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 第10話 だから俺を巻き込むな (2)

おそらくこれ読んでる奴は、おとなしく俺が職員室前に行ったと思っただろう。


うん。行きました。

だってしょうがねーじゃねーか。無視したら俺の机が紙くずの墓場になるのが目に見えてるしな。

間違っても、きれいな子から呼びだされて嬉しーとか思ったわけじゃない。ここは大事だ。あと、俺の超能力は、口に出して宣言しないと効果がない。

始めて明かされる事実だっけ?


校舎一階にある職員室は今日この時間、あんまり人の出入りはない。

開け放たれた入り口の引き戸から覗いてみると、いくつかの島に分かれてる先生達の席にも殆ど人がいない。

運動部系の部活の顧問は出てってるし、文化系のは部活訪問に出張ってるらしい。昨日行った無線部の人に聞いたけど、顧問は普段は放置でこの部活訪問の期間だけ来るんだと。

だから、今職員室に残ってるのは、そういう部活訪問にすらで出てない不熱心、

いや、えーと、あー。

やっぱ不熱心でいいや。そういう不真面目な先生と、もともと顧問にお声がかかってない先生らしい。


でも生徒の出入りはそれなりにあるから、


「1年なのにもう呼出されてる、こいつ何やったんだ?」


ってありありと表情に出てるお兄様、お姉様方が入り口の横でぼーっと突っ立てる俺の横を何度も行き来しました。

小山内、おまえいい加減にしろよ。


しばらく待ってると、手に何かの紙切れをもってようやく小山内がやってきた。あいもかわらず、お早いおつきで。

小山内は足早に近づいてくると、職員室の入り口でぼーっと待ってた俺に一瞥をくれて、足も止めずに


「ついてきて。」


って、おい。

いや、職員室前に呼び出されたから、職員室に用があるのはわかるけど、せめて入る前に説明求む。俺の高校生活初職員室なんだから、せめて何で入るのかぐらい知りたいのは当たり前だろ?

なので言ってやった。


「やだよ。」


小山内は、ようやく足を止め、俺に向き直って、なんか怒りの表情らしきものを浮かべて説明した。


「あんたバカなの?ついてきたらわかるから、とにかくついてきて。」


「やだよ」の意味はわかってても、説明はしないってか。


「だから、説明しろって。小山内、なんで俺が付き合わないとダメなんだよ。」

「お前って言うな。」

「わかったから。」


小山内は、舌打ちでもしたそうな顔をしたが、思い直したのか、一呼吸入れて説明した。


「今から、部活作るから。その顧問をお願いしに行くの。だからついてきて。」


はーーーーーっ?

なんか、とんでもないことを言い出したぞこいつ。

小山内が作る部活の顧問を頼みに行くのに、何で俺がついていかなきゃならないんだ?

おまえは未来人にセクハラしまくる傑作ラノベの主人公にでもなったつもりか?

でも小山内は、もう十分に説明したみたいな顔をして、さっさと職員室に入って


「失礼します。」


と澄んだ声で挨拶した。しちゃいました。

そんで、目当ての先生でも探してるのか、視線をさまよわせた。


俺、なんか人生の選択を迫られてる気もする。

あ、小山内がこっち見て睨んだ。


「さっさと入ってきて、ばか。」


の視線だな、あれ。


仕方ない、ここだけは付き合ってやるか。でもどうせなら、小山内カーストのメンバー連れてくりゃいいのに。喜んでついてくる奴もいただろ?


小山内は、俺が職員室に入ったのを確認すると、奥の方の机の先生を見た。

視線の先では数学の森先生が、パソコンの画面に見入ってる。


小山内は、遠慮も無しに真っ直ぐ職員室の奥にすっすっと歩いていく。きれいな黒髪が揺れて、窓から入ってきた光を反射してる。

俺は、整頓された机や何かの道具が置かれた机、何かの記念品が飾られた机、いろいろな机の間を抜けて、障害があっても健気に親ガモについてく子ガモよろしくその後を追う。

雑然といろいろな本が積まれた机で熱心にパソコンをのぞき込んでいた森先生は、俺たちが横に立っても気がつかなかった。パソコン画面には、なんか数式が載ってる専門誌のweb版らしい記事が表示されてる。小山内が、森先生が気付かないとみて声を掛けた。


「森先生。」

「うわっ。なに?」


ようやく回転椅子を俺たちの方に向むけた森先生は、眼鏡の奥の眼をシパシパさせて声の主である小山内を見た。


「君は、1年3組の小山内君ですね。何か用ですか?」

「はい。お願いがあって来ました。」


森先生は何も言わずに小山内を見ている。続けろってことか?

小山内はそう解釈して笑顔で話を続けた。


「実は私たち、新しい文化系部活を作りたいのです。」


聞き捨てならんな。顧問のお願いをするからついてこいとは言われたが、俺が入る事になってるなんて一言も言ってなかったぞ。何の部活か説明すらされてないのに、入るわけないだろ。

と、いう空気を出した俺をなぜか小山内は察知したようだ。

小山内は、森先生ににこにこ顔を向けながら新技炸裂。

すね蹴り一閃!


「小山内、森先生は椅子に座ってるから、見られたかも知れないぞ。」


と思ったけど、森先生は不思議そうに小山内の顔を見てた。

んで、やっぱり何も言わない。

授業の時のあのマシンガントークと板書はどこに?


難敵とみたか小山内は戦法を変えた。


「森先生はちゅうせいしはお好きですか?」

「ちゅうせいし?いや、どちらかというと私はアクシオンの方が好きですが。」


反応が返ってきたけど、小山内と森先生の言ってることがわからん。

あ、小山内も森先生の答えの意味がわかってないぞ、なんか困ったように眉を寄せてる。


「ええと、アクシオンですか?」

「そうです。」


アクシオンの説明無しかい。

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