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7/××
櫟 朝一「この町で。」の主人公。
7/××
朝霧から身を起こすような、そんな感覚だった。
そよ風に似たものに包まれたところから解放されて、現実に戻された目覚めだった。
身体を起こし、意識の調子が現実にピントがあったとき、さっきまでいた柔らかな羽毛のような感触は、自分が溶けていく感覚なのだと気づいて、恐怖を深いため息で吐き出した。
今日はあの子に出会った。僕の胸の内にある、八女津媛を崇める神官の心を感じて気持ちが悪かった。
だけど、あの子が人として生活していて、ちゃんと成長できていることをこの目で確認できたのは、素直に嬉しく思う。
きっと有子も。
あとどれくらい生きていられるだろうか。
気が向いたら、またこの日記に記そう。
それまで、できるだけ、僕はここに生きていたい。
きっと、この日記も、そういうものなのだ。