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番外編 子供

お読み頂きましてありがとうございます。

「子供たちへの対処は生きた心地がしなかった。本当に綱渡り状態だった。」


 鷹山首相が思い出したかのように突然呟く。びっくりした。


「例の休校要請ですか?」


 水際対策が失敗したと言われた頃、突然、時の首相が全国一斉に小中学校へ休校を要請したのだ。それも木曜日発表の翌週スタートというギリギリのタイミングだったから、大変だったらしい。


「違う。いや違わないのか。重篤症状を抑える薬の子供用は臨床試験が始まったばかりだったんだ。しかも被験者が全くおらず、どれだけの量を投与すれば効果が出るのかも未知数だった。」


 当時、俺に子供は居なかったが、アキエが居て重篤症状に陥っていたらと思うとゾっとする。大人には存在する薬が子供には存在しない。元々、多くの大人たちが感染する病気のために開発されたものだから仕方が無い。


 だが親からすれば堪ったものじゃないだろう。そんなことを発表できるはずもない。


「子供たちには重症化した例は無かったと聞きましたが・・・。」


「それは初めから病院内に匿っていたから感染しなかったのであって、一定数はリスクがあったはずだ。」


 当時、重症化しやすいと言われた人々は数パーセントから十数パーセントと言われていた。当然、子供たちも含まれている。一見、健康だが内臓に奇形があり、後々見つかるというのも良く聞く話だ。


「じゃあ休校要請は効果があったわけですね。」


「あったのかもしれん。無かったのかもしれん。子供に障害が見つかれば、そちらに気を取られる。ウイルス検査までやっていたかどうか。」


 それはそうか。病院では可能性があるものとして対処して院内感染を防いでいただろう。


「そんな曖昧なまま実施したんですか?」


 それはいくらなんでも無責任じゃないだろうか。それでもやらないよりはマシか。


「あれは子供を介しての感染の拡散を防止したかったんだよ。なにせ子供は無症状だったり、重篤症状を引き起こしたりはしていなかったからな。」


 なるほど。インフルエンザでも子供が学校で感染して、次に親が感染するルートが多いと聞くからな。そこを断ち切れば一定の効果を生む。


「それで会社へもリモートワークを要請していたんですね。特別有給は中小企業向けですか?」


 後で解ったことだが、経済団体を通じて企業へ要請という名前の指示が出ていたのだ。場当たり的だと批判された有給休暇の取得も体力のある大企業はリモートワークで、現場で働かざるを得ない中小企業への賃金支援という形になったのだ。


 道理で1日最大数千円だったわけだ。大企業で社員を1日休ませた場合、焼け石に水だ。しかし中小企業ならば導入可能な範囲だ。


「そうだ。偶然、体力の少ない子供というだけでは重篤症状に陥らなかったからよかったものの、もし陥っていたらと思うと生きた心地もしなかったんだよ。」


「当時の首相も大臣も国会議員たちも重症化する可能性のある身体でマスクも付けずに良く頑張りましたよね。」


 国会の答弁の席では殆どの国会議員はマスクを着用していなかった。くしゃみや咳をしている人たちにマスク着用を要求する国会議員たちが手本をみせなくてはいけないだろうに。


「ああ多分誰も良く解っていなかったんだろうな。ただマスクでは感染を防げないということだけを知らされていたから。それに・・・。」


 初めは国民誰もがマスクの使い方を解ってなかったからな。咳やくしゃみの症状も無い。重症化するリスクも無い人間が必死にマスクを買い求め、店頭から無くなり、咳やくしゃみが出る人々に行き渡らないという本末転倒の事態に陥っていたんだからな。


「それに?」


「マスクを付けて国会中継されるのが格好悪いと思っていたんじゃないかな。」


「子供ですかっ。」


休校要請は症状が出にくい子供たちという点とインフルエンザの感染拡大という点を繋げれば、おのずと見えてきます。全ての企業に特別有給も導入して頂いて、子供たちの尊い命を奪うようなリスクを減らして欲しいものです。


今のところ子供が重症化したという話は聞きませんが、万が一ウチの子供が感染し重篤症状を引き起こしたらと思うと生きた心地がしません。


そういう病気であったと願うばかりです。

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