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聖徒会 第四章  作者: 麻生弘樹
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聖徒会 第四章

「よろしくお願いします。

神島さん。」

希は蓮に向けて頭を下げた。

「こ、こちらこそ。」

蓮も思わず頭を下げる。

仁からのお願いで今度は希とタッグを組むことになった蓮。

仁曰く、誰が蓮のパートナーとしてふさわしいか、こうして確かめていると言う。

聖徒会に入った頃はそれこそ、分からない事ばかりだったが、今では敬介や仁とも仲が深まっていた。

「神島君ももはや、立派な聖徒会のメンバーだね。

この調子で頼むよ。」

爽やかな表情で仁は言った。

それを聞いて敬介もふと笑う。

その後、聖徒会メンバーによる会議が行われ、その日の活動は終わった。


次の日の放課後、蓮は教科書をまとめて鞄に入れ、下校する所だった。

一階の玄関に降りると、そこには希が下駄箱から靴を取りだしていた。

「神島さん。」

蓮と顔が会うなり、にこりと微笑む。

片手を挙げて、それに答える蓮。

「女神も今から帰る所なのか?」

「はい。

神島さんもですか?」

「ああ。」

すると希は

「もし良かったら、一緒に帰りませんか?」

「え?」

いきなりのことに少し驚く。

「私と神島さんはパートナーになったばかりですし、一緒に帰ったりしてもっと仲を深めたいなと思いまして……、迷惑でしたか?」

「いや、そういう訳じゃ……。」

今まで一人で帰るのが当たり前だった蓮。

いきなりの誘いに少し戸惑ったが、

「いいよ、一緒に帰ろう。」


こうして一緒に帰ることになった蓮と希。

帰る間に希は様々な事を話してきた。

お互いの趣味や、学校の授業に、この前行われた試験の話など。

蓮は初めて誰かと一緒に帰れるということに照れながらも、嬉しさを感じていた。

いつの間にか蓮も積極的に会話をするようになった。

しばらく歩いたのち、希の家の前に到着した。

「一緒に帰って下さって、ありがとうございました。」

頭を下げる希。

「いや、俺の方こそ楽しかったよ。」

蓮は素直に本音を述べた。

微笑む希。

その時、突如雨雲が現れ、強い雨が降り出してきた。


「悪いな、雨宿りさせてもらって……。」

テーブルの椅子に座り、希が貸してくれたタオルで頭を拭きながら蓮は言った。

「気にしないでください。

いきなりだったんですし。」

そこで蓮はふと思った。

「そういえば女神の親は?」

そして蓮はその質問をしてしまった事を後悔した。

親の事を聞いた途端、希の顔が曇った。

そして希は静かに口を開いた。

「両親は、殺されました……。

魔物に。」

「え……?」

希は蓮の向かい側に座ると自分の過去について語りだした。

希は小さい頃、自分の能力に気付くと、自分を嫌うようになった。

自分が化け物みたいに思えてきた希は自分の殻に閉じこもるようになった。

そんな希を両親は優しく励ましてくれた。

その力を恐れるのではなく、人の役に立てなさいと。

それ以来、希は自分に自信を持つようになり、この力を人々の役に立てようと決めた。

そんなある日、希が学校から帰ると、両親は殺されていた。

辺りは血で真っ赤に染まっていた。

そこに一人の男が立っていた。

その男は希の秘めた力が狙いだった。

希に襲い掛かろうとしたその時、悲しみと怒りによって能力が暴走し、何とかその男を追い払うことができたのだった。

それから、高校に入学した希は神山仁という男に聖徒会にスカウトされた。

そして希は自分以外にも能力を持つ者がいるとう事を知る。

その後、希は聖徒会に入りこの世界を守る為、そして両親の仇を討つ為、日々戦っているという。

そこまで話し終えた希の目には涙が。

「そうだったのか……。」

「ごめんなさい……、こんな話をしてしまって……。」

涙を拭う希。

「……辛かったよな。」

「……え?」

蓮は続ける。

「それでも女神は一人で頑張ってきたんだもんな、

偉いよ。」

「神島さん……。」

「俺も小さい頃に両親が死んで、能力に気付いてからは周りから恐れられるようになって……、でもそんな俺を救ってくれたのは女神なんだ。」

蓮は希に微笑む。

「何で自分なんか生きてるんだろうって思ってて、でも、女神は俺に生きる価値を教えてくれた。

もっと自分を信じてほしいって。

俺ももう、この能力を恐れたりなんかしない。

この力を使って、役に立てるよ。

だから、もう泣くな。」

最後に蓮は

「お礼に今度は俺が女神を助ける。」

と、伝えた。

その言葉を聞いた希は笑顔になった。

お互いに笑いあう。


激しい雨もようやく止み、蓮は希と家の前で挨拶をかわし帰ろうとした。

その時、蓮は家に入ってく希を呼び止めた。

振り返る希。

そして蓮は尋ねた。

「今週の日曜日、空いてる?」


日曜日、蓮は緊張しながら駅前のベンチに座っていた。

深呼吸をし、何度も自分を落ち着かせる。

蓮は希を映画に誘った。

少しでも希を元気にさせたいという想いから、思い切って誘ったのだった。

しかし蓮はどうしたものか、待ち合わせの一時間前にはすでに待機していた。

(あくまでこれは、一緒に遊びに行くのであって、決して、デートとかでは……。)

などと、目を瞑り自分を説得していた。

そのため、いきなり自分の名前を呼ばれた蓮は驚いた。

目を開けると、そこには希が急いで来たためか息を吐きながら立っていた。

ありきたりなシャツと、ごく普通のジーパンをを着てきただけの蓮とは違い、希のファッションは目を置くものがあった。

女子高生向けのファッションモデルでもやったら間違い無く人気者になれるに違いない......。

思わず、ドキッとしてしまう蓮。

「ごめんなさい、遅くなってしまい……。」

「いや、俺も来たところだったから……。」

と、誤魔化す。

蓮は立ち上がると

「それじゃ、行こうか?」

「はい。」

と二人で映画館へ向かった。

二人が観たのは今話題のアクション映画だった。

蓮は慣れていたが、希はこういう映画は観たことないのか、終始ハラハラドキドキだった。

映画を観終えると、二人はファーストフード店に入り、お昼を食べた。

そこで二人は映画の感想を言い合った。

もっぱら話してたのは希の方だが。

だが、こんなにも喜んでくれている希を見て、蓮は誘って良かったと感じた。

お昼の後は、希は初めてというゲーセンに入った。

クレーンゲームをしたり、シューティングゲームを二人でプレイしたり、いつの間にか二人は笑顔で一杯だった。

「あの、あれは何ですか?」

と、希はあるゲーム機を指差した。

「ああ、プリクラだよ。」

「プリクラ……?」

「まあ、写真を撮って、その写真に色々落書きできたり、お洒落に加工したりして自由に遊べるんだ。

どちらかといえば、女子向けのゲームかな。」

蓮の説明を聞いた瞬間、希は目を輝せた。

「……何なら、やってみる?」

「良いんですか!?」

「いいけど……。」

それを聞いた希は心底、嬉しそうだった。

そしてプリクラの中に入り、お金を入れて画面を操作する。

撮る直前、何と希は蓮に肩を寄せてきた。

「えっ!?」

そのまま笑顔でピースサインを決める希。

一通り、写真を撮った後、ペンでメッセージを書いたり、加工したりする。

出来上がった写真を見ると、蓮は顔を真っ赤にさせており、希は笑顔のまんまだった。

恥ずかしさのあまり、蓮は顔を俯かせていたが、希の楽しさで一杯という顔を見て、自然と微笑む。

その後、二人はデパートに入り、買い物を楽しんだ。

その途中、お洒落な雑貨屋に入り、二人はそこで可愛らしいペンダントを見つけた。

「かけてみれば?」

蓮に言われるまま、希は首にペンダントをかけた。

「どうですか……?」

「うん、似合ってるよ。」

その言葉に照れる希。

そのペンダントが相当気に入ったのか希はずーっとそのペンダントを眺めていた。

それを見ていた蓮はペンダントを希にプレゼントした。

「今日、付き合ってくれたお礼。」

と蓮は言った。

希は嬉しそうにそれを首にかけ、ニコリと微笑み、お礼を言った。

そのペンダントには蓋が付いており中に写真を入れられるようになっていた。

その事に気付いた希は先程二人で撮ったプリクラの写真を1枚剥がすと、そのペンダントに貼った。


楽しい時間はあっという間に過ぎていき、辺りは暗くなっていた。

「今日は本当にありがとうございました。

 こんなに楽しかったのは、初めてです……。」

希は蓮に頭を下げた。

「俺の方こそ、ありがとな。

 楽しかったよ。」

そして二人で帰ろうとした瞬間、二人の近くで大きな爆発音が響き渡った。

一気に辺りはパニックになり、逃げ惑う人々で溢れかえっていた。

「何なんだ、一体っ!?」

辺りを見回す。

その時、希の視界に一人の男の姿が映った。

その男は、怪しげな笑みを浮かべながら立っていた。

「あいつは……!!」

「ハハハハハッ!!

 いつ聞いても、下等な人間の悲鳴はいいものだなっ!」

高笑いを上げる男。

「女神、あいつを知ってるのか!?」

蓮の問いに頷く希。

「あいつが……、私の両親を殺した魔物、ラザルドですっ!!」

すると希は一人ラザルドの元へ向かっていった。

「女神っ!」

蓮の呼びかけにも答えず、希は向かっていく。

そして、

「ラザルドッ!!」

そう呼ばれた男は希の方を振り返る。

「何だお前は?」

ラザルドは希の顔を見ると、こう言った。

「お前……、あの時の女か?」

「お前だけは……、絶対に許さない!!」

次の瞬間、希は両手の平をラザルドに向け、強烈な竜巻を放った。

ラザルドはそれをいとも簡単にガードする。

「久し振りだな……、女っ!!」

と、一気に向かってくるラザルド。

瞬時に攻撃を繰り出していく。

それをかろうじて、回避していく希。

しかし、パワーはラザルドの方が上だった。

希は一気に押されていった。

そして強烈な一撃を喰らい、吹き飛ばされた。

「女神っ!!」

すぐさま蓮が希の元へ駆けつける。

傷が痛むのか顔を歪める希。

「おいおいどうしたぁっ!?

 もっと俺を楽しませろっ!!」

「てめぇっ!」

今度は蓮がラザルドに向かっていく。

蓮の繰り出すパンチを余裕でかわし、軽くあしはらう。

「どいつもこいつも、所詮はこんなものか?

 つまらん!」

更に

「これだから人間とはくだらん生き物だ。

 あの女の親もそうだったな……。

 無力なくせに、女を守ろうと必死に抵抗し、無残に死んだ!!」

それを聞いた希はラザルドを思いっきり、睨み付けた。

「黙れっ!!」

立ち上がる希。

「絶対に許さない……!! 

 必ず、お前を倒すっ!!」

次の瞬間、希の身体から黒いオーラが出た。

「女神っ!?」

そのまま立ち向かっていく希。

さっきよりも、攻撃力も、速さも上がっているようだった。

「そうだ!

 こうでなくっちゃあ、面白くないっ!

 俺を倒してみろっ!

 無残に死んだ親の仇を討ってみろ!」

「貴様あああっ!!」

それはまさに暴走しているかのようだった。

そしてどんどんラザルドを押していく。

だが、ラザルドは怪しげな笑みを浮かべたままだった。

「いいぞ、その力だっ!」

 そして希は両手の平から、黒い竜巻を放った。

吹き飛ぶラザルド。

「ふ、これでいい……、いずれこの女は……!」

そのままラザルドは姿を消した。

それと同時に希から黒いオーラは消え、その場に倒れた。

「女神!

 しっかりしろっ!」

すぐさま、蓮は救急車を呼んだ。

駆けつけた

救急車に乗せられ、希は病院へ運ばれていった。

蓮も病院へ向かう。

ベッドに横たわる希は眠ったままだった。

医者からは、幸い命に別状はないとの事だった。

「少しいいかな、神島君。」

後から合流した敬介と仁は希の様子を見たあと、蓮を呼んだ。

希の事は敬介に任せ、蓮と仁はベンチに座っていた。

そして仁から、とんでもない事が告げられた。

「嘘だろ……!

 そんな話、信じられる訳……!!」

「気持ちは分かる。

 だが、これは残念ながら事実なんだ。

 女神君の中に眠る危険なパワーが暴走すれば、この世界は危機にさらされる。」

「!?」

仁は続ける。

「女神君は昔、両親を殺された。

 その大きなショックで能力がさらに覚醒してしまったんだ。

 女神君自身もその力に飲み込まれる可能性がある。」

「もし、女神がその力に飲まれたら……!?」

少し間を置いた後、仁は答えた。

「女神君は死んで、この世界も滅びる。」


その後、二人と別れた蓮は希のいる病室にいた。

蓮はただ、見守る事しかできなかった。

一体、どうすれば……。

だが、答えは出なかった。


後日、希は退院した。

退院した希を蓮は家まで送って行った。

「すみません、荷物まで持ってもらって……。」

「これくらい、気にすんなって。」

しばらくして希の家まで辿り着いた二人。

「無事、退院できて良かったよ。

 お大事にな。」

「はい。

 色々とありがとうございました。」

頭を下げる希。

それじゃと、去ろうとする蓮を希は呼び止めた。


「別にお礼なんてしなくても……。」

テーブルの椅子に座る蓮は言った。

「これくらい何て事ありませんから。

 せめて晩御飯ぐらい、ご馳走させてください。」

と、希はエプロンを付け、料理を始めた。

しばらくすると、蓮は立ち上がり俺にも手伝わせてほしいとお願いした。

そして二人で調理をする。

「ところで、何を作るつもりなの?」

気になった蓮は尋ねた。

すると希はポケットから一枚の紙を取り出した。

「それって……。」

その紙は以前、希が蓮のために書いた唐揚げのレシピだった。

調理のコツや、注意点までビッシリと書いてある。

「はい。

 前に作り方を教えてあげますねと言ったの、覚えてますか?」

「うん。」

「なので、一緒に作りましょう。」

その後、蓮と希は唐揚げを作り上げた。

「いただきます。」

出来立ての唐揚げを口にする蓮。

「美味しい!」

自然と感想が口から洩れる。

「二人で愛情込めて作りましたから、とても美味しいです。」

「ああ、最高だよ。」

美味しそうに唐揚げを食べる蓮を見て希は嬉しそうに微笑んだ。

しかし、すぐに顔を俯かせる。

「女神……?」

希の様子がおかしい事に気付く蓮。

「思うんです。

 自分が人間じゃ、なくなるんじゃないかって……。

 あの時も、自分が恐ろしい力に飲み込まれようとしているのを感じました。

 そして、このまま怪物みたいになって誰かを傷付けてしまうのではないかと思って……。」

「……。」

蓮はただ、希を真っ直ぐ見つめるだけだった。

「ごめんなさい! 

 こんな話してしまって……。

 早く食べましょうか。」

すると蓮は

「させない。」

と、キッパリ言った。

「え?」

希は蓮を見た。

「君を、女神をそんな風になんか、絶対にさせない。」

そして

「約束する。

 俺が女神を守る。」

と希に対して笑みを浮かべた。

それに対し、希も笑みを浮かべる。

「その方が、可愛いよ。」

思わず蓮の口からそんな言葉が出た。

「え?」

「いや、その……。」

誤魔化そうとしたが蓮は覚悟を決め、本心を言った。

「女神は笑ってた方が……、可愛いよ。」


その後、食事を終えて帰ろうとする蓮を希が呼び止める。

振り返った瞬間、希は蓮の頬にキスをした。

「!?」

いきなりのことに驚く蓮。

すると希はいたずらっ娘みたいに笑った。

「さっき励ましてくれたお礼です。」

「……!!」

顔を真っ赤にさせている蓮に対し、希は続ける。

「今度、また私とデートしてください。」

「……え!?」

希は小指を差し出す。

「約束ですよ?」

それを聞いた蓮は戸惑ったものの、笑顔で頷き、小指を差し出した。


約束を交わしたあと、希はソファに蓮のケータイが落ちているのを発見した。

希はそれを手に取り、蓮の元へと走って行った。


「くっ……!」

蓮は突如、現れたラザルドに苦戦を強いられていた。

「相変わらず、歯ごたえがないなあ?」

「てめえっ!」

ラザルドに向かっていく蓮。

しかし、ラザルドの放った闇の波動が蓮を直撃する。

「がはっ!?」

そのまま蓮は倒れた。

「おいおい、もう終わりかあ?」

蓮の顔を踏みつけながらラザルドは不満を漏らした。

その時、風の球がラザルドを直撃した。

「ん?」

ラザルドには全く効いていないようだ。

見ると希が立っていた。

「神島さんから離れてっ!!」

「ほう!

 また会えるとは、嬉しいぞ!」

そのまま蓮を思い切り希の方へ蹴り飛ばす。

「神島さんっ!!」

「逃げろ……、女神……!」

血だらけの蓮の顔を見た希は怒りをあらわにし、再び黒いオーラが現れた。

「はああっ!!」

ラザルドに向かっていく希。

「それを待っていたぞっ!」

ラザルドは指を鳴らすと黒い鎖が突如、出現し希を拘束した。

「うっ!?」

身動きが取れない希。

そのままラザルドは希を自分の元へと寄せると、希の頭を掴み意識を奪った。

そして希は動かなくなった。

「この女の力は非常に興味深いっ!

 もらっていくぞ!」

「女神!!」

蓮が手を伸ばすが、希はラザルドと共に闇へと消えて行った。

そして、蓮は再び意識を失った……。



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