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 第39話 行方不明 (2)

春田さんとは、その翌々日の土曜日に会うことになった。



実は、俺も直接出向くか、それとも小山内だけが行って、俺はネット参加した上でカメラをオフにして誰と繋がってるのか春田さんにはわからないようにするかについては、小山内との間で意見の違いがあった。


小山内は、春田さんは信用できる子だけど、超能力のことを話せるくらい信用していいかは別問題だし、そんな状態で「困ったことを上手に解決する人」って触れ込みで俺を連れてったら「かえって私たち、特にあんたの方が春田さんから信用を無くすでしょ。」、って言いやがった。

正論だとわかるけどっ、わかるけどっ、言い方ってもんがあるだろ。


俺の方は、どんな奴だって、顔も見せず、ネットで経由でしか話さない奴なんて信頼されるはずないだろ、こっちが信頼しないと信頼なんてされないぞって主張。


そしたら小山内は真剣な顔で、「バカなの?あんたを守るためでもあるの。」、とか言い出したので俺も突っ張れなくなって、結局その時は俺はネット参加で落ち着いた。


ところがその夜、小山内から、俺も直接来てってメールが来て、結局俺も直接行くことに。

小山内が俺の気持ちを汲んでくれたのかもしれない。


待ち合わせの場所は、事情が事情だけに、みんなの目がある学校近くの駅ではなく、春田さんの自宅近くの駅周辺で待ち合わせることになったらしい。

小山内からのメールに駅前のファミレスのURLが添付されてて、「ここで待ってること」って書かれてた。


「わかった、ありがとう。」って返事を返したら「遅刻厳禁」と返ってきた。

可愛くねえ!



土曜日になって、約束の時間の半時間ほど前に目的の駅に着いた俺は、少し駅の周囲をぶらつくことにした。


この駅は、俺たちの学校の最寄り駅よりよっぽど大きくて、3つの路線の乗換駅になっている。これまでにも何度か来たことあるが、立派な駅ビルに加えて駅ナカのお店も充実している駅だ。

駅前には大きなロータリーがあって、バス乗り場とタクシー乗り場が併設。どうやら指定されたお店は、バスロータリーの向こうに見える1階が駐車場になってる2 階建てのお店みたいだ。

近くに何本も建ってるビルには、銀行や不動産屋みたいな硬めの会社から、飲食店、チェーンのコーヒーショップにハンバーガー店、本屋、スマホショップまで入ってて、駅前にあったら便利だなってお店が一通り揃っている。


特にあてもなく、そうしたお店を何件か見ながらぶらついてたら、小山内と春田さんが通り向こうを歩いてるのが見えた。


小山内は、この前の遺跡探索の時とはうってかわって、女の子らしい薄いピンクのふんわりしたカーディガンを花柄のブラウスの上から羽織ってる。空色の膝下まであるスカートに整った顔、ロングの黒髪とあわせて…おまえ、アイドルか?ってほどかわいい。

さては偽物かっ?

まあ、口には出さないけどな。


春田さんは、何か白い字が書かれた黒のシャツの上から黒地のジャンパー、ジーンズに黒のキャップという、春田さんのボーイッシュな感じとマッチした、これも、おしゃれそうな感じ。


それ以上はわからん。

俺に女の子のおしゃれなんて聞くだけ無駄だから。以上、実況でした。


約束の時間にはまだ余裕があったが、予定を変更してファミレスに向かい、ちょうどお店のドアにのぼる階段の下あたりで落ち合った。

当たり前だけど、やってきた俺を見た春田さんが怪訝そうな顔をしている。


「春田さん、私が話していた、『困ったことを上手に解決する人』というのが、この俺君。」


こんな時は、どう挨拶したら良いんだろな。とりあえず笑顔で、


「こんにちは。春田さん。もしかしたら知っているかも知れないけど、俺は春田さんと一緒の学校で、1年3組です。」


と挨拶してみた。

春田さんは、「こんにちは。」とは言ったものの、怪訝というよりむしろ困惑した顔になって、無言で横に立つ小山内を見た。小山内より春田さんの方がかなり背が高いので、見下ろす格好に。

近くで見ると春田さんの顔色が悪い。


「うん、春田さんの気持ちはよくわかる。でも、俺君が『困ったことを上手に解決する人』というのは本当なの。少なくとも、私はそう信じてる。」


春田さん、俺をもう一回見て、少し笑顔になった。


「ごめん。大人の人がくるって勝手に思い込んでたから。よろしく。春田瑞です。廊下で会ったことあるよね。」

「ああ。高校生が来るなんて普通思わないし、気にししなくていい。それより、俺のことを知ってたことのほうが驚きだよ。」

「きみ、小山内さんと一緒に一騒動起こしただろ。うちのクラスの男子も騒いでたからね。」


ああ、あの件か。確かに、他のクラスからも入部試験に来てた奴いたな。俺ひょっとして、有名人?


「そうか、あれで俺の顔は売れたのか。まあ、実際は俺は大したことはしてないんだけどね。」


もちろん謙遜だ。俺は俺なりに一生懸命頑張ったんだ。

ところが小山内は、微妙な顔になって、


「あんた、私の巻き添えで有名になっちゃったのね。ごめんね。」


だとよ。

小山内、たまにおれになにか含むところでもあるのか?ってぐらいきっついこと言うよな。

…まさか、本当に含むところあるのか?


「なんか、俺君がバカなこと考えてそうだから、ほっといてお店に入りましょう。ここでだべっててると、お店に入る人の邪魔になるし。」


ファミレスにあんまり人が来ないような時間帯をわざわざ指定たおかげで、俺たちが邪魔した人なんていないけどな。というか、小山内、俺を悪く言うと、春田さんの信用に関わるんじゃないか、しらんけど。


小山内を先頭に店に入って見回すと、やはり、ランチの時間からかなりずれてるせいか、店内の人影はまばらだった。

何人かで話し込んでる女の子達と、大声で話してるマダム、制服を着たお一人様のおじさん、くらいだ。


「うちの学校の子たちじゃ無いよね、あれ。」


小山内が小声で聞いてきた。


「知るかよそんなの。別のクラスの女の子の顔なんてほとんど覚えてないよ。」

「ふーん。でも春田さんはわかったじゃない。」

「おまえ、そりゃ春田さん、目立つし、かわいいからな。」


春田さんは真っ赤になって俯いてしまった。大湿原。いや、大失言。でも、春田さん、かわいいって言われ慣れてないんだろうか?反応もかわいい。

俺を怖い目で睨んでる小山内と良い勝負だぜ。


そんなやりとりをしながら、俺たちは店員のお姉さんに席に案内だれた。

小山内は俺に向けたまんまの怖い目つきで、「奥の席をお願いします。」なんてやったから、お姉さんおびえてたぞ。

美少女の怖い目つきにかなりの破壊力があるってことぐらいわきまえろ。

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