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第2章-第12話 むだ

お読み頂きましてありがとうございます。

「トモヒロくんも無理だと思うだろ。」


 この年齢でトランスジェンダーの真似とかどうなんだ。誰も観たくないだろうそんな映像。


「いえ、いや、あの、その。」


「トモヒロくんもハッキリしないなあ。遠慮せずにこんな爺には無理だって言ってくれていいんだよ。」


 爺と思われるのは嫌なんだけどな。我ながら矛盾している。


「トランスジェンダーは年齢関係ないですし、言ってしまえば容姿も関係ないです。意識的に性を超越出来るか否かなんです。」


 それは理解しているつもりだ。トモヒロくんみたいに可愛く化けられようが骨格うんぬんどころか化粧もせずすね毛も剃らず可愛らしい女性の服を着て徘徊する男性もトランスジェンダーなのである。


「ああ、そうだな。しかし、差別するつもりは無いが自己満足とMVに出演してもよいレベルは違うだろ。」


 指輪の『偽』を使わない場合、あまり認めたくは無いが多分に徘徊する女装男性にしか見えないと思う。少なくとも男の娘には見えない。


「うーん。ハッキリ言ってメイクの出来次第ですね。とにかく作って見ましょう。・・・わりとお肌の状態も良いみたいです。もしかして薦めたスキンケアを続けています?」


 トモヒロくんと資本を出し合い化粧品の開発会社を設立したのだが政治家になって急速に進む老化に抵抗する手段を相談したのだ。


 世の中の国会議員は当選前どれだけ若々しくても、当選後急速に顔の老化が進む人間と変化しない人間が居るのが解った気がする。特に派閥の長は顕著で党首となると最悪で人相が変わるほど老化が進む。それほどストレスが尋常では無いのだ。


 変化しない人間こそが生まれついての政治家という奴なのだろう。


「あ・・・ああ。」


 以前、その開発会社で試作した化粧水に当時未認可だったコモンのHPポーションを混ぜ込んだところ、ニキビの痘痕が治ると評判を得た。もちろん、市販品には試作品と比べ1万倍に薄めたものしか入っていないのだが今でも売れているらしい。


 今度、製薬会社ブランドで発売予定なのがこの試作品と同等品で化粧品業界でデパートブランドと呼ばれるクラスよりもさらに高価なプチ整形レベルのブランドを目指すつもりで当分通販のみの取り扱いなのだが、既に口コミで引き合いが来ている状況だ。


 世の中女性に取って『美しさ』というには、どれだけ高額であっても払う価値のあるものであろう。いや男性もか。そういえば何処で聞きつけたのか鷹山首相から強請られたな。


 しかも化粧品となれば、それが一時的な効き目であっても問題ないらしい。今回開発した化粧水も痘痕が治るのは表面上だけのことでターンオーバーで皮膚が入れ替わると真皮の痘痕が出てきてしまう欠陥商品なのだが全く問題無いらしい。それが業界では普通だというから驚きだ。

 

 そんな化粧水と共に製薬会社でしか扱えない皮膚浸透力を持ったクリームにコモンのMPポーションを混ぜ込むと真皮届くようになるため、美容液成分を混ぜ込んだ商品も同時発売する予定である。


 業界では各種美容液成分を少量ずつ混ぜ込んだオールインワンといわれる商品が主流なのだが、それでは各成分が薄まり効果が期待できないため、1種類の美容液成分のみを混ぜ込んだクリームを美容液成分ごとに発売する。


 美容への意識の低い女性の場合、各種成分が少量ずつ配合されているオールインワンタイプを使用するらしい。しかし意識の高い女性は美容液を原液で使用し、自分に合った成分を探り当てる努力までしているというから凄いものである。

 

 その中でもヒアルロン酸を混ぜ込んだ商品が俺の肌に合っているらしく、4年間の政治家生活以前の肌の状態に戻りつつある。


「プルプルじゃないですか。もしかして今度フィールド化粧品を立ち上げたのは・・・。」


 洗顔を終えた俺の肌をトモヒロくんが触りながら言う。俺の肌がプルプルならば、トモヒロくんの肌は赤ちゃんの肌のようである。どれだけ高価な製品でスキンケアを頑張っても、ああはなれないに違いない。


「ああそうだ。良く知っているな。」


 研究開発も製薬会社の1部門に任せていたというのに何処からか情報が洩れているらしい。


「洋一さんからお聞きしました。アタシが1枚噛んでいると誤解されていたようです。」


 フィールド製薬には返り咲いていないが蓉芙グループの指揮をお願いしているので実質トップと言っても過言じゃない。そこから情報が洩れていたらしい。田畑洋一さんがトモヒロに誑し込まれているという噂は本当なのか。まあトモヒロくんなら悪用しないと思うが注意しておく必要があるよな。


「噛んで貰おうとも思ったのだがターゲットが富裕層なのでトモヒロくんのイメージに合わないと思ったから遠慮したんだよ。」


 トモヒロくんが化粧品メーカーを経営するキッカケは男性の肌に合う化粧品開発でターゲットはプチプラ化粧品クラスなのだ。会社に隠れて女装を楽しむ男性でも化粧品に掛けられる金額は微々たるものでデパートブランドクラスとなると女装を商売にしている夜の蝶だけだという。


 それのさらに上の価格帯では客層を選んでも仕方が無いと思う。


「このお肌ならグループのメンバーに推薦できます!」


 はあ。無駄な抵抗のつもりで始めたスキンケアが・・・こんな結果を生むなんて・・・俺は女装がしたくてスキンケアを頑張ったんじゃないっ!製品を開発したんじゃない!


 誰だ。こんなところに墓穴を用意した馬鹿は・・・何故なんだぁ!



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