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第8章-第79話 ぼさつ

お読み頂きましてありがとうございます。

「そうですか?覚悟していましたが、流石にくるものがありますね。正直に話して頂いてありがとう、あなた。実は以前ゴン氏から話は、聞いていました。」


「そうなのか?」


「ええ、正式に結婚しているのかと聞かれましたわ。まだ正式には結婚していないけど、双方の国で結婚したとしても重婚にはならないと答えておきましたわ。」


「なぜ、そんなことを?」


「私をこんなに幸せにしてくれた貴方は、幸せにならなくてはいけないの。本来、私がチバラギ国でも日本でも幸せにするつもりでしたけど、早くも2年間リタイヤです。貴方を一人ぼっちにさせてしまいたくないのです。それには、多くの時間を過ごす日本で、愛してくれる人が必要ですわ。」


「すまない。」


「いやですわ。こんなに幸せな時を過ごしているというのに謝らないで。さつきさんと言ったかしら。」


「はい。」


「この人、意外と寂しがりやですのよ。いつも、傍に居てあげて。そして、助けてあげてね。」


 子供を身篭るということは、こんなに変わるものなんだ。マイヤーが、あのマイヤーがこんな菩薩のようになるとは・・・。ファイアボールを撃とうとしたマイヤーを俺がこの火傷跡を見せて止めるシーンばかりを思い描いていた。


「マイヤー、どうしたんだい。マイヤーじゃないみたいだぞ。」


「ヤン。だからガキだと言うんだよ。見栄を張って我慢しているだけだよ。だけど、トムを幸せにするのを手伝ってくれるって言うんだから、任せるしかないだろ。」


 少し安心した。いつものマイヤーだ。ついでに他に3人から求婚されていることも告げた。


「うがぁー。」


 あ、マイヤーが壊れた。


「・・・・・はあはあはあ、トム?手が早すぎでしょう。いくらなんでも・・・。幸子と紀子は解かりますがあとは誰ですか?」


「千代子さん・・・は、良く考えたら違った。あそこは、お父さんに陰陽師を継げとか言われただけだった。」


「もう、脅かさないでください・・・。それでも求婚されていることには、代わりは無いじゃないですか。それで?」


「それでとは?」


「それでその中の誰が好きなんですか?」


「マイヤーが一番に決っているじゃないか。」


「そういうことじゃ無くて!」


 それから、ヤンとさつきさんを追い出したマイヤーは、トコトンまで俺から情報を引き出し、自分でも自覚がなかった好意が3人に対してあることが解かった。


・・・・・・・


 一度、後宮まで戻り、後宮内の教会でマイヤーの代わりに侍女がさつきさんに対して、アルメリア神の祝福を授けてくれた。それによると剣士と出た。


「もしかするとさつきさんは、剣道が得意でしたか?」


「いいえ、剣に近いものというと、フェンシングは学生のころからやってました。大会に出ても1回戦敗退の常連でしたけど。」


 ああ、それで逆三角形の体型をしているのだな。


「へぇ。今でもやっているの?」


「ええ丁度、来週の金曜日に東京都のシニアの大会がありますので、見にいらっしゃいません?」


「ああ、それでなんだな。金曜日がお休みとか言っていたのは。是非とも見せてもらうよ。」


「はい。社長の見ている前でこんどこそ、初戦突破を目指します。」


・・・・・・・


「そうだ。今日も狩りに行こうかヤン団長。取り分は1割でいいよね。」


「はい!もちろんです。」


 そのまま、うなぎ工場に飛び一番下っ端の狼を連れて、ギルドの情報に沿って魔獣を狩って歩く。最終的に殺す役目は、さつきさん8割に狼2割くらいだ。


「社長、そのライフルはいったい?」


「しっ、内緒だよ。」


 流石に富士の樹海の話は、したくない。

 結局その日は、暗くなるまで魔獣を狩り続けた結果、100頭を超えた。途中、ギルドに寄り、今日の成果を換金した。ヤン団長1割、狼の料理人2割、俺6割、さつきさん1割で分けた。


 さらにギルドで現在のレベルを鑑定してもらったところ、狼の料理人がレベル4にさつきさんもレベル4に上がっていた。これで金曜日の試合1回戦敗退なんていうことは、無いだろう。


 うなぎ工場も閉鎖している時間だったので、ギルドで狼の料理人と別れ、後宮に戻った。後宮の夕食の席に付くと、アキエが待っていた。


「パパ、その人だあれ?」


「パパの友達だよ。」


「ふーん。」


 そうか、マイヤーもエトランジュ様もアキエの傍に居られなくなったから、寂しいのかもしれないな。


「ごめんね。傍に居られなくて、明日は一緒に町に出かけようね。セイヤかまわないよね。」


「ああ、もちろんだとも。ヤンのほか、何人か侍女も連れていけ。」


「わーい。お出かけ、お出かけだー。」


 よっぽど、うれしかったらしい。


・・・・・・・


 翌日は、久しぶりに馬車で移動だ。馬車には、俺とアキエとさつきさんに侍女。ヤン団長は、団員を幾人か連れ、馬で護衛してくれている。


 まず、最初は教会だ。教会では、孤児院の子供達が出迎えてくれた。アキエが同世代の子達がたくさん居る。アキエは始めこそ人見知りしていたが30分も触れ合う内にいつのまにか楽しそう駆け回っている。


 昼近くになると、牛丼のスキスキやメッツバーガー、ミスドーナッツが開店準備を始めた。孤児院の子供たちも情操教育の一種なのだろう。お手伝いを始めた。アキエも楽しそうに手伝っているが、ほとんど邪魔をしているかのようにしか見えないがそれもご愛嬌だ。


「アキエ、お昼ご飯は、何がいい?」


「カレーが食べたい。スキスキのカレー大好き。」


「さつきさんは、何がいいかい?」


「なんか異世界じゃないみたいですよね。こんなに見慣れたファーストフードが並んでいると・・・。あ、うな丼もあるのですね。これが、父が推薦しているやつですね。じゃあ、私は、うな丼で。」


「俺は、久しぶりにハンバーガーにしよう。」


「私貰ってきます。」


「いや、みんなで一緒に行こうね。アキエ。」


「うん、アキエも頼むの!」


「あ、うな丼、売り切れだわ。くやしいな。」


「限定数かぎりだからな。予備のこっちを食べてくれるかな。」


 そう言って、腐らない袋からうな丼を取り出した。これは、昨日工場に行ったときに預かった分だ。実は、飲み物以外はすべてこの袋に入っているのだがアキエにとっては、注文することも楽しいだろう。


 店頭で注文させて代金を払い品物を受け取る。たったこれだけのことだが、アキエ自身がすることが楽しいらしい。よっぽど、店員よりニコニコとしている。


 すべての商品を持って、取ってあった場所に戻り、食事を始める。


「アキエ大丈夫か。辛いだろう?」


「うん、辛いけど頑張る。」


 流石に牛丼のスキスキに子供用のカレーは置いていない。アキエは、ジュースとカレーを交互に食べているようだったが、半分食べたところで音を上げた。


「パパ、ポテトちょうだい?」


 こっちが良いという前に、これは私のものよという顔をして、パクついている。


「じゃあ、パパがカレーもらうよ。ハンバーガーも半分食べるか?」


 そんなことだろうと思って、半分残してある。


「うん、ちょうだい。」


 ふと視線を感じ、顔を上げるとさつきさんが微笑んでいた。


「いいね。アキエちゃん、やさしいパパが居て。」


「おねえちゃんは、パパ居ないの?」


「うーん。居るのは居るんだけど傍に居てくれたことは無かったな。」


「じゃあ、明日からパパを貸してあげる。今日はダメだからね。」


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【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
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[一言] キーワードにハーレムなかったので安心して読んでたのに結局ハーレム物だったのか。残念。ここまで面白かったですありがとう。アキエちゃんいるから油断してた。
[一言] キーワードにハーレムなかったので安心して読んでたのに結局ハーレム物だったのか。残念。ここまで面白かったですありがとう。
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