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第2章-第11話 代役

お読み頂きましてありがとうございます。

「渚佑子どうだ?」


 案の定、センターで謎のダンサー扮する那須くんと絡んだ踊りを披露していたトモヒロくんが転んだ。


「捻挫です。治癒しましたが・・・癖になっても困りますのでしばらく安静が必要だと。」


 それまでにも脹脛の痙攣を漢方薬で凌ぐ度に俺が中止を要請していたにも関わらずトモヒロくんが強行した結果、捻挫に至った。


 荻尚子の振り付けが高度過ぎたようだ。本人が踊らずに無理な姿勢を要求するのは如何なものかと思うが振り付け中の彼女は鬼だから誰も突っ込め無かったらしい。那須くんが易々と踊れてしまうのも問題なのかもしれない。


「まだやれますっ。」


 トモヒロくん本人は続行を希望しているがそこかしこでグループのメンバーがリタイアしており、1泊2日の強行軍による合宿は失敗だったようだ。


 これが異世界で鍛えられた冒険者というのであれば渚侑子も遠慮せずにビシバシいくだろうがトモヒロくん相手では甘くなるのも仕方がないのかもしれない。


「ダメだ。来週から始まる公演自体中止にする気か。賛成できないな。ほら大人しく渚佑子に抱えられて行け。」


 渚佑子にお姫様だっこで抱えられていくトモヒロくんとそれを撮影するカメラマンを見送ると合宿の映像監督へ行く。


 那須くんも手を伸ばそうとしていたが渚佑子に睨まれてスゴスゴと引き下がっていた。とりあえず那須くんのトモヒロくん熱は下がったようだ。それだけでもこの企画は成功だと言える。


「どうだ。尺は足りるか?」


「那須先生とトモヒロくんの絡みが足りません。」


 撮影は予定の8割を消化したところで中断した。映像の編集のやり方次第ではなんとかなると踏んでいたのだが首を振られてしまった。


「代役は?」


「2番手、3番手もリタイアしており、あとはレベルが違い過ぎて見劣りすると思います。ある程度の技量が無いと・・・。」


 センター交代を匂わせる演出は無理だろうか。


「プロのベリーダンサーに覆面をさせて使うのはダメだよな。」


「そうですね。純女さんにトランスジェンダーを装って貰うのは骨格的に無理があります。最低限小柄な男性でないと。」


 俺など指輪の『鑑』を使わないとなかなか見分けられないが見る人間が見るとバレてしまうらしい。


「あっ。」


 そのとき何かを思いついたかのように那須くんが声を上げる。荻尚子が時折、仕事を与えている那須くんならダンサーの知り合いも多そうだ。


「なんだ那須くん。何か思いついたのか。踊れそうな人間が知り合いにでもいるのか? ギャラなら十分出せる。この際、純男でも構わないぞ。」


 居場所さえ掴めば『ゲート』と偽り『移動』魔法で連れてこればいい。


「いえその・・・やっぱり無理そうです。」


 やや挙動不審気味に視線を俺のほうへ向けるが何かを諦めたように俯いてしまった。


「なんだ交渉なら俺が直接行うから言ってみろ。トモヒロくんがあれだけ頑張ってきたんだ。なんとかしてやりたい。那須くんもそう思うだろ。」


「ええまあ。」


「なんだ。ハッキリしない奴だな。トモヒロくんが男だと解って嫌いになったのか? ストレートの男をからかうのは男の娘として本能みたいなものだ。あきらめろ。」


 トモヒロくんは那須くんと噂になったとき、一生懸命言い訳していたが男の娘として男性をからかうのを止めるつもりは無いらしい。女性の婚約者と結婚するときにも一騒動ありそうだよな。


「そうなんですよね。今日の絡みでもドキマギしてしまって、ついつい熱が入ってしまいました。」


「そこは『西九条れいな』直伝だから。恨みきれなければ彼女に向けるんだな。それで心当たりの男は誰なんだ。」


 俯いていた那須くんが顔を上げて俺の方へ視線を向ける。まさ・・・か。


「社長です。・・・怒らないで聞いてください。」


 思わず睨んでいたらしい。確かに小柄な男性だ。嫌だが認めざるを得ない。


「わかった。」


「昨日の練習からセンターのトモヒロくんの踊りを全て見ていらっしゃるので、振り付けも大方頭に入っているでしょう?」


 そう言われればそうだが今回の振り付けは難しいと思う。


「だがそんな直ぐに踊れ無いと思うぞ。」


「基本な動きは荻尚子先生なので大して違いはありません。組合せと順序が若干違うだけです。日頃からMotyで先生の振り付けに慣れている社長なら問題は無いはずです。」


 流石は弟子といったところか。確かに彼女の振り付けは身体が慣れるに従って覚えるのも早くなっているのは事実だ。認めたくないけどな。


「そうかもな。」


「それに先程言われましたよね。トモヒロくんの頑張りを無駄にしたくないと。」


「ああ言ったな。でも俺が出張っていくのは拙いだろう。」


 流石にアラフィフのトランスジェンダーアイドルは無理があり過ぎるよな。


「ですから顔を隠すのです。でもトランスジェンダーだと解るように目から上は出してバッチリメイクをするんです。チヒロくんなら年齢も誤魔化せるメイク技術を持っていますよ。50代の社長でも大丈夫です。」


 どんどん外堀が埋められていく。拙いぞ拙いぞ。なんだって那須くんは俺に恨みが・・・あるな。トモヒロくんから引き離したものな。


「まだ49だっ・・・・・・。」


 いや違うだろ俺。思わず口をついて出てしまった。これじゃあ了解したも同然じゃないか。


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