表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ドラゴンは叫んだ、お前を決して死なせはしない、と

作者: さいらなおき

 迷い込んできたその少女は、我を恐れなかった。

 かつて荒れ狂い、大陸の半分を滅ぼした伝説の悪竜――それが我だ。勇者に片翼を奪われ、山奥でゆっくりと死にゆく我を、しかし少女は可哀想だと抱きしめてくれた。我の指先よりも小さなその身体で、精一杯腕を広げて、抱きしめてくれた。その温もりの、なんとあたたかなことか。これほど心安らぐ温もりがあることを、どうして我は知らなんだのか。知恵も力も遥かに劣る人間からも、学ぶことはあると知った。

 それから我は、乞われるままに話を聞かせた。昔の話、ほんの千年ほど昔の話だ。畑を作り、森を育て、海を乗りこなした、かつての人間たちの話。国が生まれ、争い、滅びゆく話。瞬きする間に全てが変わる、目まぐるしい物語を、少女は面白い、楽しい、と喜んでくれた。我も嬉しかった。

 しかし、その日の少女は傷ついていた。我と会っていることを村人たちに咎められ、暴力を振るわれたのだという。我は怒りに震えたが、それどころではなかった。小さな少女は死にかけだった。我は叫んだ。

「お前を決して死なせはしない!」

 我は自らの命を取り出し、少女に与えた。どうせあと百年も生きられぬ命、何が惜しいものか。おや、そういえば、人間は百年も生きられぬのだったな……まあ、よい――お前がまた笑えるのなら。

 そして我は、安らかに目を閉じた。

 お読み頂きありがとうございました。

 楽しんで頂けましたでしょうか。

『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』でも「タイトルは面白そう!」のコーナーで毎回投稿してますので、そちらもよろしくしていただけますと幸いです。

 ラジオは文化放送にて毎週金曜日23:00から放送中。スマホアプリradikoなら無料で1週間聞き逃し配信してます。YouTubeには過去アーカイブも揃ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ