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百合小説【第2話】宿題…手伝ってくれませんか……?!

「宿題…手伝ってくれませんか……?!」

反射で出たような気がする。国際学系は名前の通りで英語に特化していて、特に、校則違反なネイルも髪染めも化粧も刺青もなんでもありなクラスだったはずだ、多分。多分そう。

「もち〜うちくる?」

「いいぃぃぃぃでふ」

距離の詰め方がおかしい。初対面の人を家に案内するなんて、そもそも最初の距離感からおかしかった。

「えーーいこーよー」


…来てしまった。とはいえ国際学系の校舎でさすがに家ではなかった。にしてもお昼だと言うのにここには私たち以外居ない。どさくさに紛れて私の菓子パンを嘉陽田さんが食べてる。

「うち宿題ない代わりにやたらムズい討論とか議論とかそういうのばっかでさぁ〜いいなぁ〜宿題」

「よくないです、答え先生が持ってて丸つけできないし、そもそも分からないし…」

「えー自称進じゃんそれうける笑 なんのやつ」

「あの…」

自分の隠し事を曝け出すような不安感で腕が震える。震えた手で宿題を取り出した。

「うわぁー懐かし!中学でやったなぁ」

子供が玩具を見つめるような目で私の宿題を眺める。どういう生活をしたらここまで英語に興味を持てるのだろうか。

「これねぇ、あ、ここ子音で終わってるからyじゃなくてi、それでedつけるの!」


こんな調子で1時間かかっていたものが10分もかからず終わった、嘉陽田さん凄い、優しい。

「なんでそんなに英語できるんですか」

「カ○トをフォローしてるから!ふぉ」

訂正、やっぱ怖い。

「あと何個あるの」

「これだけなんだけど…」

「楽勝じゃん」

「38ページ」

「38?!エグチ!日本の詰め込み教育G●Qの圧勝って感じまじゾルタクスゼイアン」

何言ってるのかさっぱり分からない。この人がこうなだけ?それとも国際の人がこうなだけ?

「いつやるの」

「提出日までには」

「今!今やろーよー全部教えるからさーねぇ〜」

「あの、授業始まるので…」

嘉陽田さんが寂しそうな顔をして私の腕を握りしめる。その顔と裏腹に腕の力が可愛くない。

立ち上がるも、嘉陽田さんはさらに腕を強く握る。振り解けるほど私は力も気力も勇気もない。

「そうだ!イ○スタ交換しよ」

「イ○スタやったことなくって…」

また強引な

「じゃあ作ろうよ!私がさっちゃんの初めてもらうの」


………作ってしまった。押しに弱いなぁ…私。フォローしているのは嘉陽田さんだけ、いつもはT○itterに生息しているネット民なのでこう…もどかしい。イ○スタは陽キャがキラキラした青春をおくる人達の短編映画を見ているようで怖いイメージがある。慣れない手でQRコードを表示し、嘉陽田さんと繋がった。

彼女のフォロワーは…13万いる。

「13?」

「あ!、ごめんこっち」

もう一度読み込むことになり、QRコードで鍵垢を新しく貰った。こっちは学校垢だろうかフォロバしている。あのアカウントは一体なんだったのか。私のフォローは今鍵垢1つだけだ。

「放課後空いてる?うち暇でさ〜」

「分からない…です。あー…今日ママと何か」

「嘘下手すぎだよ〜へぇ〜〜ママ呼び可愛いね」

「お邪魔しました!!!!!」

「また放課後遊ぼうねえ」

何かから逃げるように教室を飛び出した。こんな声を出したのも産声をあげた時以来だと思う。何故ここまで親しく接してくるのか、ただトイレでご飯を食べたかっただけなのに、なぜ私なんかに。

歩幅を早め自分の教室に向かったが、そこに帰ると誰もいなかった。今日は生物実験室で解剖実習があることを忘れていた。授業開始の鐘がなる。嘉陽田さんに振りまされ神経を削られたような…。いつも使わない脳みそをフル回転し疲れたので、実験室まではスマホを見ながらゆっくり向かった。通知センターの欄にイ○スタからメッセージが

『さっちーーー筆箱忘れてるよ!!!!!』

画像が送信されました

『授業大丈夫かにゃ?』

慌ててリュックの中を探すと確かに筆箱が入ってなかった。一縷(いちる)の望みを賭けてくまなく探すと、4Bの鉛筆が1本リュックの小ポケットに入っていた。美術のデッサンで使ってた鉛筆の返し忘れに救われた。これで授業は何とかなりそう。

スマホをしまい足早に実験室に向かうと床を蹴る轟音が走った後の脈よりも早く近づいてきた。

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― 新着の感想 ―
屈託のない小百合が魅力的ですね〜。 13万……。すごいですね。 その正体が気になります。
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