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第6章-第58話 ひしょ

お読み頂きましてありがとうございます。

「すいません。あんなに大見得を切ったのに・・・。」


「まだ、大丈夫だ。プレオープンまでにはまだ2週間もある。最悪、お二方の焼いたものだけでも、さらに数週間は持つだろう。それまでに1人ないし2人ある程度のところまで出来るようになれば、お二方の焼き上げるスピードが格段に上がるだろう?」


「それならば、なんとか・・・。」


「レベル4の料理人が1人居たので、今、焼き工程を教えこんでいるところさ。」


「レベル3は居たのかい?」


「ええ、1人だけね。あとは、レベル2が4人よ。」


「じゃ、今分散している。うなぎの裁き工程のうなぎを殺す段階だけをそのレベル3の料理人に集中させよう。そうすれば、直にレベル4に上がると思うから、あとは料理人を養殖しよう。」


「え、うなぎ、じゃなくて、料理人を?そんなことができるのですか?」


「ああ、モモエさんもMAXレベルまで一気に取得できただろ。それと同じように魔獣狩りをさせることにするよ。おそらく、30頭も狩れば最大レベルまでアップできるだろう。もしかすると、レベル4の料理人さんの腕を軽く越えるかもしれないね。」


「なんで、コソコソ喋っているんですか?ああ、槌屋さん・・・知ってますよ。喋りましたもの。どんな手段を使おうが実力は実力だと、認めてくれましたよ。ほんとにあの人なんですかね。えらい変わり様なんですけど・・・。」


「それは、きっと、どんな実力があっても、廃業に追い込まれた自分がふがいないと思ったのじゃないかな。」


「そうですね。別れたときに借金してましたけど、へいちゃらでしたもの。あのころは随分儲かっていたのにね。」


・・・・・・・


「とにかく、じゃあ、行こうか。」


「槌屋さん、よろしくお願いね。ツトムもしっかり働くんだよ!」


「ああ、わかってら。陛下によろしく伝えておいてくれや。」


 今日、明日と王室の避暑地に行くんだそうである。既に、近衛師団の一部と右軍の一個中隊と後宮に侍女達が移動し用意して待っているそうだ。


 モモエさんを連れて行くのは、避暑地では、地元で数々の食べ物があるそうなんだけど、どれもこれも変わったものばかりで、侍女達では調理方法がわからなくて、いつも通りの食生活になってしまうのが不満なんだとか。


 王宮専属の筆頭魔術師であるマイヤーの出番だ。後宮から『移動』で一瞬にして、侍女数名を含め、俺、アキエ、セイヤ、エトランジュ様、そして、モモエさんまで一気に転送された。


 さすがに筆頭魔術師のことだけはある。この人数を一気にここまで転送できるとは。そう、彼女に伝えると、少し顔を赤らめたあと、こう言った。


「距離はここまでが精一杯です。帰りは、よろしくお願いしますね。」


 今回は転送先に軍が控えているから、良かったが『移動』をするときは、転送直後に襲われた場合、魔術師が動けないから、滅多にしないそうである。今回は、俺たちが2日間しか居れないこともあって、『移動』を使ったらしい。


 帰りは俺が『移動』を担うことで、マイヤーの手が空くのでより安全なんだということらしい。


「ああ、任せとけ。」


・・・・・・・


 モモエさんは、早速、地元民が食べている食材と実際に出来上がった料理を試食しに行った。何度も言うようだが、MAXレベルの料理人である彼女は、料理を試食するだけで、調理手順がわかるという、便利な能力でもって、今日、明日の王族の食卓を担うのである。


「社長、食材にすっぽんがあるみたいなのですが、お出ししても大丈夫でしょうか?」


「後で聞いておくよ。他にはなにが、あるのかな?」


 なんやかんや言いながらも、食べることには目がないたちである。自然とモモエさんとの会話に熱が入る。


「陛下たちにとって珍しいもので、そばとか甘い大根とか、ちちたけとか、川魚、自然薯、栗。」


「へえ、このあたりだと、そばがきかな。甘い大根ってなに?」


「摩り下ろして飲むと甘いんですよ。ほとんど、果物と大差ないくらい、甘かったです。」


「ちちたけって、白い汁が出るやつだろ。テレビでみたことがあるよ。へえ、この辺りで取れるんだ。」


「川魚は、赤腹という魚が取れるそうです。これは純粋に塩焼きですね。自然薯はおろすだけだし、栗は栗ご飯ですね。」


「アキエの好物だ。」


「そうですね。しかし、地元の方々から数々の地元料理と食材を頂いたので、それを再現しなくてはいけないので大変。」


 モモエさんは大変と言いながら、ニコニコ顔だ。よっぽど、料理を作るのが楽しいらしい。


「よかった!」


「なにが、よかったのですか?」


「いやだって、モモエさんに結構大変な役目を押し付けた上に、知らなかったとは言え、元旦那まで連れてきてしまったから、もう嫌になったかなと心配だったのさ。」


「うーん、そうですね。あの人とは、工場で顔を合わせるだけだし、結構、今まで見たことが無かったような表情を見たり、あの人が優しくて新婚時代を思い出したりとそんなに嫌でもないですよ。毎日カバヤキを焼くのは大変だけど、やりがいがある仕事だし。それに・・・。」


「それに?」


「それに・・・・・・、食堂で皆に笑顔で、美味しかったって言ってもらえるのが、こんなに嬉しいなんて思いもしなかったですよ。」


 モモエさんは、昼間カバヤキを焼いて、夕方から食堂で働いたり、後宮に食事を作りに行ったりしているそうだ。余りにも大変そうだから、セイヤも食堂のほうを休むように言ったみたいなんだけど、笑顔で断られたそうだ。


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