05 買い物
ほんのちょっと手直ししましたが大筋に影響はないです。
第5話
ザー。
風呂場のシャワーの音が響き渡る。いやー、時間かかるなぁ。何が時間かかるって洗髪の事だよ。身体はまあ男と同じで石鹸をつけてそれなりに洗えたんだけど……、いや、大事な女の子な部分やおっぱいは垢すりを使わずに指で洗ったけどね。垢すりでごしごしやって痛いと嫌だからさ。だから広げたり揉んだりはちょっとしかしてないよ! ホントだよっ!
だって弄り過ぎていい声で鳴いたら、お風呂場は響くからもうひとりの俺に気付かれてしまうしね。
っと、話がそれた。
んで、この髪の毛が曲者なんだ。だって今のオレの髪って凄く長いから洗うのがとても大変なんだわ。
だが切る気は毛頭無い! この長さの髪を切ったら犯罪だろう。勿体無い! こんなに綺麗な黒髪を切ってしまったら後悔する事間違いないし。
…………。そうは思う。そうは思うんだけどこの髪の毛、長いなー。長過ぎて面倒だなー。
ザー。
髪の毛を洗ってバスタオルでごしごしと水分を拭き取りつつ頭を一緒にまとめて、ふと横にある鏡を見る。
それにしてもこの身体。伸長は低いしおっぱいは小さいし顔はロリだし、まったく……ホントにオレ好みだよなぁ。
うん、可愛い。鏡に向かってにっこりと微笑んで軽くウインク。そして鏡に向かって変なポーズをとってみた。うーむ、客観的に見てもこのお子様体型で悩殺ポーズは様にならないなぁ。
でもでも逆に大人になりたくて背伸びをしてるってシチュエーションならむしろ可愛いかもしれないぞ。
そんな事を考えていると背筋がぞわわーってなった。うわぁ……オレって何やってんだろう。昨日女の子になったばっかりだと言うのにこの順応ぶり。ちょっとTSに対して理解がありすぎだろう。もっと深刻に物事を考えろよ!
でもこの子可愛いよなぁ。そんな風に考えるとまたもや横の鏡に見とれてしまう。
あー! もう! 自分で自分に見とれてどうするんだよ!
……でも可愛いなぁ。胸も小さいから殊更可愛く見える。貧乳好きなオレの主観なんだけどね。
そう思うと、少ない胸の先っちょがほんの少し出っ張るくらいに角度を付けて鏡を見る。
おおぉ! ほんのちょっとだけ主張したおっぱいが良い感じに膨らんでいてその先端部にある先っちょを際立たせてる! ああ、ホントにオレってば罪な女だぜ!
さわさわっ。さわさわっ。
現在鏡を見ながらすべすべな自分の肌を触ったり揉んだりで忙しいオレ。ホントに女子の肌ってすべすべでプニプニだよなぁ。はぁ……自分が可愛らし過ぎて辛いわぁ。
そんな変態チックな事を考えてる美少女は鏡の中でもニヨニヨとした表情でふしだらさが満点だ。
しっかし、なんでTS界隈の小説の主人公は自分の裸を見ない様にしてお風呂に入るんだろう?
せっかくこんなに綺麗で可愛いのに勿体無い。もっと堂々と目を血走らせながら欲望に身を任せて女体化した身体を凝視すればいいのに。どうせその主人公達もTSした日の夜には色々と自分で致すんじゃない? 文章には書かないだけでさ。
だから、正々堂々と色々と揉んだり広げたり弄ったりすれば…………うへへ、ふへへ……。
……………………。
…………。
……。
「はぁ、出よっと……」
なんだかんだで色々と楽しかった風呂場から上がる。そしてて曇りガラスで出来たドアから出て足拭きマットの上でペタペタ足踏みをしようとしたら、そのガラスのドアにへばりついている生命体が一体。
「よ、よぉ」
「おう……何やってんのお前?」
「いやぁ、この曇りガラスにちょっぴり汚れがあったのでぇぇぇぁぁあああぁぁ! うおばぁぁ!」
「見え透いた嘘ついてんな!!」
もうひとりの俺が言い訳を言い出す刹那、オレの右手がみぞおちを捉えそのままめり込む。
華奢で小さな右手だけどクリーンヒットが決まれば流石のヤツもただては済まないだろう。なにせオレの必殺ブローはブーメ○ンテリオスだから。
◇
で、今は某百貨店の婦人服売り場の目の前。駐車場に車を停めてからちょっと歩いたけど遂に到着したんだ。
「遂に来たぞ」
「ああ、遂に来たな」
エレベーターを使って降り立った三階フロアは間違う事無き婦人服売り場。周りを見れば女性ばかりだ。なんだかアウェーに来た心境だけどオレはまだいいよな。見た目だけは女性だし。でももうひとりの俺が問題なんだよね。
その相方を見ると姿形は外行きのジーパンとTシャツに青系のチェック柄の上着。まぁいつものオレだった頃の格好だよ。この格好に関してはオレもセンスは無いと判ってるから批評は避けようと思う。
んで、その点オレはただの上下黒のジャージでとてもシンプルな見た目なんだ。でも中が美少女なのでこの格好はすっげーアンバランスなんだよな。
もうひとりの俺の服装がオタク系で残念だし、オレのジャージもアレだからふたり揃っておしゃれには疎いのが判る服装。
更にオレは下着が男物のトランクス……。もう可愛い系の女子としては終わってるなぁ。
「じゃ、じゃあ行くか!」
「おう、行ってきな。俺はその辺のベンチで座って待ってるから。あっ、これお金。一応三万円あるからさ、全部使って来てもいいよ」
「ありがと……って!? 付いてきてくれないの?」
上目遣いに驚いて聞き返す。今のオレは背が低いから基本的に上目遣いだ。
「そりゃあまあ、俺はおっさんだからな、これ以上進んだら女子達の視線で死ねるんだわ」
「そう言わずに一緒に来てくれよー。ひとりじゃ恥ずかしいんだよー」
「えっ! いや、それはこっちも困る! 俺がイケメンだったらなんとか許されるかもしれないけど、このオタファッションで歩いた日には女子の視線で殺されるぞ」
「大丈夫だ。私が殊更一緒に歩いてやるから。な! 頼むよ! 手も繋いで仲の良い兄妹みたいなのを演出するからさ!」
三十路のおっさんと十代の少女で兄妹に見えるかはアレだけど、まあいいよね。
宥めすかして漸く渋々了承したもうひとりの俺。
「ほら、私の手に掴まれって」
「わ、判ったよ」
差し出した手を掴んだオレは、もうひとりの俺を引っ張る様にして歩き出した。体重差は歴然だけどこう言う時は女は強いんだ。たぶん……。
手を引かれ、言われたまま着いてくるもうひとりの俺がとてもシュールだけどこっちも気恥ずかしいから仕方ないね。
周りの女性の視線がもうひとりの俺を矢の様に射ぬくのが判る。アウェーに来てしまいもうひとりの俺の横に大柄な体型が見る見る小さくなっていく。
まぁ、オレの方が頼み込んだんだけどさ、婦人服売り場にまで着いてくるなんてやっぱりすっげーよなぁ。
「お、おい、そんなに早く歩くなよ! 俺をもっと気遣えよ! 周りの女の視線が突き刺さるんだよ!」
「判った判った。私に任せておきなさいって」
沢山降り注ぐ女子からの視線ビームに大層まいっているもうひとりの俺。だからせっかく一緒に来てくれるこいつに恥をかかせない様に振る舞わないとな。
だから年下の妹に振り回されている気の弱い兄を演出させてやる事にしたんだ。
「お義兄ちゃん。私はどれが似合うと思う?」
っと、こんな風にオレ達ふたりは婦人服売り場回りの旅と言う最初の一歩を踏み出した。
頑張って頑張った!
急だったので仕事から帰ってきたら手直しするかもしれません!
※次の日 手直ししました