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第8章-第73話 俺は道化者

お読み頂きましてありがとうございます。

「トム悪い!」


 そういって、セイヤは、階段下に降りていった。初めてのパターンだな。1人召喚の間に取り残された俺は、階段で下に降りていく。


 リビングを覗いても、セイヤの寝室を覗いても誰も居なかった。仕方なく俺は、アキエの部屋にいた侍女を捕まえてセイヤの居る場所を聞きだした。


「陛下は、王妃様の寝室です。」


 一瞬、俺の視線から避けるように顔を逸らされた気がしたが、気のせいだろう。流石にエトランジュ様の寝室は覗けなかったので、ここに来たのだが・・・。


「トム殿、申し訳ありません。」


 エトランジュ様の寝室に入るといきなり、床に付いているらしいエトランジュ様から声が掛かった。何を謝っているのか見当が付かない俺は、セイヤの方へ顔を向けるがフイっと顔を逸らされてしまった。何か言いたくないことがあるらしい。


 そこで、ついさっきまでエトランジュ様を診ていたらしいお医者様の方へ向かって問いかけた。


「王妃様のお加減はいかがなんでしょう?」


「王妃様は、ご懐妊あそばせました。」


 ゴ・カイニン・・ってなんだっけ。ゴカイニン?ゴカイニン?ああ、子供が出来たことじゃないか。へっ・・・なぜ?まだ、エトランジュ様とは、1回もしてないよな。なのにご懐妊・・・。思わず、辺りを見渡した。俺は、セイヤの顔を見つけ、再び顔を逸らされ、そして納得した。


「それは、おめでとうございます。陛下、ようやく待望の第一子、真にお喜び申し上げます。」


 俺は、その場に跪き、口上を述べた。即席で考えたにしては、よく出来たと思う。


・・・・・・・


 お医者様が帰られた後で、リビングに行き、セイヤから説明を受けた。


「では、異世界と日本の行き来はこれまで通りで。俺の身分の公開は、エトランジュ様の懐妊の発表後、公爵拝命と同時に行われる。今後は、公爵として、次代の王室になにかがあった場合に対応できるように多くの妻を娶り、王家の血族を増やす手伝いをする。これで、よろしいでしょうか?」


「ああ、それでよい。間違っていないよ。だからそんなに拗ねないでおくれ。」


「別に拗ねていませんが・・・。」


「では、なぜ後ろを向いて喋っているのだ。」


 そう俺は、ソファに腰掛けずに圧し掛かるようにしていた。


「なぜって聞きますか?そうですね。セ・・陛下の顔が見れないだけです。今、貴方の顔を見るとどんな言葉が飛び出すか自分でもわからないので・・・。」


「トムには、わしを罵る権利があるのう。幾らでも言うたらええ。どんな言葉でも受け止める覚悟はできているでのう。」


「とりあえず、ほっといてもらえませんかね。陛下。」


「陛下、陛下と・・・セイヤともう呼んでくれないのか?」


「いえ、他意はありません。多分。もうすぐ、貴方の臣下になるので、慣れるために呼んでいるだけですよ。陛下。」


「う・・・どんな言葉で罵られるより、陛下と呼ばれるほうが堪えるのう。」


「もうバカなこと言ってないで、1人にしてくださいね。セイヤ。」


・・・・・・・


 セイヤにああは言ったがバカみたいに拗ねているのは本当だ。ほとんど・・・道化、いや絶対、道化にしか見えないでは無いか。特に前回、エトランジュ様に癒しを受けて幸せを感じていたなんて、もう悶えるしかないレベルである。


 今、エトランジュ様への思慮を内緒にしておいて心底よかったと思うことはない。唯一、バレているのはマイヤーくらいのものであろう。マイヤーに会って愚痴を言いたいが、さすがに呆れられるのが怖い。もう少し、落ち着いてからにしようと思う。


 まずは、近衛師団の食堂だ。アタッシュケース型の太陽光発電を設置し、小型冷蔵庫を繋げる。モモエさんは、まだうなぎ工場だから、他の料理人に頼み、白と赤ワインとシャンパンを数本買い取り、冷蔵庫に入れておく。


 100Gショップは教会の子供達の独壇場だ。ツトムが住み込む意味もなくなったから、うなぎ工場のほうへ従業員宿舎を建てたほうがいいかもしれない。むしろ、子供たちを独立させるのに邪魔かもしれない。


 教会のファーストフードのコーナーも盛況だ。初めて教会に足を踏み入れたときは、お客の姿が全くなかったのに、今では王宮職員のみならず、近隣の住民や遠くは右軍の兵士まで来るほどの盛況ぶりだ。


 後宮に戻るときに、接触してきたものが居た。1円玉を持った母の使者らしき人物だ。母が会いたがっているという。明日のランチの時間に市場にあるレストランで会うことになった。入ったことはないが、市場に足を運んだ際に見かけた建物の特徴と一致していたので、多分大丈夫だろう。


 後宮に戻り、アキエの様子を見に行く。本当は真っ先にすべきことなのに、あまりのショックに忘れていたのだ。


「エトランジュママの子供も、パパの子供?」


「違うよ。陛下の子供さ。誰だ。そんなこと、言うバカは?」


「侍女のお姉さんたち。」


 ん、これは、不味いのかも。侍女の秘密保持を疑うわけではないが、もし間違った認識を持っているものが居るだけで支障が出る可能性も無いわけではない。セイヤに忠告してしておく必要があるだろうができれば、今は顔をあわせたくはない。


「アキエから間違っているよって、教えてあげてくれるかな。」


「うん。アキエ、教えれるよ。」


 よしこれで、アキエの言動が疑われても事実確認を陛下か上司に行うだろう。


うなぎやスッポンを出した時点で気付かれた方もいますよね。

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