第8章-第76話 おんみょうじ
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彼女らは、Ziphone本社から俺の社用車に乗ってきたので、そのまま彼女の実家の神社にお邪魔した。
「ここがうちの神社です。ここに上空写真が載っていますが珍しいでしょう?敷地が5角形しているのですよ。」
千代子が説明をしてくれる。写真には五角形の土地にそれぞれ線が引かれており、星の形になっている。五芒星ということは・・・。
「もしかして、あの有名な陰陽師に関係があるのか?」
凄い有名人だ。実在の人物だが、架空の人物のようにいろいろな小説や漫画に登場している。
「ええあの方が、創建した神社だと言われています。」
千代子は重々しく語ってくれる。
「余計にバチが当たりそうで怖いな。」
「あ、来ました。あれが父です。」
前方の石造りの鳥居から、神主さんが現れた。
「千代子。これでいいかね。」
「あ、お父さん、こちらが今担当させて頂いている。山田副社長です。」
「千代子がお世話になっております。父の零人です。千代子。この方かな?術が使えるというのは?」
「そうです。副社長、この場で使って見せてもらえませんか?」
俺は、彼からお札を受け取り、彼を中心とした3メートル四方に対してお札に魔法を掛ける。その後、のりでちょいちょいと2枚の1万円札に貼り合わせ彼に渡し、3メートル四方の外に出た。
「それを持って。境内を動き回ってもらえませんか?」
今回掛けた魔法は、ある場所から出られなくするだけである。店舗では、境界を越えようとすると混乱の状態付与がされる魔法になっており、もっとたちが悪い。
彼は、3メートル四方の中をぐるぐるするだけで出られないようだ。
「失礼。」
彼の下に近寄りお札を引き裂き、そのまま、2枚の1万円札を持ち、彼を連れ外に出た。
「凄い。千代子、彼は独身かね。」
「そうですよね。副社長。」
「ああ、バツいちだが、今は独身だ。」
「千代子。この方と結婚して、明字家陰陽術を復興しろ。」
「お父さん。冗談は止して副社長に私が似合うわけないでしょ。」
「千代子。この方が好きじゃないのか?」
「・・・好き。わからないわ、そんなこと考えたこともなかった。」
「零人さん、どうでしょう。千代子さんに力を見せて頂きましたが、十分な素質を備えているようです。いずれその腕を磨く機会を与えれば、明字家陰陽術の復興の礎になってくれると思いますが、どうでしょうか?」
「腕を磨けるところがあるということかね。」
「詳しいことは申し上げられませんが、そういうことです。」
・・・・・・・
結局、お札は問題なく作ってもらえることになった。
「この巫女装束は、どうするんですか?」
「それは、店舗で厄払いの真似事をしてみようと思ってね。今までに強盗に入られたことがある店舗で、千代子に巫女さんの格好をしてもらって、例の紙飛行機を飛ばしてもらえば、マスコミの度肝を抜くことができるかなって・・・。」
「それだけ?」
「いや、強盗に入られた後の処理も明字さんだけでなくチームのだれかに行ってもらい。密かにお札を破ってもらう必要がある。その際にも着てもらえば、目を眩ますことができるかなと。」
「そろそろ聞かせてもらってもいいかしら、トムって何者?」
「そうだな。君以外のリーダーは薄々気付いているんだろうけど、端的に言うと魔法使いかな。」
「魔法使い?」
「ああ、そうは言ってもたいしたことはできないよ。うーん、大道芸レベルかな。例えば、こんなふうな水芸みたいなものとかね。」
そう言って、『ウォータ』を唱え、真夏の太陽に照り付けられたアスファルトに水を撒いた。
「千代子もそうなの?」
「ああおそらく、陰陽師は魔法使いだったのだろうね。彼女をみているとそんな気がするね。」
「私もできるようになる?」
「幸子は、魔法使いになりたいのか?」
「ええ、できれば人を守れるような魔法を使えるといいなぁ。」
「まあ、元やくざや元旦那をぶっ飛ばしに行かないと約束できるなら、千代子といっしょに連れていってやるよ。」
「ふふ、やっぱり、トムには解かっちゃうのね。」
「やめてくれ!フォローする身にもなってくれよ。」
「うん、ごめんね。」
「幸子そこまで!いつまでいちゃついているか?チームの皆が居ることも忘れて、雰囲気を作るんじゃない!」
「いいじゃない信子!トムと喋っていると癒されるのよ。別に自分のものにしようなんて・・・。」
「考えていないって言うの?」
「ちょっとだけよ。正妻の座なんて狙ってないわ。愛人枠の端っこにでも・・・ねぇ。」
彼女が色っぽい流し目をこちらに送ってきた。目を逸らすのも変だし、かと言って正面から受け止められるはずもない。そのまま、一度目を閉じる。
「ダメか。しばらくはトムの近くに居られるんだから、長期戦の構えで行くことにするわ。」
どうやら、諦めてくれる気は無いらしい。まあ、別に悪い気はしないけど、俺のものにしたとたん、チバラギ国が絡むことになるしな。それこそ、本当に愛人枠しか残っていないことに納得して貰わなくてはいけないのだ。
「紀子、黙ってていいの?」
「信子、私は明日のことで頭がいっぱいなのよ。ほっといてちょうだい!」
「へいへい。」
「信子、何が面白いのか知らないが、あまり煽ってくれるな。」
「ええー。だってぇ。こんな娯楽そう転がってはいないもの。」
「「「信子!」」」
「えへへへ。そんなにいうなら、私も参戦しちゃおうかな。そのほうが面白いし。」
「「「信子!」」」
最近、チームの皆に遊ばれている気がする。
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