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第7章-第65話 あだな

お読み頂きましてありがとうございます。

 Ziphone本社ビル前にようやく到着した。およその到着時刻を運転手さんが伝えてあったのだろう。出迎えの人が居るようだ。


「副社長、お待ちしておりました。私、秘書室を任されております。菱田と申します。こちらが副社長とSPの方の分で、こちらがそちらのスタッフの分です。」


 これは、セキュリティーカードだ。Ziphone本社ビル内は、各個人毎に入室できるフロアと入室できないフロアが存在する。俺とマイヤーの分は、入れないところは無いが、スタッフの分は情報管理センターや極秘プロジェクト専用フロアなど、入れないところは多い。


 そうは言っても、通常派遣社員は自分の居るフロアと食堂や会議室などパブリックなフロアしか入れないので、彼女たちのセキュリティーカードも結構異例だったりする。社員でも、あるメーカーの商品を扱っていると他のメーカーのフロアに入れないなど、そのセキュリティー方針は厳しいのだ。ほとんど、秘書室の社員並に入室できる範囲が広いと思う。


 俺は2階にある役員専用フロアに通され、専属の秘書とZiphone側のスタッフと顔合わせを行った。それはそうだ、俺とブレインのスタッフだけでは、全く手が足りない。両方とも、俺の手足として動かしたいがさすがに、俺のスタッフの下に有名大卒業後、調査部というエリートコースに所属している彼らを付けると軋轢が生まれかねない。


「よろしく頼むよ。もう調査に掛かっていると思うが、何か提出できる資料はあるか?」


 彼らは、2週間以上前に発足して、事前に各子会社の詳細な調査に取り掛かっていると聞いた。ゴン氏は、いったい何時から俺をこの役に押し付けるつもりだったのか・・・。


「いえ個別の資料はございますが、まだお見せできる資料はございません。」


「そうか。これはうちの親会社に対する調査結果の一部だ。大半は調査会社に任せたが、うちのスタッフも関わっている。この資料とそちらの調査結果を元に、月曜日までに大まかなところでかまわんから纏めてほしい。うちのスタッフと一緒にな。」


「この資料はいったい・・・。」


「ああ、牛丼のスキスキがいろいろと叩かれだしたころから、少しずつな。いざというときに、即座に対応できるようにしておかなくては、うちのような小規模の会社は共倒れになりかねないからな。それから、この資料は極秘だということは解かって貰えたと思う。一度、秘書室で必要枚数分だけコピーして、極秘印を押してから一度俺のところに持ってきてくれ。」


「はい、わかりました。原版とコピーを副社長にお持ちすればいいでしょうか?」


「ああ、指示が細かくて申し訳ない。そのうち慣れると思うから、それまで我慢してくれるか。一度こちらで確認したあとで配布してくれ。資料を纏めたら必ず、回収して俺のところへ戻してくれ。自社の資料なんでね。面倒だろうが、お願いするよ。」


 コピーの資料に、このビルから持ち出せないように、マイヤーに魔法を掛けてもらうつもりだ。コピーのコピーは防げないが、コピー機のカウンターを上司の許可なく持ち出せないことになっているから、大丈夫だろう。


「君が俺の担当秘書なのか?」


「これは失礼しました。はい私、担当の明字と申します。」


「俺のチーム内では、名前呼びをするつもりなんだ。俺のことは、トムと呼んでくれ。君の名前を教えてくれるかな?」


「千代子と申します。」


 あれっ、いきなり、声が小さくなった。照れているのか?そんなことでは秘書は務まらないだろうに。まあ、いいか。


・・・・・・・


 まずは、席に付き各個人PCの使用ルールを教えてもらう。PCはワイヤーで固定されており、持ち出せないようになっているようだ。会議などで使用するPCは、会議室に備え付けのノートPCをサーバー室の仮想OS上に接続して操作するらしい。


 さすがにITの大手企業だ。セキュリティーには、うるさいようだ。部門によっては、スマホや携帯さえも持ち込み禁止の場所がある。そのフロアの入り口付近にスマホや携帯を預けられるロッカーが設置するなど、凄い徹底振りだ。


 ただ、部長クラス以上は例外的に持つことが許されているらしい。それが、今回のごたごたにより、見直されるかもしれないと言う。


 改めて、俺の担当秘書をチームの3人に紹介した。


「俺の担当秘書の千代子さんだ。俺のスケジュールは彼女が全て把握しているから、そのつもりで居てくれ。彼女もチームの一員としたいのだが、問題あるだろうか?」


「彼女の苗字を教えてください。対外的には、苗字呼びが適切でしょ。」


「彼女は、明字さんとおっしゃるそうだ。」


「そう、明字千代子さんね。・・・明字チョコレートさん?」


「ええ、必ず渾名はそれでしたね。」


 ああ、それで声が小さくなっていたのか。


「おい、渾名呼びは許さんぞ。」


「わかっているわよ。私も嫌だもの、演歌歌手じゃないんだからね。」


 ああなるほど。


「トムはいいじゃない?映画俳優でしょ?」


「映画は映画でも外国アニメのほうなんだ。」


 くそ、3人のみならず千代子さんまで、口を押さえて声を殺して笑ってやがる。もちろん、マイヤーはキョトンとしているのが救いだ。


「どうせなら、声を出して笑えばいいだろ!」


「そ、そんな失礼な。」


 十分失礼だ。


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