百合小説【第30話】開催!全学系交流会①学祭と学級委員長。
主な登場人物一覧
【影井】黒髪ミディアムボブ低身長紫目巨乳
本作主人公、理系学系1年(1年留年)。陰キャで大手VTuber事務所所属。一人称は私。
【嘉陽田】金髪ロング高身長赤目。
本作ヒロイン、国際学系1年。陽キャで白石杏里として芸能界で活躍している。
【西条】青髪ツインテ小柄女子。
国際学系1年。頭がキレるセクハラ大魔王。
【伏田】身長198cm褐色男子。
国際学系1年。男子陸上強化指定選手に選定。
「はーいそれでは燈籠祭の出し物考えますぅ!」
午後6限のロングホームルーム。意気揚々と教壇に立ち、学級長が声を張る。
燈籠祭と言うと、この高校の学園祭で、毎年1~2万人程度が訪れる全国の高校の学園祭の中でもかなり認知度がある。
理系学系は毎年研究成果の発表やイライラ棒、プログラミングを活かしたプロジェクションマッピングなど小グループに分かれて、得意なことを行う。ちなみに私はどのグループにも属せず学祭にも行かず委員会にも属さない。
出し物を思いついたのか、キノコカットのメガネ男子が指先まで伸ばし手を高くあげる。
「はい二藤」
「漫才やりたい!」
「はいご自由に!次!」
これの、これのどこが学祭の出し物決めだろうか。次々と何か回答を出すが黒板には書かず次、次!と弾くように言い放ち、しまいには無言になっていく。そのタイミングで前の扉からノックが3回、「入れ」という合図で扉が開く。
「失礼理系くん達、今よろしゅう?」
西条さんだ。いや、西条さん達である。編入生歓迎会の時に見覚えのある顔ぶればかりで、中には嘉陽田さんも混じっている。ドアから覗き込み私を見つけた途端手を小さく振ってきた。
「誰。で…あぁ伏田!国際組か?どうした?」
学級長が伏田の顔…よりかは図体を見て伏田に話しかけるも、言葉を返したのは西条さんだった。
「相談がありましてな、ちいと聞いて欲しいのだ。」
「なんだ?簡潔に。」
これが学級長なのかと、なんというか独裁者という雰囲気が漂う。そんなに急かさなくてもと思いながら会話は弾んでいく。
「今回各学級が各々やるのではなく、全学級総まとめで作りたくてのぉ!」
「ほほぅ、話を聞いてやる」
「上から目線はいずれ痛い目見るぜぇ汝よ。」
「早く話せ」
「なかなかずぶといねぇ、今からここの二学系で交流会をしないかとご提案さ?」
「交流だと?馬鹿言え、仕事を増やす気か。」
「待てや飛鷹?そんな言い方ねぇんじゃねぇの?俺は関わってみたい。学系同士での関わりなんて体育祭でしかないもんな。」
「俺も二藤に賛成〜」
「全学級ってことは…体育とか芸術とか人文とかも入るのか」
「そゆこと!私たちで歴史作るの!楽しそうじゃない?」
嘉陽田さんが理系学系の教室に入り、興奮してか息が上がりながら胸を張って話している。男子はその容姿に惹かれてなのか、はたまた芸能人だからか、目に光を灯すものとカメラを向けるものと、静かな教室がざわつき始める。
「白石杏奈か、本当に入学していたんだな。ふっ、どうせ芸能人枠だろ?」
「その言い方なくない?アタシちゃんと実力で入ったんだけど?何?それって嫉妬なわけ?」
少し揉め合いになる。嘉陽田さんは仕事柄会話慣れしてるし、語彙も私に比べて随分と豊富な部類だと思う。対して理論武装で対抗する学級長だか、途中から反論を返せなくなり論点を変え始め、しまいには嘉陽田さんに対する侮辱まで口にし始め収集がつかなくなる。聞いてるこちらは大切な友人を理不尽に罵倒され不快で仕方ない。何か、私の知らない切れる音がした。
「…」
体裁?尊厳?そんな物は今どうだっていい。私が嫌われようがどうでもいい。ただその侮辱が許せないだけ。
「さっちん…?」
「いい加減にしてよ。聞いてれば何?事情も何も知らない奴が人の人生勝手に語らないでくれないかな?不愉快だから。」
「あ?陰キャがぐちッ」
飛鷹の顔を手で掴み、私の全体重を持って黒板に叩きつけた。その轟音は、この会話とこの人間の人望を終わらすのには十分だった。腰が抜け落ち膝から崩れ無様な姿を踏みつけようとした時に嘉陽田さんが私の体勢を崩すように手を引っ張り止めに入った。
「ダメだよさゆりん。それ以上やったらこいつと同罪」
「でも!!許せない!謝れ!謝れよ!」
本心からの叫びだった。法律でやり返せないならいっそ殺してしまえばいいなんて、どこかの外国人俳優が言っていた。復讐法なんて現代にはない。そんな事をしたら。本当に同罪になってしまう。床に這いつくばりながら飛鷹という人物はこちらを見上げて叫んでくる。
「気持ち悪いんだよ、陰キャのくせにこんな時にでしゃばりやがって」
口は止まらないらしい。私の足を手でつかんで離そうとはしなかった。
「卑劣だな、飛鷹。」
伏田がその手を足で踏み、聞いてわかる程の砕けるような異音が教室に響いた。
「伏田ぁてめぇ、これ週刊誌に出したらお前のスポーツ人生どうなるんだろうなぁ?」
「おい飛鷹、黙っていればなんだその態度は。」
「先生」
担任の先生が教室に入ってくる。元々帝国大の教授をしていて、昔にいた頭の良すぎる生徒が「数学の先生を変えろ」と猛抗議してそのまま就いてしまったと聞いている。
「途中から聴いていたがあらかた理解してる。今から別室だ。二藤、代理頼んでもいいか。」
「全然大丈夫ですよ、あとは任せてください!」
理系学系の学級委員長は、基本的に入試の得点と1学期中間考査の合計得点が1番高いものが学級長になる。この制度はいつから始まったのかは知らないが、やる気の有無に問わずこのような形になる。異端児や私のようなコミュ障の陰キャラが学級長になればそれはもう学級崩壊しかねない。
「二藤くん…どう?やらない?」
「あ、うん。やります!」
嘉陽田さんがそう話しかけ、あっさりOKが取れた。照れるように下を向いて友達に向かって手でジェスチャーを送っている。
「嬉しい!みんなもいいよね!」
そういった掛け声もありクラスの人達が賛同した。
「おい照れんなよ二藤」
「仕方ないだろおまじょうきょうわかかっ」
クラップが2つ、西条さんが手を叩きみなを注目させる。
「皆の者!これで良いかね?」
「はい!」
こうして、国際学系と理系学系の交流会が決まった。
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