ」
2人手を絡めながら『家族になろうよ』を片耳ずつイヤホンで聴いている。子供ができなかろうが、こういった形で嘉陽田さんと寄り添えるだけでいいと思った。
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