百合小説【第44話】
「明日から、我が校の学園祭『灯篭祭』が始まります。私も日比…」
つくづくどうでもいいような校長先生の話が延々と続いている。床にシートを敷いた体育館で学祭用に用意された椅子に座りながら話を聞いて…いや聞いていないと思う。前日にこんなにくだらない自伝を話すならば、校内アナウンスで済ませて欲しいと切に願いながら、半開きにして何とか耐えている。校長挨拶朝にやるのだけはやめて欲しい。
「高等部1から3年は残っていてください。」
「なんで?」
「問題あった仕方ないんじゃね」
「そうとは限らないでしょ」
「学祭実行委員会です。今年度の学祭は、例年とは違い、受験生と区外以外の入場者は抽選という措置になりましたね。実は、何人かにはお話していたのですが、『ユースフィルム』さんと協力でカメラ取材をしてもらっていました。」
ユースフィルムと言うと、最近SNSで「僕ら青春の1ページ」と題してYou〇ubeやT〇itterなどでヤケに盛り上がっている動画クリエイター集団。多分これで合っていると思う。
「そこで皆さんには、できるだけ多くの記録を残して頂きたいと思っています。ご自身のスマホでも、必要とあればカメラもお貸し致しますので、どうぞご協力をお願い致します。」
「これ前日に言う話じゃなくない?」
「もっと早く言えば、なんて声もあるでしょう。ありのままを撮影したかったので、1部の生徒と写真部、生徒会には既にお話して録画してもらっていました。」
要約すると、僕たちで様子を撮って置いて欲しいって話らしい。テレビは確かに取材拒否なのにクリエイターとなると…そこは同じ部類でまとめてもいいと思うな。
撮られたくない人もいるのは間違いないので、そういう人は挙手して貰うことになったが、見分けがつかないとのことて、肩に赤色のリボンを付けることになった。これはこれで悪目立ちしそうだけれど、口で言うのは苦手なので少し助かる。
「今日は21時で完全下校ですので、まだ作業が終わっていない生徒たちはそれまでに作業を終わらせてください。」
扉に近い2年次とと1年次が先に体育館から出てメイドカジノのある大教室に向かった。
「モヤモヤするねぇ…どこからどこまで取られていたか」
為井くんが階段の上り際、少しペースを落として私と歩幅を合わせる。
「同じくです。私顔映るの好きじゃなくて、それにネットでも出回ってしまったし…」
「Vの件もあるしね」
背筋が凍った。どこからの情報なのかソースは確かめておいた方がいい気がする。
「なん…で為井くん知ってるんですかそのこと」
「西条お前と話してる時よく言ってるし、ネットでもその疑惑出てたしそりゃ気になるだろ」
「そっか…あぁ…」
「落ち込むことないって、いいふらしたりとかもないし、気にすんなよ。」
「ありがとう…ございます。出来ればこういう場でもそういう話は」
「あ、悪い悪いつい」
「ついじゃないです」
「んで、動画どう?う〇ちゃん」
「違うが、そもそも乗るわけないが」
「ノってるじゃん」
「そういう訳じゃないし…」
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