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第9章-第83話 俺が王様?

お読み頂きましてありがとうございます。


「さつき、異世界で何かが起こっているようだ。今日のところは、帰ってくれないか?」


「なにか他に異世界に渡る方法は、ないのですか?」


「うむ。おそらくという方法はあるのだが、危険を伴うかも知れない。さつきを巻き込むわけにはいかないのだ。」


「社長、私をなんだと思っているのですか護衛ですよ。危険なときに付いていかない護衛がありますか。見損なわないでください。」


 まさに怒り心頭。洋一さんの言うとおり、護衛という仕事に情熱を傾けていることが伝わってきた。


「わかった。そう怒るな。そうだフェンシングの防具は持ってきているか?いつも、車に積んであると言っていただろう?」


「はい。ございます。」


「それを持ってきて着ろ。そして、このロープを腰に結わえ付けろ。」


「わかりました。くれぐれも1人で行ったりなさらないでくださいね。」


「ああ、そこは信用しろ。」


「では・・・。」


 まずは、この電源ケーブルを元電源から外して、壁に結わいつける。今頃、異世界のエアコンが止まっているだろうが構うものか。緊急事態だ。このワイヤーロープは、ミスリル鋼で出来ており、ちょっとやそっとでは、切れないはずだ。そして、非常事態の時のために買ってあった登山用の道具を巻きつけた。


「お待たせ致しました。ロープはどこに結び付ければ・・・。」


「ああ、カラビナには、余裕があるからそれに結わえ付け、このワイヤーロープに付けろ。片手はワイヤロープ、もう片手は俺の腕に捕まれ。」


「はい。なんでしたら、私が先頭のほうがいいのですが・・・。」


 俺と彼女の筋肉量を見れば、俺が彼女を支えるよりも、彼女に支えてもらうほうがより適切かもしれない。


「わかった。お願いする。」


「では、そのクライミング装備を貸してください。靴はそのままで・・・。そして、私の背中と社長のお腹をあわせて、ロープで括りつけてしまいましょう。」


「では、いくぞ!」


 声は威勢がいいが格好はさつきの背中にへばりついているという情けない格好だが、致し方あるまい。ワイヤーロープが壁に消えている部分に向かって空間魔法を30回ほど唱えるとぽっかりと壁に穴が空いた。


「その穴に入りこんでくれ!」


「はい!」


 彼女は、俺を軽々と持ち上げ、ワイヤーロープをするすると何の躊躇もなく穴に入っていった。きっと、向こうの警察組織で訓練されているのだろう。


 俺は、ライトで先を照らすと入ったところから約5メートル先まで穴が続いていた。あとは、奥までたどり着くごとに、空間魔法を唱え続け、合計150回唱えたところで、召喚の間にたどり着いた。


 よかった。念のために用意したクライミングの道具が役に立つ。召喚の間の床からおよそ10メートル上空にぽっかりと穴が空いた状態だったのである。カラビナを通したまま、慎重に慎重に降りていく。


 そして、足音もさせず降り立った。すべての道具を魔法の袋に仕舞い込み、1本の武器を取り出した。


「これは、フェンシングのエペに似たレイピアという武器だ。エペとは、違い先は尖っているので、それで心臓を突き刺せば即死も可能だ。よく考えて使ってくれ。オリハルコンという合金を異世界から日本に持ち込み、日本の技術力でより硬質にしたものだ。おそらく、この世界の鎧なら簡単に貫けるはずだ。」


「そういえば、このユニフォームも同じでしたよね。」


「ああ、そこらの鎧よりは、強いと思うが過信するなよ。」


「はい。」


「俺には、魔法もこのライフルもある。そして見えないだろうが、バリアのような魔法もあるから、自分の命を最優先にしてくれ。」


「わかりました。」


 螺旋階段を降りようと下を覗き込むと階下には、見たこともない1人の兵士の姿があった。右軍でも、近衛師団でも無いということは、左軍かな。俺の祖父が将軍をしているらしいあの左軍かな。そういえば、祖父を祖父とは知らぬときにセイヤから王宮で紹介された際に見た制服に似ている気がする。


 召喚の間から後宮の庭を覗くと同じ制服を着た将校らしき人物があちこちに居た。騒ぎを起すと不味いかもしれない。まずは、うなぎ工場のモモエさんのところへ行ってみよう。さつきを連れて『移動』を唱え、うなぎ工場の屋根へ飛んだ。


 移動直後、咄嗟にしゃがみ込む。よし、周りには、ほとんど兵隊はいないようだ。裏手に回り込み慎重に人を探していく。あ、槌屋さんだ。


 槌屋さんのほか、料理人数名が、ある一角で縛られていた。人族ばかりで狼は居ない。すばやく近づき、猿轡をはずす。


「社長。大変です、クーデターです。陛下の行方は不明、今は左軍が王都を占領しているようです。」


 やはりそうなのか。最悪の想像が当たっていたようだ。首謀者が祖父だとすると狙いは明白だ。俺を王に仕立て上げ、傀儡政権でも打ち立てるつもりなのだろう。


「クーデターに同調しているのは、左軍だけか?」


「さあ、そこまでは・・・。」


 まあ、そうだろうな。槌屋さんは部外者だ。そこまで期待しては、いけない。これでも、いろいろ聞きかじって情報を集めてくれたに違いない。


「モモエさんは?」


「モモエがちょうど、近衛師団の食堂に行ったころに発生しました。3日前のことです。」


 まずは、ここの人たちを避難させる必要があるな。順当に考えて、マイヤーのところだろうな。もしかすると詳しい情報も入っているかもしれん。俺はそう考えて、その場に居る人間を連れて、エルフの里に飛んだ。


 さすがにこの人数を運ぶのは、かなりのMPを消費するのか、酷い倦怠感に襲われる。


「トム、大丈夫?」


 さつきの敬称がいつのまにか変わっている。


「ああ、大丈夫だ。」


 魔法の袋からレアポーションを取り出して飲んだ。少し一息つくと、皆を連れてマイヤーのところへ向かった。


「トム無事だったのね。」


「ああ、なにやら状況がよく飲み込めないが、とりあえず、この人たちを預かってくれないか?」


「わかりました。状況はね。左軍が王都を掌握、王宮は例の塔にエトランジュ様、アキエちゃん、それから侍女が数名篭城しています。」


 そうかあの塔は、避暑に同行した人物以外はドアを開けられないようにしてあるのだった。塔はV字型に作ったから、側面も上れないし、マイヤーのように空を飛べたとしても、何処からも入れない。とりあえず、エトランジュ様とアキエのことは、心配しなくてもよさそうだ。


「セイヤは?」


「陛下は、どうやら囚われているようです。」


「殺されてはいないのだな。」


「ええ、そのような情報は、ありません。」


「どこに囚われているか、解かるか?」


「おそらく、ジャン公爵邸に囚われているものと思われます。」


「クーデターを引き起こしたのは、左軍だけか?」


「いえ、公爵に味方する貴族が居ります。一部ですが近衛師団に所属している貴族も居るようです。」


「ジロエ前団長とヤン団長は、どっちだ?」


「どちらも陛下側です。おそらく、近衛師団は塔の周りに陣を構えているものと思われます。」


「そうか。あそこに橋を作ったせいで、防御はしやすいのかもしれんな。」


「トムは、暫くは姿を現さないほうがよろしいかと。」


「なぜだ?」


「おそらく、陛下は、トムを召喚するのを拒否し続けているのだと思います。トムさえ、この世界に召喚できなければ、クーデターは未遂に終ります。公爵では、人民のだれも付いてこないでしょう。」


「でも、そのままだと無理にアキエを即位させるのじゃないかな?」


「もちろん、その可能性も有り得ます。」


「ではやはり、俺が乗り込んでぶつかるしかないじゃないか?そもそも、どういった訳でクーデターになったんだ?」


「月曜日の朝にトムの公爵就任のニュースが流れ、今のジャン公爵家は、伯爵家になることになりました。その後、とんでもない噂がバラまかれました。セイヤは種なしでエトランジュ様の子供の父親は別に居ると・・・。」


「そうか、俺が出入りしていたせいだな。それに、侍女の中にもどっちが本当かよく判らなくなっている人間も居たみたいだから、後宮の内情に詳しい人間は、信用してしまうかもしれないな。」


「右軍の諜報部は、即座に噂の出所を調べたそうですが、その調査結果が出ないまま、左軍に王都を制圧されたそうです。」


「そうか、右軍と左軍がぶつかった場合、どっちが勝つのか?」


「それは・・・・残念ながら、左軍でしょうね。右軍は諜報活動が得意な軍ですので、重騎士の将校が多い左軍と正面からぶつかった場合、全滅するまで戦っても損害を与えられても半分くらいかと。」


「では、近衛師団はどうだ?」


「そうですね。ヤン団長他数名は、左軍の将校相手に互角に戦えると思います。」


「ヤン団長は、ロングソード使いだったよな。他の人間はどうだ?」


「サーベル使いが2名にロングソード使いが2名です。ほかにレイピア使いが3名ほど居るのですが、左軍は重装備の将校が多いため、レイピアでは、歯が立ちません。」


 よし、ロングソードもサーベルもレイピアもそれぞれ何本かオリハルコン鋼製を用意したから、なんとかなるだろう。


「魔法使いはどうだ?」


「魔法使いは殆ど戦力にならないため、左軍には居りません。1番多い火の魔法使いの攻撃に耐性がある指輪が出回っています。水、風、雷の耐性の指輪は、各国の宝物庫にいざというときのために、ある程度用意しているはずですから。」


「左軍も、将校は指輪をはめていると思ったほうがいいのか?」


「そうですね。火と水の耐性の指輪は、しているでしょうね。その他の指輪は、なかなか出回らないので付けているとしても、ジャン将軍くらいでしょうか。」


いよいよクライマックスに突入しました。

最後までお付き合いお願いしますね。

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