木
目の前に縄がある。
足元には踏み台が。ボロっちいが私を支えるのには十分だろう
上を向くと、風で葉が揺れるのが目の端に映った。
そして木は私をみていた。
私は踏み台に乗った。
足元からはギシギシと不快な音がする。
木に縄をくくりつけた。
さらに縄の先に輪っかをくくり
そこに私の首を入れる。
あとは踏み台を蹴れば完成だ。
木はまだ私を見ていた
私はなんだかそれが嬉しく
慎重に、踏み台をずらしながら
勢いよく蹴り、私は浮かぶ。
縄は俊敏に私の首を持ち上げ
締まる。
痛い
息苦しい
思わず縄を緩めようと
手を首に伸ばす。
痛い痛い痛い
私はもういない。いないのだ。
私の苦しさを見て木が笑っている
私はただ、
縄が切れないように願った
目が覚めたら
私はもう指すら動かせなかったが
不思議と思考はでき、音は聴こえた。
木はもう私には興味がないようで
笑い声は聞こえなかった
しかしよくわからない。
わたしはどうなったのだろう。
私の体は木にぶら下がったままだ。
もし私に嗅覚があったら、
きっと私は腐敗臭を感じていただろう
そう考えると嗅覚がなくて良かった?
私の体は虫が湧いている。
以前の私なら見ただけで嫌悪感を感じるはずだ
しかし今は、なぜだろう?
嫌悪感は感じない
ただ私の体に虫が湧いているのだと。
ただ(あぁ、そうなんだな)としか思えない。
わたしはどうなったのだろう
木はわたしがこうなることがわかっていたのだろうか?
まあそうだとしても今更な話だ。
どれだけ汚くても、おそろしくても
私はーーーこれが、いい。
いいの、だから。




