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7/▽×
夕暮れ時、花火の音が聞こえた。空気を揺らす大きな振動が腹の底から祭りを知らせる。
今年もこの時期が来た。
薄らいでいく自我の、希薄な意識で彷徨っていた僕は花火の音で現実まで意識が浮上した。
このとき僕は買い物帰りだったらしい。
らしい、というのは、僕自身が買い物にいっていたわけではないからだ。
いつからか、僕の身体は別の誰かに乗っ取られていた。
これは、八女津媛を崇める使徒のものじゃない。それと融合して生まれた別の存在だと、僕は思っている。
盆には早いけど、有子と暁登の墓参りにいってきた。
こうして日記に書き残しているのだから、別の存在もきっとこの後、日記を見るだろう。
とはいえ、僕は彼と意思の疎通をしたいわけでもない。自分を喰っていく存在と言葉を交わすことが、どれほど正気の沙汰ではないのか。
彼自身が悪いというわけでもないのだけれど。
次は書けるだろうか。