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第1章-第6話 わな

お読み頂きましてありがとうございます。

「トモヒロくん・・・これはどういうことかな?」


 那須くんとトモヒロくんが写真週刊誌にすっぱ抜かれた。2人ともサングラスを掛けているが水族館で身体を寄せ合い、よりにもよって那須くんの腕が男の娘姿のトモヒロくんの腰に回っている。


「申し訳ありません。ここには写って居ませんが他にもグループのトランスジェンダーも複数来ておりまして皆で遊びに来ただけなんです。このシーンは恐らくペンギン水槽の前で薄着だったアタシが震えていたので温めようとしてくれたんだと思います。」


 スラスラと言い訳が出てくる。本当のことは言いたくないらしい。しかも1人称が男の娘モードだ。普段のトモヒロくんと男の娘モードのトモヒロくんでは随分違う。殆ど別人格といっても過言じゃないくらいだ。


 隠しておきたいことを追及するには優しく尋ねるほうが良いよな。


「そうか。前回の公演で那須くんとの絡みが話題になったよな。今回の件があって、最終リハーサルを確認したんだが・・・あれは何かな?」


 本番中顔を隠していたため、那須くん本人とはバレなかったが公演内でトモヒロくんとの濃厚な絡みが話題になった。そのときはトモヒロくんの演技力が素晴らしくて好評を得たのだと思った。


 だが今回の件があったので改めてスタッフに問題が無かったかどうか尋ねてみたところ、最終リハーサルの際に公演本番以上の濃厚に絡みあったと報告があったため、映像を確認したのだ。


「あ・・・あれをご覧になったんですか。あれは・・・。」


「念のために質問するがトモヒロくんはゲイでもバイでもないよな。女性の婚約者も居るストレートのトランスジェンダーじゃなかったのか?」


 共同事業としてアイドルグループを立ち上げるときに婚約者が居ることも聞いていたのだが、最終リハーサルでの那須くんとの絡み方は数年は付き合っている恋人同士のようだったのだ。それもどちらかと言えばトモヒロくんが最初から積極的で徐々に那須くんが引き摺られていった形だ。


「振り付けが納得いかなくて、『西九条れいな』お姉さまに協力して頂いたのです。」


 スターグループのオーナー夫人でもある井筒志保さんこと女優『西九条れいな』は日本を代表する俳優に育っており、特に男女間の愛憎劇では清純な女性から成熟した女性まで、ありとあらゆる顔を持っている。プライベートでも多くの男性を誑かしたとして、好意を寄せられてはスキャンダルとして報じられている。


 トモヒロくんは前から井筒家に良く出入りしており可愛がられている。その彼女が協力すれば朴念仁の那須くんでも堕ちるか。


「なるほど志保さんか。それで那須くんがトモヒロくんを追い掛け回していると・・・。」


 人を使ってアイドルグループ内の聞き込みも行ったところ、案の定ありがちな結果が報告されてきたのだ。だが俺が知っている那須くんは熟女好きのストレートだ。熟女好きは噂の可能性があるがストレートは確かだろう。


 その那須くんが男の娘を追い掛けているなんて、普通考えられない。裏に何かあると嗅ぎ取った俺はさらに深く調査を行い、ひとつの仮説が導きだされたのだ。


「そこまでご存知だったんですか。新太郎さんはアタシのことを男の娘を装う女性と思っているみたいです。」


 トモヒロくんが那須くんを誑かした。それで好きになったというのは別に構わない。元々、トモヒロくんは性別を公表していない。だがトランスジェンダーグループで女性の恰好をしているのだ。イコールDNAは男性だと公表しているのも同然なんだ。その辺りがイマイチ理解できない。


「確かに世の中には女性から男性に性転換後、再び女性に戻る人間も居ると聞く。でもそれはトランスジェンダーなのか?」


 以前、LGBT団体との話し合いで聞いたことなのだが女性の身体に違和感を覚えた女性が男性の身体に性転換し、その身体でも違和感を覚えて元の身体に戻るという例があるらしい。


「広義のトランスジェンダーには入るかと。でも一般的では無いですね。性超越者ですから男性から女性へ。女性から男性へ。というのが一般的ですし、トランスジェンダーグループの公式サイトにもそう記載しています。」


 アイドルだから一定数の好意を寄せられるといったことは仕方がない。だけど俺の知人友人やグループの従業員といった人間にも居るというのが問題だ。


「全く洋一さんといい、那須くんといい。時折、グループ内の従業員にもトモヒロくんを女性と認識している人間が居る始末だから、世間でもかなりの割合でそう信じられているのかもしれんぞ。那須くんのことだから集団デートでは納得しないだろう。これからどうするつもりだい。」


 流石にここまで聞いた話だと俺が那須くんに注意できるのは、相手が未成年であることに対するもので、それ以上は無理だろう。那須くんの誤解を解くのは誑かしたトモヒロくんの責任なのだ。


「どうしましょう?」


 不安そうに逆に聞き返してくるところをみると正しく状況を理解できているようだ。


「那須くんを外すのは本末転倒だしな。そうだ! 次のミュージックビデオのオマケ映像として合宿を企画してみればいい。丁度、白骨温泉の旅館も買収したことだ。皆で温泉に入って性別を確認しあえば良いんじゃないか。俺やMotyもスケジュールが合えば参加してもいいぞ。」





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