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第8章-第77話 せめとまもり

お読み頂きましてありがとうございます。

「なぜだ!」


 Ziphone側の提案が8割以上の賛成多数で可決された後、牛丼のスキスキの元社長が真っ赤な顔をして詰め寄ってきた。


「なぜだ・・ぁん。そんなことは、こっちが聞きたいね。俺は慈善家じゃねぇんだ。投資家さ。結果的に株価が上がってもらわなきゃ、困るんですよ。おたくさんたち、何も案出さなかったじゃねぇか。今のまま、今のままって、実際に株価が下がっている状況で何をおっしゃる。俺はてっきり、株価を押し上げる画期的な策でもあって言っているんだと思ったんですよ。」


「今までそうして成功してきたんだ。今回も成功する。成功するに決っている。」


「ははん。過去の成功体験に縛られ、何も新しいこと出来ないってやつか。参ったね。こんな奴を信用して100億円も渡したとは、俺もヤキが回ったもんだ。ま、ゴン氏に任せておけば利息くらいはなんとかなるだろう。」


「き、貴様ぁ!」


 俺は、隣の紀子をかばい、踊りかかってきた奴が紐パンのエリアにぶつかると同時に手をそえて、ガードしたように装った。


「やめてくれる?これ以上株価を下げるつもり?全く。ま、約束通り、ゴン氏の経営には口を出さないでおいてやるよ。向こうから依頼されないかぎりな。」


・・・・・・・


「なあ、紀子。結局、昨日言っていたのは、なんだったんだ?なにか、経営陣に言うつもりだったのか?」


「いえどうすれば、もっとおバカな女に見えるかとずっと衣装とか、行動とかを考えていたんです。」


 おバカなことをそんな真剣な目で訴えられても・・・。


「でも今日の朝、気付いたんですよ。CEOがいらっしゃるってことを。」


 ・・・いまごろか?


「仲間内ならば恥ずかしくなかったのですが。そんな姿をCEOに見られると思ったとたん恥ずかしくなって・・・どうせ、今日は、セリフも無いんだし。地味な格好のほうがいいかと思って。」


「俺は始めから今日は、地味な格好で来いっていったよな。」


「だってトムのスケベそうな顔をもう一度、見たかったんだもの。嫌いじゃないんでしょ。あの格好。まあ、今日のトムは格好良かった。それで、このあとは、どうなるんでした?」


「ああ、辛うじてZiphoneが筆頭株主となったから、CEOから2人共経営陣入りを依頼、受諾という流れだな。紀子が副社長で俺が専務、マスコミから厳しい突き上げがあるだろうが問答集を作るし、問答集に無いものは俺の助言どおりに答えておけ。」


「そうね。これからが本番なのね。気を引き締めていくわ。」


「1人で突っ走ることだけは止めてくれよ。俺やチームの皆が必ずフォローする。」


「わかったわ。ごめんね。私があんなこと言い出さなきゃ100億円も使わなかったよね。いったいどうやってお返しすればいいか。」


「そんなことは、気にするな。お前がこの会社の従業員を気遣うように、俺も俺の会社の従業員である紀子を気遣う義務がある。まあ、どうしても返したいのなら、この会社を救うことだけを考えろ。大丈夫だCEOは、完全子会社化するつもりのようだからTOBで十分に見返りを受けられる。」


「でもそれでは、私自身は何もお返しできない。ね、お願いよ。私の身体では利息代にもならないかもしれないけど・・・。」


「止めてくれ。俺が好きだというならまだしも金で縛りつけるような人間ではないつもりだ。」


 据え膳というやつかもしれないが従業員だというだけでも足枷なのに、さらに金が絡んでいるとてもじゃないが、俺の倫理観に反して、そんなことはできそうにない。


「好きよとっても。もう本当にトムは、鈍感なんだから。解かったわ。全て終わったあとで正式申し込むわ。首を洗って待ってなさい。」


「正式に?」


「そうよ。昨日の幸子じゃないけど、皆の前で申し込むわよ。」


 どうやら、本気らしい。一度彼女も異世界に連れて行く必要があるのかもしれないな。


・・・・・・・


 牛丼のスキスキの新経営陣は、会長にZiphoneのCOO、社長に末席の取締役から大抜擢、副社長に元カリスマ経営者の娘という新聞記事が紙面を踊った。株価が上がっていることからみると、わりと好感を持たれたようだ。


 ブラック企業のレッテルからの解放が第一目標だが、同時に攻撃にも転じないとジリ貧になるのは、目に見えている。その方法は、複数の業態を持つ試みだ。現在の牛丼を主軸に、店ごとにバラエティーに富んだメニューを選択する。


 1番目は牛丼しか置かない店舗だ。牛丼のみとはいえ、国産、アメリカ産、中国産、オーストラリア産の牛肉を使った牛丼をそれぞれの牛肉の原価を鑑みた価格である期間提供する。

 最終的には、このうち売り上げの多かった2種類を主軸とする牛丼を提供する予定だ。


 2番目は牛丼とカレーなど定番メニューの今の業態の最も近い店舗。


 3番目は牛丼とカレーと定番メニューの代わりに店独自のメニュー置く店舗にする。最終的には、8種類の定番メニューと2種類の特別メニューを用意して、その中から2種類を店長に選択させるのだ。


 店長が生姜焼きが好きという理由で選んでもいいし、流行のメニューを選んでもいい。これにより、店舗同士の差別化と内部競争を生み、主に立地に左右されてしまう現在の店舗経営を根本的に変えられると考えている。


 もちろん、すべての食材はセントラルキッチンにて提供されるがFC契約をしている店舗に対しては、FC先に食材の提供を任せるなどの処置もでき、セントラルキッチンの提供のメニュー量によりロイヤリティ率が変動する制度にするのだ。


 極端なことを言えば、牛丼とカレーのみをセントラルキッチンから提供された場合は6%がロイヤリティ。3番目の業態で特別メニューを2種類共選んだ場合は15%がロイヤリティと言う具合である。通常のロイヤリティは12%であることを考えると無理の無い設定ではないかと思われる。


 但し、セントラルキッチンが提供する全く同一メニューを用意することは、禁止されている。例えば、自社では異世界から持ち込んだ弟子たちが作ったうなぎを使用したうな丼を提供するつもりだが、既にセントラルキッチンの提供メニューにうな丼が存在するため、うな丼のご飯をうなぎ弁当のようにタレで炊いたご飯で提供するという具合である。


 逆にFCで優秀なメニューが出てくればFC先同意の元、メニューを買い上げた上で売り上げ量にあわせたロイヤリティの減額という方法で報いるのだ。


・・・・・・・


 来週は、うなぎ料理店のプレオープン1週前でなにかと忙しい上、牛丼のスキスキの就任記者会見と物凄く忙しいだろう。


 こんどこそ、異世界生活をのんびり過ごせることを祈りつつ、その時を待つ。指輪が光始めたときにそれは起こった。


いったいなにが・・・。


久しぶりだな。この引き・・・(笑)

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