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 第25話 始めましょうか (2)

その日、父さんも母さんも仕事から早く帰ってくる日だったので、俺は食事の後、切り出すことにした。キッチンの椅子に座って、父さんがつけてるテレビを見ながら空気を探ることにしよう。



もともと俺も、高校入学前にスマホが欲しい、今の高校生には必須だし、おそらく授業にも使うはずだ、アルバイトの許可してもらえるなら自分で買うから、といって、かなり説得してた。

だが、両親は頑として認めてくれなかった。

それどころか、ガラケーもメール機能があるから、ダメとか言い出す始末。

それを何度か交渉して、ようやく、ガラケーだけは認めてもらったという経緯がある。

なので、とんでもない苦戦を予想している。でも、小山内が、あそこまで戦ってるのに、俺が戦わないとか、あり得ないだろ。


ただ、前回の説得の時、両親の口から直接は言われなかったけど、両親が何を心配しているのかは、なんとなくわかった。


俺が中学の時、「嘘つき君」と呼ばれていたことだ。

それより、「嘘つき君」と俺が呼ばれていることを隠したこと、の方が重いのか。


前にも書いたことあったけど、俺が必死に受験勉強を頑張り始めた中3の2学期半ば、俺の異変を察知した両親から「なんか学校で嫌なことはないか。」って聞かれて、「大丈夫。なんにもないよ。」って答えたことがあった。

ところが、心配した両親がは担任に聞いて俺が学校で「嘘つき君」と呼ばれていることを知った。

このとき、母さんは「虐められてるんじゃないのね。違うのよね。」と言っていた。


おそらく、両親は、このとき俺がいじめられてるかも知れないことと、そのことを担任から教えられるまで自分たちにも黙っていたことにショックを受けてたんだと思う。

ごめんな父さん、母さん。その時のことを思い出すと今でも心が痛い。


そんで、スマホ禁止もおそらく、これが影響してる。

SNSを使ったいじめとか散々報道されてるから、そのイメージが強いんだろう。

俺が「嘘つき君」とSNSで言われたり、中学の時の同級生とつながってしまってせっかくの努力が台無しになったり、そういったことを心配してるのではないだろうか。

もし、俺が逆の立場だったら、両親と同じこと考えて、同じようにスマホを禁止してしまうかも知れない。


でも、そう物わかりのいいことをいっていたら小山内との約束は果たせない。

だから、俺は戦う。

両親と?

いや、過去の自分とな。



てな、格好つけたけど、内心ビクビクで俺は切り出した。


「ちょっといいかな。」


テレビを見てソファでくつろいでた父さんと、なんか、キッチンの椅子でスマホチェックしてた母さんに声を掛けたのは、9時過ぎ。

今日のドラマは母さんの毎週チェックドラマじゃないのは確認済。

父さんもテレビ見てるけど、眠そうにしてしてるから、熱心に見てるわけじゃない。

俺の言葉に、母さんがビクッとした。


「ちょっと相談したいことがある。」

「どうした。」


父さんの声も、なんかいつもの声じゃない緊張が混じってる気がする。

そういう俺の声も、ちょっとかすれてるっぽいな。

父さんの緊張の原因は、俺の声か。


一回、リラックスしよう。軽く深呼吸して。

とりあえず、作戦アルファー。正攻法。

…ちょっと前まで厨房だったんだからこのネーミングは仕方ねーだろ。


「この前ちょっと話したことだけど、おれ、学校で部活に入ることになった。」

「確か、歴史の部活と言っていたな。」

「新しく作るんだって?うまくいったの?」


ここまでは既に両親に伝えてある。


「うん。部長になる奴が今日言ってたんだけど、届けが正式に受理されてるらしい。」

「そうか。」

「うん。ただちょっと予想外の問題があって。」

「どうした?」

「部活は認められたんだけど、活動は、部室が無くて、ネットでやることになった。」

「今は、そんなことになってるの。」

「うん、それで、俺もネット環境を用意しなきゃならないんだ。」

「ああ、じゃ、父さんのパソコンを部活にも使っていいぞ。」


だよね。

アルファー作戦終了。

だがブラボー作戦はもう始まってる。


「ありがとう。ただ、今回部活を設立するのに、部長になる奴に全部任せてしまったんだ。」


任せるもなにも、相談すらされてなかったけどな。

すまん、父さん母さん。嘘だけど許してくれ。


「そうなの。じゃ、ちゃんとお礼言いなさいね。あんた、中学の時、あんまり人付き合いがうまくなかったみたいだから、きちんと出来る?」


あー。そういえば小山内にお礼を言ってなかったかも。言われるまで気付かないなんてダメだな、俺。

とりあえず、反省した。


…話がそれてるぞ。


「うん。ちゃんと言うよ。そのことよりも。」


俺は、座ったままで姿勢を正した。


「さっき言ったけど、今回、同級生に部活動のことを全部任せてしまったんだ。でもやっぱり、これからは俺もちゃんとやらないと。」


これは本当に本心だぞ。


「この後も、いろいろあると思うんだ。同じジャンルの部の先輩達とも交流を持つことにもなったし、これからは、おれも、そういった人との交流をやっていかないとって思った。」


これも事実。というか、交流は俺が言い出したことだから、俺がやらないと。

小山内は、超能力を使って人助けっていう秘密の活動の方もするから、2人で分担しないと、ってこれは両親には言えないけどな。


「そうだな。これから、だんだんお前の交流も広がっていくだろう。頑張れ。」

「そうね。中学と違って、高校生になったら、もう自分で考えて動くようなる年齢ね。」


ここまでは学校の様子を話ししてるだけなので、両親もの警戒心は薄い。

でも、ここからだ。

一呼吸。


「ありがとう。それでね。いろいろ考えたんだけど、その、やっぱり、きちんと活動して皆なと交流していくためには、スマホが必要だと思ったんだ。」


両親は、お互い視線を交わして、沈黙した。

前回の時のように、なんとなく高校生なったらスマホがいる、スマホが欲しい、というようないい加減な動機とは違う。

そのことを俺は強調した。

実際には、小山内や、小山内との活動がうまくいったときに出来る人間関係のためだだが、ここは、決して嘘を言ってるわけじゃない。


しばらくして、母さんが俺の顔を見ながら


「それ、今持ってるケータイのメールじゃ出来ないの?」


やっぱりな。

予想どおり。

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