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 第109話 プール (2)

俺たちが男子更衣室を出て暫く待ってると、陽香ちゃんに手を引かれた小山内も恥ずかしそうに現れた。


女神か?!小山内は女神なのか?!


トロピカルな感じの明るい黄色の花が大胆にあしらわれたビキニが、小山内の抜群で健康的なスタイルを引き立ている。しかもパレオが清楚さも醸し出してて、もう、究極の美少女というのが実在するとしたら、目の前の小山内のことだろって域に達してしまっている。

というか、今まであんまり気にしてなかったけど、小山内ってこんなにスタイル良かったのか。


「見ないで。」


俺の視線に気付いた小山内が、真っ赤になりながら右腕で胸を隠しながらしゃがみ込みそうになる。

だがなぜか、小山内の左腕をとっていた陽香ちゃんはそれを許さない。そのせいで小山内は片手を上げた妙な格好で中途半端にしかしゃがめなかった。


そのせいで余計目立つ格好になった小山内を、その辺を歩いている男は老若を問わず目を釘付けにして見てるし、カップルで来ていたお姉さんが、小山内を見てしまった彼氏を引きつった顔をしてしばいている。


おお、なんてテンプレな展開!


小山内は、なぜか、目に涙をためながら陽香ちゃんを睨んだ。


「陽香ぁ。」


この姉妹の間にいったい何があったんだろう?


「お姉ちゃんが、今度のパーティに着ていく水着がないって言ってたので、せっかくだからとお互いに似合ってると思う水着をプレゼントし合ったんです。昨日の夜に交換して。」


陽香ちゃんがそう説明してくれた。

仲のいい姉妹の微笑ましい1こまだな。


それにしても、陽香ちゃんセレクションか、小山内の水着は。


陽香ちゃんは陽香ちゃんで、水色の地に小さな花がいっぱいあしらわれたワンピースの中学生らしいかわいさにあふれた水着を着ている。これが小山内セレクションだな。


陽香ちゃんは小山内の美しさを引き立てるいい水着を選んだと思うんだけど、小山内は気に入らなかったのか?


「私は、こんな水着だって昨日まで知らなかったの。」


小山内が訴える。


それにかまわず、陽香ちゃんは俺に聞いてきた。


「ね、お姉ちゃんに似合ってるでしょ。」

「ああ。とっても似合ってる。小山内、ほんとに似合ってるぞ。」


小山内は顔を真っ赤にして上目遣いで俺に尋ねた。



「本当に?本当に私なんかにこんな大人みたいな水着が似合ってるの?」

「うん。このプールで一番かわいいぞ。」


言ってから俺も真っ赤になる。

もちろん俺も小山内も、もう視線を合わせることなんてできなくなった。お互いただひたすら空と地面の観察にいそしむばかりだ。


ちなみにホリーと伊賀は、小山内がしゃがみ込みそうになった辺りで、なにかを話しながら離れていったから、これを聞かれたのは陽香ちゃんにだけだ。


「ほらお姉ちゃん。私の言ったとおりでしょ。俺さんはお姉ちゃんがかわいいって。自信持ってよ。」

「無理に言ってくれてるだけじゃないの?」


小山内は俯きながら小声で、確かめてくる。

なんだか普段の小山内とギャップが激しすぎるんだが。

俺の目の前で何が起こってるんだ?


「そんなことはないぞ。小山内はびっくりするくらいかわいい。水着もすごく似合ってる。いつもみたいに自然に振る舞ってくれよ。俺も小山内に酷いことをしてるみたいな気になってくるからさ。」

「…わかったわ。」


そういって、小山内はまだ胸を腕で隠して、俺からなおも視線をそらして何とか立ち上がって、ようやくいつもの距離に近寄ってきた。


俺は小山内をつい見てしまいそうになるが、ぐっと我慢だ。


その俺たちの様子を見た陽香ちゃんが、爆弾を投下。


「俺さん、お姉ちゃん、こうしてみると初々しいカップルみたいだね。」


何を言いやがりますか、この子は!


「ばかー!」


小山内はついに顔を覆って逃げ出してしまった。


「はぁ。お姉ちゃん、もっと大人になってると思ってたよ。」


陽香ちゃんは困った姉だなあ、みたいな顔でそうひとり言を言った後、俺に向かって「お姉ちゃんを連れて来ます。あんな姉ですけど、よろしくお願いしますね。」と謎の言葉を残して追いかけていった。


「よろしくお願いしますね。」と言われたが、いつもよろしくしていただいてるのは俺の方だ。だいたい、小山内がいなければ、今頃小山内達とプールじゃなくて、教室で地獄の補習だったかもしれない。


どうも陽香ちゃんは、なぜか俺と小山内の関係を、なんていうか、もっとこうラブコメ的なものと勘違いしてるんじゃないだろうか。


もちろん、小山内とそういう関係になれたら、とは思うが、小山内は俺との距離をそっち方面で縮めるのを慎重に避けてる気がするから、当分、そういうことは期待しない方がいいんじゃなかろうか。



俺が、その場から動けなくなって暫くすると、ホリー達が戻ってきた。

伊賀が俺が1人でいるのを見て不思議そうに聞いてきた。


「あれ?小山内さん達は?」

「逃げていった。」


俺は事実だけを説明する。


「ええっ?俺くんを置いて帰っちゃったってこと?」


置いて行かれたのは俺だけじゃなくて、お前らもだがな。


「いや、多分大丈夫だと思う。陽香ちゃんが連れ戻してくれるそうだ。だからここで待ってる。それより、いつの間にか消えてどこに行ってたんだ?」

「僕たちプールを見てきたんだ。人が多いから、一番すいてそうなところがどこか探しに行ってたんだ。ほら、小山内さんも陽香ちゃんも、視線を集めてたでしょ。少しでも少ない方がいいかなって。」

「あっちの方に流れるプールがあったんだけど、かなり大きいプールだからスライダーのあるところとかよりも混み具合は少なそうだ。どうだい?そっちに行かないか?」


ホリーと伊賀が偵察の結果を報告してくれた。俺よりよっぽど気が利くな。


ほら、俺がよろしくお願いされるより、お願いする方の人間だってこんなあたりからもわかるだろ?



しばらく伊賀たちと待ってたら、小山内と陽香ちゃんが戻って来た。


「ごめんなさい。ちょっと、その…」


小山内が何か言いかけたが、俺はそれを遮って、小山内たちに、伊賀たちの提案を説明した。


「だから、流れるプールに行こう。さあプール楽しもうぜ!」


小山内は何か言いたそうな顔をしたが、俺の言葉に頷いてようやく笑顔を見せてくれた。

よかった!

せっかくのプールなのに謝るとか、そんなの楽しくないからな。それにせっかく小山内に似合う水着を選んだ陽香ちゃんももやっとするかもしれないし。


と思って陽香ちゃんにちらっと視線を走らせたら、なぜか笑顔で俺を見つめてた。


小山内美少女姉妹が2人とも笑顔で俺を見てるなんて、ここはどこのパラダイスだ?


さて、思いっきり楽しもう!

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