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百合小説【第18話】好きになられるって、こんなにも苦しいんだね。

「私もね、中学の頃にそんなじような経験があってね、友達の女の子から告白されたの。」

こんな身近に同じような経験がある人がいるとは思わなかった。同性愛者は左利きの割合と同じ10%前後と聞く。そう考えれば身近なようだがら告白となればまた別だ。冷やかされたり、国によっては死刑もある。それ相応の覚悟があっての告白だと思う。

「すごい…その…覚悟ですね…」

「私もすごい驚いたけど、嫌では無かったからそのままお付き合いして、高校に上がるタイミングで別れちゃったけど」

「今の人…とは…その」

「旦那は高校の時にね、ああ見えて素行悪かったのよ。出会ったのは文芸部なんだけどね、他校と喧嘩して包帯ぐるぐる巻きで高校来たりして見てられなくってね。つい」

つまり文芸部所属のヤンキーという事か。今の落ち着いた雰囲気からは想像がつかない。女性は大人しい人よりもスリルがありそうな人を好きになりやすいなんて聞く。

「そういう人に惹かれやすいって言いますよね」

「それで小百合ちゃんはどうなの?杏里ちゃんのこと」

どう…って…

「ん……一緒にいると振り回されてばっかりで、いつも一方的で活発で疲れます。」

「けど視界に色がついた感じがして…ごめんなさい抽象的で」

「そういう感覚分かるなぁ、今までモノクロで写ってたんだって認識させられる感じかな」

今までの地味で退屈で面白みのない学校生活は嘉陽田さん1人で一変した。

「そうさせたのが杏里ちゃんなわけだ」

「はい…」

いないはいないで落ち着くが、なにか物足りなくなってしまった。刺激だろうか。

「嫌じゃないなら付き合てみればいいじゃない」

「??」

そこを悩んでいるのに軽々とそう言った。

「それだけ悩んでそれだけ必死に応えを探そうとして、どうでもいい人ならそこまでしないもの。」

経験からの自信だろうか、その言葉には確かな重みがあった。どこかの記事で読んだ、『女性は1度嫌いになると復縁しない』という話。嘉陽田さんを、嫌いになれる気がしないし、なっても何かしらで戻るような自信がある。答えは出ているのに口に出していいのか分からないもどかしさがある。

「でも…」

頭の中で理解していても心は追いついていない。

「それにこんなことできるの若い頃だけよ。大人になったら生活費とか仕事とか老後とか色々考えないと行けなくなってそれどころじゃなくなっちゃうんだから。」

老後、皆いつかは歳をとって消える命だ。誰かと一緒に過ごして、後を追ってか先に死ぬのか。嘉陽田さんの顔が浮かんですぐ消える。彼女の笑顔を思い出すとどうしようもなく胸が締め付けられ苦しくなる。言語化できない感情が溢れる。

「そうですね」

「あくまでもこれはわたしの意見。最後に決めるのは小百合ちゃんなんだからね。」

「はい…。」

「次いつ会うの?」

「この後です」

「…思ったより早いわね。」

「そうなんです。」

幸代さんが冷凍庫からカップ状のアイスを取り出してきた。

「今はゆっくり頭冷やして、これ」

「いいんですか?」

「瑞稀には内緒にしておいて」

「ありがとうございます」

そのアイスをパンケーキの上にのせ、その冷たさが私の体を落ち着かせてくれる。

話も長引き日は落ちて、壁にある時計は合流時刻近くの午後8時を指す。

「今日はありがとうございました」

「またね、瑞稀ともよろしくね。」

「はい、では」

喫茶店を出て、焦燥するこの気持ちに対する答えを出しに、神楽坂駅まで足を動かした。

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