番外編 『翻』
お読み頂きましてありがとうございます。
2回目の異世界から戻ってきてしばらく経過後の話になります。
すみません、またギャンブルです。今度は競馬で儲かった話です。
内容は本編に関係ないので読み飛ばして頂いても問題ありません。
俺は、今、息抜きを兼ねて、競馬場に居る。貴金属買取ショップで、指輪を『鑑』にしつづけたら、なぜか。その人の身体の調子まで解るようになったのだ。
これを、使わない手はないと思い、競馬場にやってきた。競馬新聞と馬の身体の調子とをにらめっこで、馬券を購入していたのだが、3レースで1万づつ3つ賭けてに1回、30万円当たった。
まあ、パチンコよりは、効率はよさそうだが、もうすこし当たるようにならないと、大きな賭けはできそうにない。
そこで、ある程度、『鑑』で情報を絞ったあと、聞いてみることにした。
誰にって?そう、馬本人にだ。指輪を『翻』に変える。
・・・・・・・・
「調子はどう?」
「ひひーん。」
(絶好調だぜ!)
あれ、おかしいな。『鑑』でみると、体調は悪いようなんだが。
「ひひひーひーん。ひん。」
(そいつの言うことは信用しないほうがいいわよ。嘘吐きだから。)
後ろから、声が掛かったので、そちらのほうに行く。栗毛のメスのようだ。声の感じからすると冷静なたちなようだ。
「お姉さんの予想だと、今日のレースどうなるかな?」
もうめんどくさいので、直接聞いてしまおう。
「ひひひーひーん。ひん。ひひひーひーん。ひーんひひひーん。」
(そうね、第4レースは、1番にいるあいつの調子がいいみたい。4番の子もいいし、ジョッキーとの相性はとてもいいみたい。あとの子は、ダメね。とくに、本命と呼ばれている子は、沢山走らされて疲れているわ。途中で走るのをやめてしまうかも。)
「お姉さんは走らないのか?」
「ひひひーひーん。ひん。ひーひーん。ひーん。」
(私はもういいのよ。1回大きなレースで勝ったからね。将来は安泰みたいよ。それに、他の子にチャンスをあげたいじゃない。)
「へえ、優しいんだね。」
俺が鼻面を撫でてあげると嬉しそうだ。
「ひひひーひーん。ひひひひん。ひーひーん。ひーひひん。」
(第5レースは、もう話し合ってきまっているのよ。3番の子がまだ1回も勝ってないから、もう処分されそうなの。かわいそうでしょ。だから、みんなできめたのよ。)
裏で馬同士で談合か?出来レースといっていいのか?
「ひひひーひーん。ひひーひーひん。」
(第6レースは、賭けないほうがいいと思うよ。みんなやる気で全く予想がつかないのよ。)
こうして、すべてのレース予想を聞いた。どうせ、あぶく銭だし、彼女の予想に賭けてみるのも面白いだろう。
「ひ、ひひーん。ひひーひーひひん。」
(ねえ、もう一度、撫でてくださらない?)
俺が鼻面を撫でてあげると、顔を舐められた。親愛の情らしい。
「すみません。」
あわてて、飼育員がやってくる。
「大丈夫ですよ。」
と言って、さらに馬の鼻面を撫でて、キスをした。
「ひ、ひん。ひーん。」
(まあ、うれしいわ。また来てね。)
「ああ、またくるよ。」
・・・・・・・
結局、彼女の予想は、全勝だった。
賭けたお金がどんどん膨れ上がっていく。
レースごとに払い出されたお金をそのまま投票するので2倍から10倍以上に膨らんでいくのだ。
預金額の桁が増えていく、怖いくらいだ。
特に最終レースは20倍以上の大穴に1億円も投票してしまったがそのレースも当たってしまった。20倍以上の大穴が1億円投票したせいで払い出しが9倍に減ってしまったが構うもんか。
最後には、およそ10億円になった。
ネットから賭けたからいいが、現金で買っていたらと思うと足が震える。