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色彩

作者: tk
掲載日:2017/04/08

 空は青色だ。


 私の歩く道は灰色で、所々コンクリートの色がまばらで白色だったり黒色だったりする。


 銀杏並木は道を黄色に染め、どことなく銀杏の匂いが立ち込める。


 当たり前の色を私は知らない。


 それが黒い色だと私が判別するのは、光の波長を計測して、私の中のセンサが判別しているからだ。匂いを判別するのも、一度嗅いだことのある匂いを、私の鼻にあるセンサがメモリと照らし合わせているに過ぎない。


 この世界はこんなにも色にあふれているのに、どうして私の世界はこんなにもモノクロなのだろう。


 私を作った柳さんはそんなことは気にするなと言っていた。私の仕事は別にあるらしい。


 私は戦争のために作られたそうだ。


 人間はすぐに死んでしまうから、代わりに戦うモノが必要なのだ。それが自立思考型機械歩兵P.TYPE-03の存在理由、私の、生きる意味だ。


 私は極めて人間に近いAIを持っている。学習能力だけでいえば人間すらも超える力がある。


 だから私は、人をころせなかった。


 銃を握って、心臓を狙い、打つ。心臓を外しても胴体に当たればよし。臓器を貫いていればなおよし。私は人ではない。私はロボット。人間の血の色は赤い。汚い赤色。私の血の色は何色なんだろう。こんなに気持ちの悪い色をしているのだろうか。見たくない。


 そう思うと、不思議と動かなくなってしまったのだ。


 感情というのは色のない濁流のようで、私はいつもそれを遠くから見ているのだ。人間ならば、この濁流を止められるのだろうか。この流れに身をまかせることも出来るのかもしれない。私にはそのどちらもできないというのに。


 そのあたりの調整は柳さんの担当だったらしい。私には柳さんが何を考えていたのか分からないが、私を見た柳さんは少しだけ悲しそうにしていた。


 私は失敗作なのだ。


 人を殺せない。これは戦争用に作られたモノとしては決定的な欠陥だった。私は処分される。仕方ないことだ。私は生きる意味を果たせないのだから。


 私は処分される。


 これは死ぬということなのだろうか。私は人間ではない。生きているわけではない。しかし、柳さんは私に生きる意味を教えてくれた。私は生きているのだろうか。誰かを殺すために、人間を殺すために?私は、生きているのだろうか。


 私は生まれる時代を間違えたらしい。平和な世界だったら、私は処分されずに、人間も殺さずに、笑いあって、手を取って、友だちになったりできたのかな。空の色を語り合ったり、銀杏の匂いに顔をしかめあったりできたのかな。


 そんな世界があればどんなにいいだろう。


 青い空に大きな白い雲がかかる。眩しい太陽が隠れて、私は少しだけ下を向いた。


 涙が出る機能は私には無かった。





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