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第9章-第86話 そくいのぎしき

お読み頂きましてありがとうございます。


いよいよ、クライマックス。今日中に完結4話連続更新しますのでお楽しみに。

 セイヤから書類の署名を取り付けたときから用意していたのだろう。王宮の広間には、整然と貴族達が並んでいた。これから、即位の儀式だ。俺は、全ての物を取り上げられた。唯一残っているのは、左手に嵌められた指輪だけで、紐パンさえも取り上げられた。


 但し、銃器類はセキュリティの掛かった袋に入れ、そのまま渡した。自害するには、舌を噛み切るしかないのか。


 手には、即位の儀式で使う長剣だけだ。俺の力では、ほんの少し持ち上げるのが精一杯でとても武器にはなりそうにない。


 ジャン公爵が、例の書類の抱え上げ、正当な後継者であることを宣言した。


 そして、真っ先に俺の前で頭を垂れて、忠誠を誓う口上を述べる。その隣には、なぜか俺の母の姿も居た。


「決心してくれたのですね。母は信じていました。」


 俺は目の前のひとを張り倒したい衝動を懸命にこらえ、視線を逸らす。


 くそ、このまま俺は即位してしまうのか。なにか、他に手はないのか?エトランジュ様もアキエも不安そうに多くの兵士に囲まれて、この場に来ている。


 即位の儀式の長剣を少し持ち上げた時だった。握る部分の布が古くなっていたのか、するすると解けだした。即座に儀式が中断され、握る部分の布が新しいものに取り替えられる。


 しかしそれが問題ではない。解け掛かった布の下に見えたものは、魔道具で使われる文字のようなものだった。大家さんのところで見ていたから間違いない。きっと、MPを投入することで何らかの作用を及ぼすことができるのだ。


 しばらくの後、即位の儀式が再開した。改めて、ジャン公爵が頭を垂れ、忠誠を誓う口上を述べる。その間、俺はこの長剣に向かってMPを投入し続けた。これしか手はない。するとどうだ。あんなに重かった長剣が軽くなっていくではないか。


 更に投入していく、少し倦怠感が出だした時だった。突然、長剣が眩くひかりだし、目の前のジャン公爵の首に吸い込まれるように、剣が勝手に動き出しジャン将軍の首をはねた。


「父上。お、お前なんてことを。」


 隣に居た。俺の母が踊りかかってくる。その母の首も勝手に剣が動き、はねてしまった。まさか、こんな結果になるとは、しかし、呆然とする暇はない。即座に『移動』で、エトランジュ様とアキエの傍まで移動した。


「アキエ、目を瞑ってろよ。」


 即座に意図を汲み取ったエトランジュ様がアキエに目隠しをする。


 長剣を振り回す。長剣は伸縮自在に、周りの人間で俺に敵対している人間の首だけをはねていく。もちろん、ヤン団長もだ。


「さあ、あとは誰が俺に敵対するんだ。今なら間に合う、爵位を返上して投降しろ!それとも、この剣に忠誠を誓ってみるか?」


 あたりは、静まり返った。そして、つぎつぎと武装解除していく人々・・・・。


「俺がする!」


 そこに現れたのは、セイヤだった。


 俺の前に頭を垂れ、忠誠の口上を述べる。


 ぐっ、これでは、俺が即位する流れでは、ないか。なんのつもりなんだ。セイヤ。


 そうか・・・。これで、この国の内戦が完全に終結できるのか、前国王が忠誠を誓えば・・・。そういえば、以前セイヤは、年金生活にあこがれるとかなんとか言っていたな。俺に国王を押し付けるつもりか?


 しかし、この場でセイヤの忠誠を受け取らないと、俺側とセイヤ側で国土を2分することになりかねない。くそっ、セイヤにやられたかも・・・。


「許す!」


 まあ、そうは問屋が卸さないんだけどな。


 俺は、そのまま元の位置に戻ると、例の書類を取り出し、俺の空間魔法に仕舞いこんだペンの反対側で署名した部分を擦りつける。そして、書類を抱え上げ宣言した。


「この即位は、無効だ。まだ書類に俺は、署名していない。」


 即座にセイヤが駆け寄ってくる。書類と俺の顔を見比べる。


 ふふんだ。これで、セイヤが王様のままだ。


「よってこの儀式の中止を宣言する。よろしいかな。」


・・・・・・・


 取り上げられた全ての荷物を取り戻した。ハイレアのMPポーションを飲み、さつきを連れてエルフの里まで飛んだ。


「すまん。こいつと日本で所帯を持ちたい。」


 俺は、一連の話をマイヤーとマイヤーの兄に報告したあと、マイヤーの住居でそう伝えた。


「もう、手を出してしまったのですか。全く手が早いんだから。」


「待ってくださいよ。私、聞いてないですよ。そんなこと。」


「もしかして、嫌なのか?」


「嫌じゃないですが、プロポーズが先でしょ。こういう時。」


「ああ、すまん。どうしても、先にマイヤーに許しを貰いたかったんだよ。」


「まあいいですけど、父が喜びます。」


「君は喜んでくれないのか?」


「もちろん、とってもうれしいです。」


「わかりました。許します。許しますから、目の前でいちゃいちゃしないで。さっさと出て行って!」


 俺は、槌屋さん達料理人とうなぎ工場に戻ってきている。狼人族の料理人たちは、ヤン団長の実家で囚われていた。今回の裏切りは伯爵家は知らなかったものの、その件で罪に問われることになった。


 但し、ジロエ前団長は教会でモモエさんの他、教会の人々を護っていたそうで、相殺してジロエ前団長が伯爵家を継ぐことになるそうだ。


 うなぎはとりあえず、既に日本に持ち込んだものだけで当分はなんとかなるだろう。


・・・・・・・


 右軍の諜報部の調査で判明していたことだが、ジャン公爵は、『幻影』の魔法が使えたらしい。そして、その能力は娘である母にも引き継がれたらしい。


 それから、この世界で会った母は、実は双子の妹ということが判明している。ほんの少しの違和感の正体はこれだったのだ。食べ物の好みなど双子であろうと違うものだ。


 フライドポテトもうなぎも日本の食べ物だったから、全く食べたことが無かったものに違いない。好きという態度と嫌いという態度の使い分けは、自然に自分の好みで答えていたのだろう。それが違和感に繋がったのだろう。


 エトランジュ様たちと同じように双子で生まれた姉妹が、姉は公爵家で大切に育てられ、皇太子妃となり。妹は、生まれた直後に捨て子同然に公爵家が所有していた農村のある農家に里子に出されたそうだ。


 母が日本に渡った後、農村で苦労していた妹を引き取ったそうだ。そして母が異世界に戻った話は本当でその一切合財を聞いたらしい。


 その後の母は、いつまでも毎日同じ時間に召喚の間に入り込み、日本に戻れる日を夢見ていたという。その内、精神を病むようになって死んでしまったらしい。


 そして妹のほうは、いつか俺が帰ってきたときに篭絡する手ごまとして、密かにジャン公爵家に軟禁状態だったそうだ。


 俺は、その妹のほうを殺したというわけだ。それを聞いて、ほっとしたかというとそんなことはない。祖父と母と同じ顔をした人間を殺したことが、頭に張り付いてはなれない。マイヤーやさつきが居なければ、母のようにノイローゼになってしまうかもしれない。


・・・・・・・


 どうやら、帰りも自力で帰る必要があるらしい。セイヤが囚われていたため、宝玉にMPが堪っていないためだ。また、あの1億円のドリンク剤の世話になることが決定した。


 やはり、セイヤは偉大だ。行き来するだけで、合計2億円ものお金がかかるとは、思わなかった。来週もセイヤが召喚してくれることの約束を取り付け、自力で帰ることにした。


いつも評価して頂きましてありがとうございます。


あと3話で第1節は完結します。次は13時更新です。


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【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
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