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第9章 乗り越える力 第80話 お茶会 (1)

榎本さんが俺たちのサポーターになってくれて、助けを求める人を一緒に探すようになってくれた。

小山内の話だと、榎本さんのご近所にちょっと気になることがあるらしい。

今、それとなく調べてくれてるそうだ。


小山内も俺も、どっちも助けを求めてる人とは出会ってない。

いや、助けを求めてる人かどうかわからない、という方が正しそうだ。


昔の偉い人が何人も、それぞれ言い方は違うけど、人間は苦しむ生き物だみたいなこと言ってるから、俺たちが気付けないだけだろう。


とはいえ、助けを求めてる人が誰だかわからないので俺たちの裏の活動はちょっとの間お休み中だ。



そんなある日の昼飯時。


いつものイケメン+1の弁当トリオで弁当食ってると、ホリーが思い出したように言い出した。


「テルくんは和菓子は好き?」


今日はくん付けの気分の日らしい。


「どっちかっていうと好きだな。」

「そう。」


なんかホリーは嬉しそうだ。


「ガイくんは?」

「甘いものはちょっと苦手だよ。」

「そうかあ。じゃ無理に誘うと悪いね〜。」


ホリーはなんの話をしてるんだ?


「じゃテルくんは正座できる人?」

「できるかできないかで言えばできるけど、この前それで痛い目にあったから、苦手だ。」

「そうかあ。」

「ホリー、ちょっと話が見えない。どうしたんだい?」


うんうん。


「実は…」


と言ってホリーが説明してくれたのは、ホリーが俺をお茶席に招待したいって話だった。


ホリーは、茶道部に入ってたんだが、この度はれてお手前の一番基本になる型を一通りできるようになったらしい。

そんで茶道部の慣例で、お披露目と度胸付けを兼ねて、生徒の誰かを招いてお手前をするそうだ。


それで俺たちに声をかけようと思ってさっきの会話になったんだと。


「それなら誰か女子を誘えばいいんじゃないか?ホリーが誘えば行きたいってやつなんていくらでもいるだろ。」

「でも、招待できるの2人だけなんだ。もし女子の中から2人だけってするとなんだか怖いことになりそうな気がするよ。」


そう言ってホリーはぐるっと教室中に視線を走らせた。


ああ、確かに。

でも俺が招待されちゃったら、それはそれで怖いことになりそうな予感がするんだが。主に俺が怖い目に遭う方向で。


「それで、ホリーは僕たちが断ったら他にあてはあるのかい?」

「それがね、部活の友達と俺君たち以外の男子で仲がいい人ってあんまりいない。」


ホリーは困った顔をしてる。ホリーは人気者あるんだけど、主に女子方面からだから男子はやっかみとかがあるのかもしれない。


そういうことなら、俺が困った時にはホリーが助けてくれてるから、正座の痛みを我慢するか。


「わかった。じゃ俺を招待してくれ。」

「ありがとう!美味しいお茶を出すね。ガイくんはどう?」


伊賀は迷った挙句断った。


「僕は甘いの苦手だけど、苦いのも苦手なんだ。抹茶って苦いんだよね?」

「大丈夫。甘いお菓子を頂いたあとで飲むお抹茶は苦くなくてとても美味しんだよ。」

「やっぱりお菓子は甘いんだね。」

「あっ。」


そう言って、えへへと言って笑うホリーはそりゃ女子にモテるだろうって。


何故か背後から視線が突き刺さった背筋が寒くなったんだが、気のせいってことにしとこう。


「じゃあと1人探さないといけないんだね。」


伊賀はご飯を口に運びながら俺を見て言った。伊賀には誰か心当たりがあるのか?


「テルと一緒に行ってくれる人ってことになるから、小山内さんを誘えばいいんじゃないのかい?」

「そうだ!そうだよね!いいアイデアありがとうガイくん!」

「お前らちょっと待て。な、何言い出すんだよ。早まるな。小山内とはそういう関係じゃねえ。」

「え?そうなの?」

「そうだよ。何勘違いしてるんだよ。俺と小山内がそんな関係な訳ないじゃないか。なあ、小山内…さん。」


危なかった。思わずいつもみたく呼び捨てにするところだった。


「そうね。私と俺君は何の関係もないわ。」


即座に、雪女すら凍りつきそうなくらいの冷え冷えとした言葉が返ってきた。


小山内は何故かこっちの話を聞いてたようだ。


「あれ?そうなんだ。俺君は小山内さんと友達だと思ってたんだけど、違ったの?」


ホリーは不思議そうな顔で聞いてきた。

あーっ?!

そりゃそうか。俺と伊賀も友達同士で誘われてんだから、気づくべきだった。


「い、いや、その…」

「私と俺君は単なる部活の部長と部員の関係。それ以上になり得ようがないわ。そんなデリカシーのない人。」

「女子をいきなり呼び捨てにしたのはまずかったみたいだね。」


小山内の言葉にクラスのホリーを虎視眈々と狙うハンター達が即座に反応した。


「ね、もし俺君が一緒に行く人がいないのなら、私が行ってあげようか?」


最初に名乗りを上げたのは、いつも俺がホリーと話してると、俺の背中に視線を突き立ててくる佐々木さん。


「私は佐々木さんと違ってお茶の作法がわかるから、私にした方がいいわよ。」


次に名乗りを上げたのは、俺がホリーと盛り上がってたら何故かわざわざ近づいてきて「ちっ」とか言ってくる渡部さん。


ハンターは他にもいるんだが、この2人の壮絶な迫力に呑まれて名乗りを上げられない。


渡部さんがさらに畳み掛けてくる。


「あんた、当然私と行くわね。」


これで嫌と言ったら「ちっ」では済まなくなりそうだ。


「渡部さん、はしたないですよ。そういう方はお茶席にはふさわしくないでしょう。俺君もそういう人を連れて行くと恥をかきますよ。」


佐々木さんもなかなか言うねえ。


…誰か助けてくれ!

運が悪いことにこういうクラス内の争いに抜群の安定感で介入してくれる榎本さんは席にいない。


ホリーは


「俺くんモテるんだね〜」


とか、お前鏡見てから言えなことを言ってやがる。

伊賀もホリーのその言葉を聞いて笑ってやがるし。

お前も失礼なやつだな。

今にみてろ伊賀。お前を狙ってる女子もいるんだからな。


その時俺の頭に稲妻のように名案が閃いた!


「だったら俺は遠慮するんで、佐々木さんと渡部さんが2人で行けばいいんじゃないか?」


俺の名案に佐々木さんと渡部さんは揃って鬼の形相で叫んだ。


「「こんな女とそんなことできるわけないでしょ!」」


あら、気の合うお2人で。お前らその顔をホリーが見てるってわかってるか?

って言ってる場合じゃないな。

俺はますます窮地に。


助けてくれ、小山内。


俺は自分でも情けない顔をしてるって思いながら小山内に目ですがった。


でも小山内は、


「あんた自分で何とかしなさい。」


の目をしてる。


「俺にはこれを収めるスキルねえよ。お願いします。」


の視線を送ってもう一度小山内にお願いする。


あ、小山内がはーーっと長いため息ついてるぞ。あれは?


小山内が立ち上がって、すごい嫌そうな顔をしながら、絶賛がるがる中の2人に呼びかけた。


「俺くんがいつも通り後先考えずにバカなことを言ったせいで、クラスに迷惑をかけてるようね。私と俺君は、本当に、絶対、徹頭徹尾何の関係もないけど、残念ながら私の部の貴重な部員なの。仕方がないから部長として責任をとって私が行くわね。だから佐々木さんと渡部さん、悪いけど今回は見送って。」


あ、ありがとう小山内…さん。

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