第6章-第47話 さいきょうの・・・
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頭以外、全身隈なく弾丸が当たるとようやく、墜落してきた。だが、しぶといことにまだ生きている。よほど痛いのか、地上で暴れまわっている。だが、次第にその力が弱まってきた・・そのとき・・。
「応援に来ましたわ。」
嘘! モモエさんがそう言って、剣を構え、振り下ろす。モモエさんが邪魔でうまく、ライフルの狙いがつけられない。
「モモエさん!こっち、こっち、こっちに来て!」
「硬いですわ。山田さん、いい物をお持ちですね。ちょっと、貸してください。」
モモエさんが、俺からライフルを奪い取るとワイバーンに向け発射した。
おおっ、凄い。それは、眉間に当たり、ワイバーンの息の根を止めた。
「お返ししますわ。」
「すごいですね。ライフルを撃ったことがあるんですか?」
「ええ。田舎では猟銃が必需品ですので・・・よく熊とか出るんですよ。」
俺は急いでワイバーンの死体を片付け、袋に仕舞い込み、その場を後にする。原付スクーターの後部座席はモモエさんだ。マイヤーは近衛師団の団員達が軽症だったことを確認し、『フライ』で付いて来ている。
王宮に帰り着き、近衛師団に報告に行った。
「流石だな。マイヤーご苦労だった。喜べ、陛下より、特別報奨金がでるぞ。」
ヤン団長は外に出ていたのか、ジロエ前団長が迎え入れてくれた。
報告役はもちろんマイヤーだ。俺が倒したと言うよりは、マイヤーが倒したほうがそれらしい。ましてや、モモエさんが倒したなどと、いったいどう説明したらいいのだか・・・。
「前団長、ツトムはどうしました?」
本当は、モモエさんの役をツトムにやらせて、ツトムのレベルアップをさせるつもりだったのだ。きっとワイバーンを殺った経験値なら2レベルくらいはアップしたに違いない。そういう俺も2頭目を倒したときにレベルアップしたようだ。
「ああ、奴なら。ほら、隅のほうで震えとるよ。余程、近くで見たワイバーンが強烈だったのだろうな。余り責めてやるなよ。人間なら、あの反応が普通だ。」
・・・・仕方が無いな。もう、しばらくは100Gショップの店員だな。
「これが獲物だ。これは、どうすればいい?」
「ああ、マイヤーの報奨金に加算される。ワイバーンの皮は防具としては一級品の材料だからな、きっと超高額な値で売れるぞ。そうだマイヤーには優先的に防具として使用する権利があるから、あとで教えてくれ。」
「あら、この身・・・蒲焼にしたら、美味しそうだわ。」
突然、モモエさんがワイバーンに触り、意味不明なことをつぶやいた。
「なんなら、身だけ持っていくか。身は誰も欲しいといわないから、取って置くよ。」
「モモエさん、いったい、どうしたんだ?」
「あのね、ワイバーンの身に触れた途端、頭の中に蒲焼のイメージが湧きあがってきたの。なんだったのでしょう?」
「それって・・・。」
「マイヤー、何か知っているのか?」
「ええ、『料理人』を最大レベルまで上げると食材に触れるだけで料理方法がわかるという伝説が残っています。ですが、いままで最大レベルまで上げたのは伝説の勇者のみと言われております。」
まあ、勇者の中にも料理好きが居ても不思議じゃないが・・・。
「最強の料理人だな。よかったじゃないか。近衛師団の食堂に来れば、最強の料理人の食事が摂れるんだから・・。」
・・・・・・・
「そうか・・・。」
「なんだ褒めてくれないのか?」
俺たちは事の真相をセイヤに伝える。
「トム殿・・・。」
「なんだ。急に落ち着いた口調で、どうした?」
「どうしたも無い!なぜ、ワイバーン討伐に行った?それも単独で!たとえ、その身がワイバーンを討伐できるとしても行くべきではなかった。まず、その身を大事にすることを覚えろ!替えが効かない身であることよく考えたまえ!」
セイヤは、本気で怒っているようだ。思わず俺は首を竦める。
「マイヤーもマイヤーだ。」
「マイヤーは止めてくれたよ。でも俺が押し切った。マイヤーを責めるのはやめてくれ!」
「それでもだ。たとえ殴り倒しても止めるべきだった。マイヤー、今回は偶々、助かったが2度目は無いかもしれん。そこのところ、よく考えて行動しろ!」
「はい!わかりました・・・・。肝に命じます。」
「と、叱るのはここまでにしておこうかのう。トム殿、討伐してくれて助かった。やつら数十年に1回くらい飛来するらしいのだが、ほとんど目立った弱点が無いため、どうしても防戦一方になり毎回数百名単位で犠牲者が出ていたのだ。」
犠牲者が出なかったのは奇跡なのかもしれないな。
「しかしな。たとえ市民に犠牲者が出ようとも討伐隊が編成されるまで待つべきである。いや、御身でどうしても打って出たいと言われるならば、軍の精鋭たちに十分に守りを固めたさせた上でならば許可しよう。もうそろそろ、お主の身分を公開すべきなのかも知れんな。おそらく、公爵家の設立となるだろうが・・・。」
「それは困る。」
それでは市中で自由に商売ができない。
「しかしな・・・。」
セイヤは何を言うつもりなのか?
料理人はレベルアップの必要経験値が魔術師や戦士に比べると低いと思われます。まあ、料理人は魚や兎などを裁くときに経験値を得るのですから、何千と裁いてレベルアップ・・・。
その他の設定資料は同シリーズ「魔竜殺しの異世界まるごとVERYマッチ」で小説形式で置いてありますのでご参考まで・・・。