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旅は良い

グレンと亜花(あわな)の出会いと、本編までの経過を書いていこうと思います

俺はテキトウにそこら辺を放浪していた。これといった理由はなく、本当にただ[なんとなく]放浪していた。

「……………」

鎧師になってから金に困ることもなくなったし、俺は強いから盗賊に襲われて困ることもない。本当に、ただ、のんびりとした漂流。


「どんぞどんぞ、こげさなんもねぇ村だんがゆっくりしてってけれ。」


色々な地方に赴いたお陰で、訛りに訛った言語もある程度分かるようになっていた。……これぐらいならまだ良い。とある地方で「でべねこっちょるんけんの。(ゆっくりしていってください)」と言われた時は度肝を抜いたものだ。


「ありがとう……困ったことがあったらなんでも言ってくれ。尽力するから。」


俺はそれだけ言うと、その村の宿屋に向かった。

ここはかなり小さな村だ。勇者領南南東1500キロメートルに位置する、本当に小さな村。ある程度戦士はいるようだが、村の防衛はやはり20キロメートル先の勇者領の防衛拠点に任せている為、ほとんどその力を農作業に発揮している。特産物はさつまいも。近くに火山と川があるからだ。


のんびりと歩きながら、周囲を見渡す。

いつも思うが、田舎ってのはアットホームかそうではないか極端だ。まぁ、その土地の風習ってのがあるからとやかくは言わないが………ここはアットホームな場所だな。見ず知らずの俺に宿も貸してくれるし、つーか宿があるだけでも凄い。

道行く人も農作業や商業に追われながらも、どことなく表情は穏やかだ。


「……こういう老後を送りたいもんだ。」


俺は呟きながら、宿屋に入った。



「久しぶりにスイートポテトなんて食ったな………」


俺は夜ご飯を食べ終わった後、村の外に出ていた。

しっかし同じ勇者領だというのに単価が安い安い。こういうところで経済の格差とやらを思い知らされる。………まぁ、世界経済なんてのは格差があるから利益が生まれるんだ。[差]がなきゃ価値は生まれない。………難しいねぇ。


「わっせい。」

メシャァ!

村の外に湧いていた魔物を軽く蹴り殺す。

俺が来ている以上、魔物が寄り付かねーようにしないとな。………まっ、軽く処理しとけば学習して襲ってこないだろ。


「………良い眺めだなぁ。」


火山から燻る煙を見つめながら、俺はつぶやいた。暗い夜空だというのに、どうして煙っていうのは見えるのだろう。薄っすらとではあるが確実に、星達の橋のように存在する。

………火山があるってことは温泉があるってことだ。………いいねぇ、星でも見ながら湯に浸かるか。

ズルッ……

「………ん?」


不意に音がした。何かを引きずるような……魔物?いや、この周辺の魔物は片付けた。……動物か?


「………まっ、良いか。ひとまず風呂だ。」


俺は音のことを忘れ、村の中に戻った。



翌朝、俺は村の人達に話を聞いて、この辺の特産物や名所、困った事を聞いていた。俺の流儀なのだが、調べ物は基本人に聞くようにしているのだ。勿論本でも調べることはあるが、それは自宅でのみ。他に人がいる場合は人に聞くと決めている。


「そういえば最近、別の場所に火山ができたそうよ。」「そうそう、3日前だ。大きな地鳴りがあったかと思ったらいきなり出来たんだ。」「3キロ先に[大地の奇跡]って場所がある。俺達の先祖が眠ってるんだ。」「よくわかんねぇ小さな男が変なの作ってたなぁ。塔みたいなやつ。」「アルビノっつーの?よく分かんねーけど白いリスが森にいたな。」「森には結構美味いのあるぞ、アップルヴァリィドとか。」


なるほど……なんか森が良いらしいな。森にでも行ってみるか。


「あ、そうそう。」


俺が森に向かおうとした時、1人の女性が呼び止めた。


「森に行くなら注意した方がいい。特に夜ね。」

「ほう……魔物でも出んのか?」

「いや、そんなのよりもっと恐ろしい。」


女は眉間にしわを寄せ、おっかなそうに喋る。


「悪魔が出るんだよ。」

「………悪魔ねぇ。オッケー、ついでだ。探索がてら退治しといてやるよ。」

「きぃつけた方がいいよ。なんつったってありゃあ、笑いながら人を殺す悪魔なんだからね。」


俺が軽い態度なのが気に入らなかったのか、女はまた脅しつけて来た。………そんなにヤバいのか?


「…………分かった、用心しとくよ、」


俺はそれだけ言って森へと向かった。



「ふんっ!!」

「あっぷるん!!!」


ドズゥンン!!!

飛び出して来たアップルヴァリィドを蹴り飛ばした。その衝撃でアップルヴァリィドは気絶し、地面に倒れた。

アップルヴァリィドはどこでも取れる高級品だ。……どこでも取れるのに高級品はおかしいだろと思ったそこのお前、その考えは甘い。このアップルヴァリィドはその場所によって美味しさが変わるのだ。アップルヴァリィドの名産地と言われる場所のアップルヴァリィドはメチャクチャ美味いのだ。そして美味さに比例して可愛くて強い。その差が出来るのは土壌だとかなんとか言われているが………まぁ、知らん。俺は食うの専門だ。栽培に関しては興味ない。


ポンッ

アップルヴァリィドにとどめを刺した後、魔法で自分の部屋に送った。

この大きさならかなり美味いに違いない………穴場だな、ここは。


ガサッ

「っ!!!」

ザスッ!!!

「キュイっ!!」


背後の茂みから物音がし、俺は急いで石を掴んでそこに投げ飛ばした。すると短く小さな悲鳴が聞こえた。


「………なんだよ、違うじゃねーか。」


茂みをかき分け、悲鳴の正体を持ち上げるとそれは白色のネズミだった。

………まさか、あのおっさん。ネズミをリスと勘違いしてないだろうな?

俺はそれを適当に埋めてその場を後にした。



「………なるほど、確かにこいつは火山だな。3日前にできたとは思えねー。」


目の前にデカデカと存在する火山。プレート運動で隆起したのか?………分からないが、活動は沈静化してないらしい。ドクドクとマグマを出し続けている。


「………大地の神秘とやらを感じるな。いやーー、一生に一度見れてよかったわ。」


地球に造山活動なんてそう簡単に見れるもんじゃない。良かった良かった、人生がまた一段と実り豊かになったわ。


カァーカァーカァー

カラスが鳴き始めた。……そろそろ日暮れだな。探索の続きは次回に回そう。……その時に悪魔とやらに会えるといいんだが。


俺は体を伸ばしながら村へと向かう。アップルヴァリィドで少し運動したとはいえ、体がなまって仕方がない。運動不足になりそうだ。

………明日は走りながら探索でもするか。


ぷ〜〜ん………

少し歩くと、腐った臭いがした。鉄が錆びたような………脂が腐敗したような………ギトギトで不快な臭いだ。

「…………」

俺は眉をひそめながら歩き続ける。

嗅ぎ慣れた臭いだ………ちっ、嫌なことに昔を思い出してしまう。


そしてすぐにその臭いの出所を発見した。

魔物の死体だ。それにハエが群がり気持ち悪いことになっている。赤黒く変色した肉や、ゲロッと変わった脂肪。黒く固まった血液が薄氷のように床に広がっていた。

殺されてからかなりの日数が経過しているな。それにこいつは……聖騎士長クラスの魔物だ。


触りながら体の損傷具合を確認していく。

胸をポッカリと抉られている。しかも正面からだ。………敵と対峙して、為す術もなくやられたってところか?


「………確かにこいつは悪魔が住んでるな。」


俺はフンっと一回、鼻で笑った後、村へと戻った。

重要関連作品

狩虎とイリナが出会い始まった本編。まだまだ更新中→https://ncode.syosetu.com/n2411cs/

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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