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という訳で、次の日曜日に長峰さんを我が家へ招待した。
もちろん祖父のわがまま云々は内緒。単にウチで昼食でもいかがですかというお誘いである。
さりげなく、母もいますよ紹介しますよと言い添えたが、長峰さんは快く招待を受けてくれた。
さすが紳士。というか、これって彼もその気なのでは……なんて、淡い期待を抱いてしまう。
「いらっしゃい、長峰さん」
「こんにちは、香奈さん。本日はお招き頂きまして」
当日、仏壇のある和室に彼を案内する。
仕事が休みだというのに、長峰さんはいつも通り立派なスーツを着て、ちゃんと手土産まで持ってきてくれた。
母もひと目で気に入ったらしく、私たち三人は楽しく和気藹々とお昼を食べた。
「いやあ、とても美味しかったです。つい食べ過ぎてしまいました」
長峰さんが、満腹になったお腹を擦りながら笑った。
「お粗末様でした」
母はさっきから、ニコニコしっ放しである。
「お母様は料理が凄くお上手なんですね。唐揚げなんか、絶品でしたよ」
「あら嬉しい。でも、その唐揚げを作ったのは香奈なんですよ」
「えっ、これを香奈さんが。それは素晴らしい」
「いやあ……」
大人の渋い微笑みに、私はすっかり舞い上がってしまった。
「香奈さんの将来の旦那さんが羨ましいですよ。こんな美味しい料理を毎日食べられるなんて」
「やだもう、褒めすぎですよ、長峰さんったら」
ちょっとちょっと、かなりいい感じなんじゃない?
おじいちゃんも、これなら満足でしょ。後は、単身赴任中の父を無理矢理説得して……。
そのとき玄関のチャイムが鳴った。




