13話 差
15時に闘技場でグラドリア家の七光り、アイン・グラドリアと戦うことになったカズト。なぜこんなことになったのかと相棒のライドは笑いながら考える。
「カズト!お前やったな!俺かお前が必ずこうなるとは予想してたけど俺じゃなくてお前か!」
ライドはまだ笑う。しかしカズトは逆に落ち込んでいた。
「カ、カズト、どうしたんだ?」
エルザが話しかける、その問いに俺は弱々しく語る。
「いや、まさか俺があんなことするなんてな、、、まだ決闘自体も完全に理解してないのに…」
「なら私が伝授しよう。決闘とは以下のルールで戦い合う。
・真剣と魔法での勝負
・勝敗に生死は問わない
・勝者は敗者の人としての権利を剥奪しなんでも敗者に命令ができる
・部外者が決闘中に入った場合、その決闘は無効となり部外者は極刑にされる
といった感じだが理解したか?」
おお、すっげー分かりやすい。エルザ様様だな!
「ああ、理解できたよ、ありがとうエルザ。」
お礼を言うとエルザは満足そうに高々と鼻を上げる。
「それは何よりだ!私も伝授して満足だぞ!」
「でもひとつ質問」
「む?何だ?」
「真剣って両者とも長剣を使って戦うのか?」
「そんなことは無い。剣でも槍でもナイフでもさまざまな武器は使用可能、魔法も自由に使ってよし。そういえばお前はなんの武器で戦うんだ?」
説明を終えた後俺が何を使う武器かも要ってなかったからか聞いてきた。
「うーん、、、俺大体武器使うと戦いづらいんだよなー。基本的には剣を使うけど最近はコレしか使ってないよ」
俺はコレを掲げる。
「…コレとは…なにも持ってないぞ?」
そう俺はなにも持ってない。つまりは
「カズトは素手で戦うんだよ。いわゆる格闘かな。」
ライドが俺の変わりに説明した。その言葉を聞いて3人はハトが豆鉄砲食らったような顔をしていた。
「なななな…」
サモンなんかは口が顎が外れるくらい開けてあんぐりとしていた。やばい、笑いそう…
「まあ、そういうことだ。もう行かないと行けないみたいだしいってくるよ。あ、あと王女は一緒に来ていただきますよ。」
俺はカナを連れて闘技場に向かった、カナをつれてきた理由はいくつかある。
闘技場の控え室に30分間に入った俺とカナは準備を始めた。
俺の準備が終わりカナに思い切りカベに追い詰める。いわゆる壁ドンだ。
「カ、カズト君・・・?」
愛くるしい目で俺の目を見てくるカナが愛おしい、でも、だからこそいわないといけないことがある。
「カナ、なんで教えてくれなかったんだ?」
「な、何を?」
「あんな奴と婚約を交わしていたんだろ?なんで教えてくれなかったんだ?」
「そ、それは…///」
「いってみて俺は怒ってるんだ。」
「に、2年前ね、アインさんのことをカズト君と勘違いして付き合ったの。アインさんは私のすべてを知っているっていって…でも1日付き合ってはなしたら全然違って…あんな性格だとは思わなくて…私はそこで思いっきり振ったんだけどしつこくて…それでベッドに倒されて、抵抗してやっと帰ってきたの、でもお父さんそれを言ったらアインさんの人生を台無しにするって思って…ごめんなさい」
俺は鈍器で頭を打たれた気分だった。コレは俺の責任だ。2年目にカナを見つけていればこんなことにはならなかったんだ。カナは優しい。どんなときも自分より他の人を大切に思う。それがどんなことでも
「…」
カナの言葉を聞いて俺は涙を流していた。自分の後悔がまるで崩壊したダムのように
「カ、カズト君!?」
カナが俺の名前を呼ぶ。その声が心地よくてカナに抱きつく
「ごめん、ごめんな…俺が早く君を見つけていれば…!」
カナは俺の背中をなでて慰める。
「ううん、あんなことは合ったけど今は幸せだよ。君がこうやって手の届くところにいるんだから」
「カナ、大好きだ」
「私もだよカズト君」
そして俺達は深く、長く口付けを交わした。
アイン、お前には俺が制裁を下そう。
「さあ始まりました!この決闘!今回は新入院生同士の決闘です!なんと2人は女性のめぐってのトラブルでこの決闘をすることになったらしいのです!戦いが見ものですね!」
司会は多くの院生の前でそう語る。
「カズトの奴大丈夫か?あいつなんも武器持たないで戦うんだろう?」
サモンは心配そうに言う。
「で、でもカズトさんは新入院生の主席です、案外あっけなく終わるかも…」
サシャが安心させるために慌てて語る。
「いや、そうは行かないかもな」
「エルザ、どういうことだ?」
「あのアイン・グラドリア、あいつはこの決闘で幼いころから負けなしだという、そして何度も人をここで殺しているのだ。人の命はそんな簡単に奪ってはいけないものなのにな…」
エルザは口をかみ締めて語った。
「大丈夫だエルザカズトは絶対負けない」
ライドは余裕の感覚でしゃべる。
「その根拠はあるのか?」
「ああ、なんせ俺の相棒だからな。あいつは英雄ロールハート夫婦の愛弟子だ。弟子ならあんなの簡単だ。それに…」
ライドはそこで話すのをやめる。
「それに、なんだ?」
エルザが答えを知りたがり問い詰める。
「いや、あとはこの決闘を見れば分かるだろ、世界最強の一人、カズト・シュトライドの実力をな」
「それでは登場していただきましょう!決闘で幼いころから圧倒的に勝利してきたこの決闘の創造者、アベロア・グラドリア公爵の息子、アイン・グラドリア様ー!!」
『わあああああああああ!!!』
大きな歓声とともに入り口からアインは現れた。まさに歴戦の馬鹿野郎だな。
「そして今回のアイン様の相手をするものは、この学院の新入院生主席、カズト・シュトライド!」
俺は紹介されて闘技場に出た。しかし俺が出とき、観客がざわつく。
「おい!武器はどうしたんだ!まさか怖気づいたんじゃないだろうな!!」
観客の一人が声を荒げてブーイングする。
「アインをなめてんのかー!!」
などとまったくうるさいな。
前のアインはもう勝ったも当然といったような顔して俺を見ている。
「お前の人生も終わったな、まさか武器を持ってこないとは」
「御託はいいからこいよ王女に…カナにちょっかいをだしたド変態大馬鹿野郎。」
「き、貴様!後悔させてやる!」
『それでは…』
お互いに構える。アインは高級そうな長剣を、俺は拳を
うるさかった観客の声も聞こえなくなる。
感覚が研ぎ澄まされる
『はじめ!!』
最初に飛び出したのはアインだ。そのまま俺の首めがけて剣を振り下ろす。
「もらった!!」
俺はその剣に拳を突き出す
「馬鹿か!そんなことしてもお前の腕ごと切り捨ててやる!」
剣と拳が触れ合うとき、その瞬間魔力を開放する。
『ドゴ!』
鈍い音が鳴る。
アインは何が起きたのか分からないといったような感じだ。
「何あれ…」
サシャが目を見開いてその光景を見る。
「あんなことできるわけ無いだろ…」
サモンもおなじようだ。
「いったろ、アレがカズトの武器。いわば近接魔導士、マジックソルジャーだ。」
カズトの拳には炎を纏っていた。その剣の攻撃をこの炎の拳で止めたのだ。
アインは驚愕の顔で俺を見る
「なんだよそれ…そんな魔法知らないぞ!」
「知るわけ無いだろ、俺のオリジナルなんだから。今のうちに覚悟をしておきな、お前は俺に勝てない。」
見る見る内に赤くなっていた顔は熱を失ったように青ざめていく。
「う、うわあああ!死にたくない!死ね死ね!俺の前から消えろ!!」
アインは俺に向かって無我夢中に剣を振りまわる。だがそんな攻撃はまったく当たらない。
「俺がお前の前から消えるんじゃない、お前が俺とカナの前から消えんだよ、人類のクズが」
そろそろ終わりにしようか
「じゃあな、死ぬよりも辛い思いをするのは俺じゃなくお前だったな」
俺は思い切り息を吸い込みアインに向かって口から炎を吐く
「や、やめろおおおおお!!!」
『炎の息吹!』
静かになった闘技場に立っている俺と寝そべっているアインがいた。
「じゃあな、お前みたいなクズがカナにちょっかいを出すからだ。」
そういって俺は舞台から降りた。
『しょ、勝者、カズト・シュトライド!』