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剣の魔獣は、少女と繋がる

結果から記す。

その日、剣の魔獣ザヴェルバロッグの魔力がサヘルと繋がった。羽虫を斬ったせいで。





宿を出て、しばらくのち。

ザヴェルバロッグは違和感を覚えた。


自らの内にある魔力が、外へと延びている気がした。

とはいえ、流れでているわけではない。

身体からもう一本の腕が生え出たような感覚である。



「何故だ」



外へ延びた魔力が、サヘルに繋がっていた。

切ろうとしても、何故か繋がりを切ることができなかった。



「サヘル」


「なんですか?」


「昨夜、我が剣になっている間、我になにかしたか」


「しませんよ。男性と縁はありませんけど、そこまで飢えてないです」


「どういう意味だ」


「あ、いえ、ごめんなさい。気にしないでください。とにかく、何もしていませんから」


「そうか」



ザヴェルバロッグは首を傾げる。

しかし昨夜、剣になる前は違和感がなかった。

意識を取り戻してから、魔力の変化があった。気がする。


何かがあったはずなのだ。

そうでなければ、説明が付かない。



「我が剣になっている間、起こす以外に何もしていないのか」



再び尋ねる。

するとサヘルが、ほんの少し恥ずかしそうにした。

どうやら何かを思い出したらしい。



「……え、っと、あまり思い出したくないのですけど」


「何故だ」


「い、色々あるんです。色々」


「何かしたのだな」


「し、してませんよ!! そ、そうだ。強いて言えば、剣を振ったくらいで」


「振ったのか。我を」


「虫を追い払おうと思って」


「斬ったのか。虫を」


「斬りましたが。剣なんて握ったこともなかったのに、なんだか上手に中りました」



サヘルが自慢気に言う。

なるほどと、ザヴェルバロッグは頷いた。


恐らく、剣を振ったときにサヘルと同調したのだ。

それだけなら、まだいい。

同調したまま虫を斬ったことで、魔力がサヘルへ流れたのだろう。

流れた魔力の量は、恐らくほんのわずか。

しかしサヘルとの繋がりを生むには十分な量に違いなかった。



「なんということだ」



ザヴェルバロッグは頭を抱えた。

まさか人間の小娘と繋がってしまうとは。

しかも切り離せないとは。

このままでは、互いに様々な影響があるかもしれない。

最悪の場合、サヘルが死ねば、ザヴェルバロッグも死んでしまうほどの影響があるだろう。



「どうかしました?」


「面倒なことになった」


「え?」


「面倒なことになった」


「あ、いえ、聞こえなかったわけではなく」


「なんということだ」


「どうしたんです?」


「面倒なことに――」



ザヴェルバロッグは狼狽した。

魔獣である自らの内に、こんな感情があったのかと驚きながら。

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