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第7章-第62話 ていあん

お読み頂きましてありがとうございます。

「さあ、君たちに提案だ。君たちの運命は3つある。1つはある一定以上の問題が発覚して副社長と同じ運命を辿ってもらう。」


 これは問題の大きさや量はゴン氏の胸の内だろうが、副社長との関係にも左右されそうだ。


「もう1つは、問題は発覚するが一定以下なので取りあえずは、社に与えた損害を支払ってもらい終わりとする。」


 これは、選択肢としては同じだな。全くの無罪ならば、こちらを選択するよな。


「あと1つは自ら選んで降格処分を受け、やり直すかだ。さあ、どうする。よく考えて決めたまえ。時間はないぞ。では、1時間後に判断を聞くよ、さあ、退出したまえ。」


 なるほど、これならば何かをやらかしたと身に覚えがあるものを選択させやすい。


「それから、ここに居る山田トムを次期副社長として招聘する。そのつもりで。」


「な・・・。」


 寝耳に水である。


「驚いてもらえたかね。社内のごたごたに巻き込んで申し訳なかった。この通りだ。」


 俺の前に、ゴン氏が、身体を折り曲げて、謝っている。よっぽど、此方のほうが驚きだ。それは、周りに居る取締役達も同様だったようで、思いっきり視線を外された。


「さあ、退出したまえ。」


 取締役達が全て退出して、部屋の中は、俺とマイヤーとゴン氏とゴン氏の秘書達が残った。


「ああ、初めから説明するわい。」


 俺の視線が痛かったのか。ようやく、全ての説明をして頂けるようだ。


「まず、どこからかな。まあ言ってみれば、この会社は俺が復帰する前までは表面上、俺の腰巾着だったあの副社長とこのCOOの大川の2頭体制だったわけだ。」


 秘書の1人かと思っていたが違うようだ。そういえばCOOには紹介して貰っていなかったな。


 へえ、この人が・・・。どちらかと言えば、副社長のほうがハンサムだし、見栄えもする。実際、ゴン氏が表舞台を去ってからは、副社長が新商品のプレゼンをしていた。


 それくらい、表面上は平凡なオッサンだった。


「酷いな。僕の紹介それだけ?改めまして、大川賢次です。COOやらされてます。」


 中身は軽いオッサン?しかし、時折みせる鋭い視線は、この人が只者ではないことを伺わせる。


「山田トムと申します。よろしくお願いします。」


「ねえねえ、ゴンのオッチャンよ。本当に、この人に副社長やらせる気なの?物凄く、風当たりが強いと思うけど、大丈夫かな。」


「まあ、そう言うな。この機会に取締役を減らすつもりだから、大丈夫さ。」


「まあ目立ってくれたほうが、僕はその影でいろいろ画策できて楽しいけどね。」


「それで、全て話して頂けるのですよね。和義さん。」


 あまりにも、話が逸れたので、話を戻した。


 ゴン氏が言うには例の月曜日に来た弁護士は、本社秘書室のある秘書が発注したものだということだった。本来、あれほど多くの案件が1つの弁護士事務所に集中することは無いそうで、ルールを破って副社長が秘書の名義で発注していたのだそうである。


 副社長は、その知己でもある弁護士事務所からリベートを貰っていたそうだ。これが基本的な金の流れで同様の手口で、副社長とその一派が最終的には会社の利益の一部を着服していたらしい。


「僕もやっていたけどね。というか、このオッチャンにやらされてたの。副社長を煽り、尻尾を出させるためにね。結局、あの副社長は1件につき最大数十万程度のリベートしか貰っていなかったからさ。発覚しなかったってわけ。わかった?」


「はい。そうすると、あの場で俺が和義さんに相談しなかったら、バレなかったわけですね。そして俺が副社長を押し付けられることも無かったと・・・。」


「嫌か?お主を見ていると理想主義すぎて、いろいろとイライラさせられる。だが将来、その理想主義をカナグリ捨てなければいけないときが、必ずくる。そのときのために、この会社で学んでほしいのじゃよ。」


 それは俺も考えていた。だからこそ、経常利益は従業員の昇給に使っているが、投資活動で出た特別利益は資本準備金として蓄えるか、更なる投資に使い、資産を増やしていくつもりだった。


 だが確かに今の俺ではイザという時、悪い患部を切り取ったりできないだろう。そのままズルズルと悪い部分を抱え込みつつ、仕舞いには会社を潰してしまい兼ねない。


「まずは、腕試しと思えばいい。失敗しても大川が後片付けをしてくれるしな。」


「嫌なところばかり、押し付けるんだから。まあ、そういうことは好きだからいいけど。」


 好きなんだ。本当は少しの患部だけでよかったのが、大きく切り取ることを躊躇わずやってくれるらしい。まあ、できるだけ少しの患部を切り取ることに専念するか・・・。


 俺はいつの間にかやる気になっていた。始めは、こんな大きな会社を一部とはいえ舵取りしなくては、いけないなんて・・・と、しり込みしたい気持ちで一杯だったんだが。


「やってくれるな。」


「条件を付けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「ああ、かまわんよ。」


「自分の会社から、ブレインを呼び寄せますのでその人件費と、金・土・日曜日は自社での仕事に専念させてください。」


「ああ、それは当然だな。そのブレインは派遣契約ということでいいか?」


「はい。けっこうです。」


「では、よろしくな。それから、すまんがこの通りのごたごただ。例の国への訪問は、延期にしてくれんか。申し訳ない。」


 今度は、最敬礼で謝られた。これでは、許さないわけにはいかない。すぐさまセイヤにスカイペで知らせた。よかった。これから、王宮で打ち合わせをするつもりだったようだ。


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