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平家の合間に書いてみました。


俺 =男の自分。

オレ=女になった自分 って感じに判り易い様に分けて書いています。

第1話




 えーっと……こりゃなんだ?


 目の前にオレがいるんだけど?

 冴えない風体の上下ジャージのわりと横に大柄なオッサンが目の前のベッドに腰掛けている。どこから見てもオレ自身だ。


 鏡でも見てるのかと思って目を擦ってもう一度目を開ける。でも目に飛び込んでくる映像はさっきと同じくボロアパートの自分の部屋。そしてオレが目の前に居るだけ。

 違いと言えば、座っているのは目の前の自分だけで、オレの方は寝転がっている体勢なだけ。なんか二人とも大分混乱しているから寝ているのも悪かろうと、左手を突いてまずは起き上がって座りなおす。

 起き上がるときに確認できた事と言えば、着ている服は目の前のオレと同じく黒のジャージって事くらいだ。




 相手もこっちをみて驚いた顔をしている。まあ、仕方が無いわな。だってオレが目の前にもう一人居れば驚くに決まっている。オレだって凄く驚いてるんだし。


 うーむ。なんでこんな事になったんだろう? 心当たりがあるとすればさっきの腹痛かな。


 ほんの何分か前、MMORPGをやりながら美少女アニメを見るなんて二人分の作業を器用にこなしていたんだよ。

 んで、そんな事をやっていたら急に腹が痛くなってきて、凄い勢いでベッドの上をのた打ち回ったんだ。そこで一瞬意識が無くなったのは覚えてるんだけど多分すぐに意識は回復したと思う。

 ほら、テレビを見てもアニメはまだ途中だし時計を確認したところでやっぱり腹痛から二分か三分しか経ってない。


「お、おい? お前誰? って言うか、いつからそこに居たんだ!」

 

 ベッドに座っている俺がオレの事をたずねてきた。

 でもなー、お前誰って言われてもなー。オレはオレだとしか言いようが無い。

 って言うかさ、目の前に出て来た事に関してはオレからするとお前も同じなんだけどな。だから言い返してやった。 


「お前誰って、お前こそ誰だよ。オレがなんでもう一人居るんだよ!」


「もう一人居るってなんだよ? 俺にはお前の正体が判らないんだけど?」


「はぁ!?」


 こっちはもう一人の俺を認識出来ているのに、目の前の俺はオレの事が判らないらしい。何か色々と考えてると『オレ』って単語ばっかり連呼して、なんだかオレオレ詐欺みたいだ。


「よし判った。ではこうしよう。紙にさ自分の名前を書いて、『せーのーで』で提出するってのはどうだ?」


 あっちの俺が変な事を提案してくる。どう言う事だ?

 ……ああ、なるほど。あっちの俺も双方とも同一人物だとアタリを付けたって事だな。

 そう言う事ならオレももう一人の俺も見なくても名前を書けるし、それで晴れてどちらもオレだとすれば信用もおけるから何で二人になったのかを調べられるかもしれないって事だな。

 



「判った。じゃあ紙とペンをくれ……?」


 色々考えてその意見に従おうと、紙を受け取る為に小さな手を伸ばす。アレレ? 何か変だ。オレの手ってこんなに小さかったっけ?

 まあ、いいや。とりあえず受け取った紙に自分の名前を書く。

 

「書いたぞ」


「おう、俺もだ」


 よし。じゃあ打ち合わせ通りに。


「せーのーで」


「せーのーで」


 言葉と同時に畳んであった紙を開く。案の定その紙の真ん中にはいつものオレの癖の付いた字で『諏訪頼道』と書いてあった。

 まあ、こうなるよなー。どう考えても目の前の俺もオレだもんな。

 理由は知らんけど、多分さっきの腹痛が原因だな。


「よっしゃあ、俺の読みは当たったぜ! こんな事がエロゲやアニメ以外で起こるなんて夢にも思わなかったけど、いつかは起こるんじゃないかって期待だけは膨らましていた甲斐があったってもんだ! 目の前に美少女化した俺が現れるなんて、人生は何が起きるのか判らんなー」


「美少女?」


 なんだ美少女って?

 どこかに居るのか?

 後ろや横をキョロキョロと見回すけど誰も居ない。何を言ってるんだこいつ?


「ああ、お前は気付いてないのか? ほれ鏡を見てみろ」


 ニヤニヤした目の前の俺から手鏡を渡される。客観的に見て自分の事をすげーイケメンなんて思った事もないし、むしろ三枚目だよなーなんて自覚もしている。

 ただ、本人としてはそこまで嫌いな顔ではないから鏡は見慣れているんだ。そのオレに手鏡なんぞを渡してどうするん……だ……。な、なんだと……。


「おおおおおお! なんだー! このオレ好みの美少女はー!!」


 鏡を覗いて驚いた! すっげー驚いた! 鏡の中の美少女はもの凄い驚いた顔をして映っている。こ、この娘なんて可愛いんだろう。驚いてる顔までなんとも可愛らしい。

 顔は小さくて小柄体型。艶のある髪はツインテールにして下げている。ジャージが体の細かい体型を判らなくしているが胸は小さい方だろう。

 『むにむに』

 うん。ジャージの上着の下から手を入れて胸を触って確認してみたが小さめだな。えーっと、手のひらサイズって奴かな? 

 え? 気持ち良いか? まだダイレクトに鷲掴みにしただけだからね。先っちょをコロコロ転がしたわけじゃないから判らないよ。

 今度は下半身に手を突っ込む。うん。『ナニ』も無くなっているし、指でなぞると割れ目もしっかりとあるようだ。

 よし! 正真正銘の女になっているみたいで良かったわー。これで『ナニ』が付いていたり、割れ目がなかったりしたら生命体として終わってるからな。

 女なら女でいいさ。変な生き物になるくらいならよっぽどいい。あとでじっくりと調べてみるけど今はこんなんでいいや。







「すげーだろう。その美少女はお前なんだぜ」


 なんとも自分の事の様に誇らしげに言う目の前の俺。こいつも興奮してるけど、実はオレも大分興奮しているんだ。だって女体化だぜ。女体化。

 これが興奮せずにいられるかって言うんだ!






「いや、本当にすげーよ。このオレが美少女だぜ! おおお、今にして思えばこの声も女子の声だ!!」


 この世界に居ない人間になったら戸籍とか免許書とか保険とか……色々と不安要素がある。でもオレとしては女体化の奇跡に比べればどうって事の無い案件だと思うんだ。

 これで不細工ちゃんだったらこの部屋から一歩も出る事は無いんだろうけど、オレの好みで悪いけど一〇〇点満点の美少女だもんなー。

 こりゃ、ドヤ顔でこの容姿を見せびらかせながら街を練り歩きに行かなくては!




 それにしてもすげーなー。なんだか無性に調べたくなってきたぞ。この娘の体を全部!


「お、おい。もうひとりの俺。ちょっとコンビ二へ買い物にでも行って来いよ」


「え? 腹でも減ったか? って言うか、さっき腹痛になったばっかりだろ」


「違うよ。一人でちょっといじったりして遊ぶから、どっか行っててくれって言ってるんだよ! 言わせんな恥ずかしい」


「ば、ばか。そんな羨ましい事を一人でやってしまうのかよ! いいなー。いいなー。」


 もう一人の俺がとても羨ましそうに見てる。

 うーむ。でもなー、こいつが見てる前でオナるのは流石にもったいないし、しかも襲ってくれと言ってるみたいなもんだしなー。

 だってオレが逆の立場なら間違いなく縛って身動きが取れな……い様に!!


 考え事から醒めるように目の前を見る。するとそこには鼻息を『ふーふー』してるもう一人の俺が!!


「待て。話せば判る。お前はオレなんだから何をしたいのか判るつもりだ! だからまずは冷静になれ。冷静に」




 緊急回避! ふう、流石は俺。理性が働いたな。男の方の俺も考え方はオレと一緒だ。縛って色々やりたいのは判るけど女を泣かせる事も又しないってのも判る。


 要するにだ。女が服を半脱ぎ状態で泣き叫びながら犯られて、最後はレイプ目で横たわるシチュエーションが好きなのであって、これが本物だと逆に萎えるんだよな。

 だから今までは誰にも言った事は無いんだけど、彼女が出来たらその子に迫真の演技をしてもらいたいんだよ。女優顔負けな嫌がる演技をやって欲しいんだ。それがオレと俺の理想なんだと思う……。

 それゆえ最終的にこいつの興奮も止められたんだ。やはり本当に犯ってしまう事に対しては理性が急ブレーキを掛けたんじゃないかな。

 



「す、すまん。ついこの現実離れしたこの状況に興奮してしまった。怖い思いをさせたのなら謝る。ごめん」


「いや、オレのほうこそ性的に煽る様な事を言った。ごめん」


 まあねー。どっちもオレなんだから考えてる事が判るから謝罪も受け入れやすい。だって、本気で謝ってるのが判るもんね。




 何分か無言な時間が過ぎる。テレビの深夜系美少女アニメはすでに終わっている。いやー、気まずい時間の流れ方だなー。


「な、なあ、明日さ。そのー、えーっと、お、女物の服でも買いに行くか?」


 もう一人の俺が恥ずかしそうな顔でそんな事を言ってきた。

 そうだなー、せっかく美少女になったのにジャージで過ごすのはちょっとなー。やっぱこの体に合う可愛い服を着させてあげたい。多分もう一人の俺もそう思ってるんだろう。思考回路は一緒だからな。

 ってことはミニスカ系かー。このツインテ娘にはお子様系とまでは行かないけど幼い感じな服が似合うんだろうな。


「よし判った。明日は洋服を買いに行くか! そうだ。オレも男物を着てるわけにもいかんからパンツとブラも買わないとな」


「おう。下着は白一択だからな。それ以外は却下だ」


「あたりまえだろ。白い下着こそ至高なんだからな!」


 ふたり同時に腕を組んでうんうんと頷く。やっぱ白だよな!




「よ、よし寝るか! あー、でもベッドは一つしかないなー。せ、せっかく男女になったんだし一緒に寝てみるか?」


「お前……すっごくわざとらしい!」


 ああ、そうかー。女になってはじめて判った。これじゃあ、モテるはずが無い。

 なんて言うのかな男としての魅力を感じさせないんだよな。悪い奴じゃないしとても面白い奴でもある。飲み会とかあれば仲間と一緒にバカをやるのは一つや二つじゃない。オレだって元はそれくらいは賑やかなんだ。

 でも、異性からはモテた事が無かった……。

 それが皮肉にも今更ながら何故なのかが判ってしまった。


「そ、そうか?」


「ああ、そうだ。だが安心しろ」


 だけどこいつはよく頑張っている。

 それはオレが保障する。だってオレだもの。オレ自身だもの。


 よーし、今決めたぞ! こんなに頑張っているこいつは絶対にオレが幸せにしてやる!

 そして骨はオレが拾ってやろうじゃないか。


 だから……。


「一緒に寝てやる!」


「え!? 本当に!」


「だから一緒に寝てやるって言ってるんだよ。同じオレじゃないか。ささっ、早く寝ようぜ」


「判った。寝ようぜ」


 ベッドに二人で並んで横になる。

 うーむ。さっきから意識しないようにしてたんだけど、やっぱり気になるな。何が気になるかって? んー、元の自分に関わる事だしあんまり言いたくはないんだけどさ、じつはこの部屋ってすっげー男臭いんだよ!!

 元の自分に罪は無い。判ってる。どうせ女子なんて来ないんだし、使用済みのティッシュも丸めてそのままゴミ箱に捨ててあるしね。

 でも、まあ、ある程度時間が経つと慣れましたけどー。


 しかしさ、今この布団に一緒に入った瞬間ちょっと耐えられない感覚に襲われたんだよ。

 男臭さが尋常じゃない。でも、もう一人の俺に悪くて流石に言えないよなー。うう、仕方ない耐えよう。


「っはぁー」


「どうした? 具合でも悪いのか?」


「いやいや、なんでもないよ。ただ息を止めた後に口で息をしただけだから」

 

「そうか?」


「うん。じゃあお休みもう一人の俺」


「ああ、お休みもう一人のオレ」


 お休みなんて言ってはみたけど、多分もう一人の俺は寝られないだろうな。元は自分とは言え美少女が隣で寝てるんだもんな。寝られるわけが無い。

 でもオレは自分のことも知っているから襲ってこない事も判るんだ。こいつはそんな事をする奴じゃない。

 ただ、予想としてはどさくさにまぎれたフリをしてオッパイくらいは掴みにはくるだろうけど。


 電気を消して目を閉じる。そしてしばらくすると胸に大きな手が恐る恐るやってきた。そしてそのまま片乳を触り始める。

 うーん。流石はもうひとりの俺だ。思った通りに胸に来るとは……。仕方ない、ちょっとくらいは触らせてやるか。どうだオレのオッパイは? 女の子のオッパイを触れて気分最高だろう? 


 あーあ、嬉しくもないが予想が一〇〇%的中したなー。

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