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百合小説【第10話】 嘉陽田さんのカミングアウト

「そういえばなんですけど」

「ん?」

「なんでうちの高校来たんですか?」

ふとした疑問だ、うちの学校に9月入試は行われていても枠が非常に少ない。下手したら10人受けても1人も取らないこともある。頭を撫でた手を太ももの間に挟み聞く姿勢を取った。

「私問題起こしちゃってね、虐められちゃって」

「え?」

スキンシップだろうか、ある程度は察しがつく

「高校が元々女子校でね、」

女学園(じょがくえん)ですか?」

「え、なんで分かるの…?」

私が中学受験で受けたのもそうだが、容姿と希少のあらさ、中学で芸能界を退いている辺りそうなのだと思った。実際に芦○愛菜がそれを理由に蹴っているはず。

「女子御三家ですし…はい。あとあそこ高速緩ですし嘉陽田さん落ちてた缶と蹴りそうじゃないですか?」

「偏見すごくない?」

「菓子パン」

「本当にごめんてぇ」

私の手を引っ張りつま先立ちしていたバランスが崩れる。

「あ、ごめ」

嘉陽田さんの座っている足に支えられた。その椅子を支えに立ち上がり、元々座っていた椅子に座る。

「…どうぞ続きを」

嘉陽田さんからはどことなくジャイアニズムを感じる。私は基本は隅で本を読むか推しの配信を見るかしたい側の人なので、そもそも私たちが絡んでいるのが不思議に思う。スカートを直し、聞く姿勢をとる。

「元々ね、塾通ってて、中学の時男女3人ずつの6人グループで動いててね、予備校終わりとか休みの日とか基本ずっと一緒に動いていたのね、渋谷のハロウィン行ったり高尾山登ったり湘南行ってみんなで遊んだり…けどさ、逆恨みってやつ?そのグループの子で聖哉って子と私が仲良かったんだけど、琴音がその子のこと好きでね、けど私知らなかったんだ、そんなこと思ってるなんて。今まで一緒だったんだけど、その琴音側の人達に裏で悪い噂とかいっぱい流されて、」

6人グループ…嘉陽田のイ○スタのタグ付けはそういうことだったのか…6人でよくつるんでいた投稿が複数あったのだ。

「嘉陽田さんどこが悪いって言うんですか」

「私その子のこと好きでさ、好きな人にいじめられるのって本当にキツんだよ。」

「嘉陽田さん」

嘉陽田さん聖哉くんに嫌われたのかな、それは琴音さんが明らかに悪いし悪質だと思う。

「で、でね、学校内も次第に気まずくなってね、塾はみんなバラバラになって行く理由も分からなくなって最終的には辞めちゃってね」

「けどね、勇気出して高校は行ってみようって思ってさ、ひたらね、琴音が私にさ『辛い思いさせたね』って、」

「鼻啜ってください」

目から流れた雫が頬を伝う、声も弱々しく、鼻声であまり聞こえない。メイクもマスカラやアイラインが混ざり少し崩れてきている。

「あひがと」

「でさ、もうそんなこと言われたらさ、私どうすべきか分からなくなってさ、どんな気持ちで私に話しかけてきたのって思ったよ、けどそれよりも嬉しくてね嫌われたって思ってたのに私、の所にさ、わざわざ来てくれて、ね、もうさ、なんだろう、ごめん言葉にするのが難しいや」

「なんだろう、私さ、琴音のことがずっと好きでね、私琴音がずっと好きだったって、一緒に絡んでからずっと、ずっと好きだった、だから一緒にいたいのって琴音に言っちゃってね」

「?」

てことは聖哉くんではなく琴音さんのことを?混乱する。それは友達として?あるいは恋愛的にだろうか。理解したはずなのに頭の中でし私の知らないものがある。

「したら『私はあ』…ああああああああぁぁぁ」

「落ち着いてください」

落ち着かせるように考えるより先に動いていた。優しく抱き落ち着かせる。嘉陽田さんが回してきたては私よりも大きく、踏みしめるように強く抱きついた。

「もう何が何だかわかんなくて」

冷静さを保てていない。あの嘉陽田さんが小刻みに震え大事な糸が切れたかのように情緒を保てなくなっている。PTSDとかのたぐいだろうか、声が震えて泣き止む気配もない。私はただそのままにすることしか出来なかった。

「さっちゃん」

「はい」

疲れたかのように落ち着き始める。うるさかった鼓動も力強い手も次第に収まっていく。

「だからね、わかんないけどね、さっちゃんが友達になってくれてうれしかった」

何の脈絡もなく唐突に私との関係性を話してきた。思ったことを淡々と口にしているのだろう。その言葉はまっすぐで、落ち着いていて、言われて嬉しい言葉だった。体を離し手を繋ぐ。

「まだ2日も経ってないんですけどね」

「なんかおかしいね」

「そうですね」

少し肩が湿っている。嘉陽田さんの温もりがそこに残っっているが別に悪い気はしない。繋いだ手を離しお弁当に手を出す。

「これ食べますか?」

「食べるぅ…」

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