イジメ捜査 3
私達がーー高等学校に非常勤教師として紹介され教室に来た。ナカは、若いし、可愛い、その上身長も胸も、大きくも無く小さくも無くって感じで二十歳後半と感じがあるが、自分は、もう四十だ。背丈もナカより十センチ位差がある、それに、胸もそれなりにある。この体型の刑事は正直ちょっとつらかった。女性に産まれたことに後悔する事もあったが、こういう捜査の時は便利で良い。
一時限は国語、二時限は数字、三、四時限は家庭科、昼休みを挟み、五時限は社会、六時限は理科、そして掃除をして下校時間は早くて三時半。掃除の時に、ケイトとハルに連絡をどうにか入れなければならない。
「安積先生は、何の教科を教えてくれますか。」
「中野先生は、この学校が初めてですか。」
教室でも紹介があり、クラスメートの質問を一斉に言われた。
「みんな、もう授業が始まっているから質問は休み時間にして下さい。」
花岡先生が、授業の準備を始めた。花岡先生は、国語の先生だった。臨時集会が入ったため、授業は、三十分程だった。
「先生、もう三十分しか有りませんよ、授業出来るんですか。」
「先生のこともっと知りたいです。」
授業を全くする気は、無さそうだ。先生から渡された、席名簿を見ながら、誰が喋ったか見た。口を開いた一人に、田中京子がいた。中央の一番前の席にレオさん、中央三列目にシオン君、窓際一番後ろに田中京子がいた。
「うん。そうね、早く皆と仲良くなって欲しいからね。今日は特別ですよ。」
先生がそう言うと、クラスは騒ぎ立った。そして、自分達は、教壇の上に招かれた。
「もう一度紹介します。安積ミツキ先生と中野イツキ先生です。自己紹介をどうぞ。」
「皆さんおはようございます。安積です。専門科目は社会ですが、この学校では非常勤のため、皆さんのフォローに入ります。お願いします。中野先生とはずっと一緒にいるので、何時でも声をかけてください。」
自分はそう言って一礼をした。次はナカの番だ。
「えっと、中野です専門は体育です。安積先生同様非常勤のため、ずっとこの教室にいます。皆さんの授業で勉強するので、ずっといます。えっと、これからお願いします。」
桜は、少し緊張しているようだ。ナカ、落ち着け。
「先生方質問は大丈夫ですか。」
「ええ、大丈夫です。」
「じゃあ後時間まで質問して下さい。」
気がつけば、自分達は笑っていた。その逆で田中京子は何か楽しいことを思いついたように微笑んでいた。
「安積先生質問です。先生は何歳ですか。」
「コラ、ーー君女性年齢は聞いちゃダメよ。」
先生が注意した。別に気にはしない。もう年齢なんてどうでも良いと思っている時期だ。
「先生、大丈夫です。全て正直に答えます。私は、実はもう四十なんです。」
クラスが騒ぎ立った。皆、見えないだとか、結婚の話も出た。
「中野先生はどうなんですか。」
ナカにも振られた、ナカは笑顔で実年齢を言った。クラスは、若い、可愛いと言っていた。
それから、時間まで質問は続いた。
チャイムがなって、やっと解放された、と思ったが、レオさんとシオン君を守るため、自分達は教室に残った。
「先生は職員室に戻らないんですか。どの先生も戻ってるんですよ。」
そう言ったのは、田中京子だ。田中京子が喋った途端クラスが静まった。しかしここで怯む訳には行かない。
「先生達は皆の名前を覚えたいし、それにもっとどんな子がいるか知りたいと思っているの。」
田中京子の狙いは自分達か、逆にそっちの方が都合が良い。
「なんか安積先生、刑事みたいな喋り方するね。」
「私、刑事ドラマが好きでよく観てるからね。」
田中京子は、何か面白い物を見つけ出したように行ってしまった。自分が話している間ナカがずっとレオさんとシオン君を見ていた。二時限が始まった。
それから昼休みまでなにも起きなかった。そして、放課後にななった。仕掛けてくるならこの時間だ。
「ナカ、シオン君から目を離すな。私はレオさんを見張る。頼んだよ。」
「はい。田中京子はどうします。」
「おそらくかけるならどちらかだ。守ってくれよ。」
ナカはシオン君の後を門まで遠くから見送った。そこからは、ケイトの仕事だ。
私はレオさんと話をしながら、門まで行こうとしたがそこで、田中京子に会った。
「なんで先生、浅丘といるんですか。こいつは汚い奴ですよ。」
「この世に汚い人なんていない。皆同じ人間なんだ。」
「先生、なんでそいつの事かばうんですか。何か関係あるんですか。」
田中京子は段々苛立っているような声に変わってきた。自分は、ポーカーフェイスでごまかし続けた。気になっていたが田中京子は後ろに何か隠してる。
「先生もなんかうざい。」
そう言って田中京子は私に水をかけた。レオさんに水がかからないように庇った。運がよくレオさんに水は一滴も掛からなかった。しかし自分はずぶ濡れだ。この季節に水を被ると寒いし冷たい。あまりの寒さに身震いがした。田中京子は何も言わず帰って行った。
「安積さんごめんなさい、私のせいです。私が、こんな・・・」
「私のせいなんて言わないで、私、慣れているから大丈夫。それに私の仕事はレオさんを守ること。」
騒ぎを聞きつけ先生や生徒が集まってきた。身体が冷えて気を失いそうだが、ここで倒れる訳にはいかない。最後まで頑張ることを決めた。
「ハン・・・安積先生、大丈夫ですか。」
ナカが急いで駆けつけた。先生方は生徒をこの場から離れるように指示をした。生徒は素直に下校し誰も居なくなった。
「すみません、ご迷惑をおかけしました、今からレオさんを送って、そのまま署の方へ戻ります。明日の予定は、パソコンに送って下さい。」
「わかりました。本日はお疲れ様です。明後日の授業お願いします。」
一礼をしてレオさんとナカと家に向かった。門を出るとハルが待っていた。
「ハル、すまない。今日は先に署の方に戻ってくれ、私とナカで送って行く。明日は頼んだ。」
「わかりました。ハンチョウ、どうしてこんなに濡れてるんですか。」
「署で話す。」
そう言って私はレオさんの家の前まで送った。その足で署に戻るはずが、急に足に力が入らなくなった。その場で、気を失ってしまった。