百合小説【第12話】な…にこれ…?
「ここだよ」
2段階オートロックを越え8階の部屋に着く。暗証番号と指紋認証を使いそのドアノブを引っ張り中へ入った。
「あの…え?」
「これでも片付けたんだよ?」
下駄箱があるのに散乱した靴、溜まりに溜まったキッチンの洗い物、床に落ちた米粒を靴下越しに感じながらドアを開け嘉陽田さんの部屋に入る。スカートや下着、ジャケットなどの服と散乱したペットボトルや漫画などが無造作に積まれている。何とか見える机の上に化粧道具の山とコテやアイロンが転がり、他にも出したらもうキリがないと思う。
「すみませんやっぱ用事思い出したので」
「わかりやすい嘘つくなぁ」
正直宿題以前の問題だと思う…転校生…の部屋なんだよね?いつ引っ越したのかは分からないけど、どうすればこんなに汚くできるのかが気になる。
「これは…どこで住んでるんですか…?」
「ん?ここだよ?」
「えぇ…」
もはやここまで汚せるのは才能だと思う。確かに床にかろうじて座れるスペースが存在する。帰ることはできるだろう。ただ嘉陽田さんがいないと私は宿題ができない。
「あの…片していいなら手伝いますよ…?」
「あらあら嬉しいわ」
この部屋に躊躇なく案内できるのもすごいメンタルだが、部屋に入れた本題は片付けて欲しいとかそういう感じなのかと疑ってしまう。
「服いつもどうしてるんですか?」
「ん?そこら辺の拾ってる」
服がシワになり、床に毛が落ちている…下着も着たのか着てないのかは分からないが不衛生であることは間違いない。
「酷い…ですね本当に」
その後5時間はかかっただろうか、5回くらいの洗濯と、本や食器の整理整頓、見てはいけないものもあったのでそれはそのままにしておいた。
深夜掃除機をなんともかけて、取れない分はカーペットローラーで対処出来た…このマンションが鉄筋コンクリートで本当に良かった。
「凄い…床が見える」
「45L2つ出るってどうなってるんですか」
「えへへ」
褒めたつもりはないのだけれど嬉しそうに笑っている。
「ありがとぉ!」
膝立ちしながらたっている私にハグしてきた。
「ヘグ…あー…。はいはい」
相変わらず力が強いのはどうにかならないのだろうか。そこに頭があったので撫でてみた。サラサラで少し根元部分の黒が見え始めている。
「床にゴロンできる」
飽きたのか床で寝転び始めた。
「さちーおいでー」
「宿題やります。」
「ああ忘れてた」
2人で宿題の続きをやる。睡魔が限界を迎えウトウトしながらも無事に終わらすことが出来た。
「本当にありがとうございました。」
「いえいえ〜代わりと言ってはなんだが私にヨシヨシしてくれたまえ」
「うわ」
「え」
「あー…えー…フツカカンアリガトウゴザイマシタ」
「なんでかたことなのぉおぉぉぉぉぉこれはご満悦ですなぁ」
「喋り方気持ち悪いです」
そんなことを話しながら撫でている。撫でるような経験は少ないが、嘉陽田さんは丸と言うよりかは角張ってストンと落ちるようなそんな形をしている気がする。嘉陽田さんが体勢を変えベッドを壁に押し倒してきた。とても自然で、軽やかに倒してきた。
「あの…」
私髪をかき分け、何かを確認するように私の耳を見ている
「ピアス…開けたことあるの?」
「中学で少し拗らせてて…」
よくある厨二病的なものである。中学生の時はそういうのが大好きで、異世界アニメの詠唱を一言一句全て覚えるほどには熱狂していた。その名残である。今はあまり興味はないので穴が塞がり始めている。
「えーうそぉ可愛い…けどなんで左に開けてるの?」
「あの熱いです近いです!なんでもっと密着するんですか」
「ここ2人だよ」
「頭沸いてるんですか冷ましてください」
膝の上に乗られ体を密着される。一方的な行動に対し怒るような気力は毛頭ない。眠いのもそう、なんせ嘉陽田さんの体温が直に感じる。バニラのような香水も相まって頭がクラクラし始めた。黙り込みながらそれを辞める素振りは無いようだ。
「ねぇ」
「はぁ…なんですか」
「もうちょっとだけ」
「どうせ拒否してもどかないですよね」
「当たり」
眠さも相まって正直この状態で寝れそうではある。汗だくの服もどうにかして洗いたいし、物理の教科書は家に置いてある。何とかして帰る言い訳を探す。
「あの。明日早いので帰りたいです…」
「もう3時だよ?泊まっていきなよ?」
時計は深夜3時を指す、タクシーで帰ろうにもを金額を考えると詰みである。始発もありだが眠過ぎて学校を休むと思う。
「はぁ…わたし床で寝るんで」
もうため息するのも面倒で、このままでいいと思った。
「ベッドで寝ようよ床体調壊すよ」
「熱いんんですよ嘉陽田さん」
嘉陽田さんを突き飛ばした、イライラは絶頂を迎え、憤慨するように言霊をぶつけてしまった。
「そういえば気になってるんですけど、嘉陽田さんの恋愛対象って女の子なんですか?なんでそんなにスキンシップ激しいんですかおかしいですよ」
「あぁ…」
やってしまったと、この時ばかりはどう場を収めようかこのまま帰ろうかとすら悩んだ。
そんなことお構い無しに、私は唇を奪われた。
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