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第10章-第100話 ともだち

お読み頂きましてありがとうございます。

「ジョンジュ。君に電話だ。」


 渚佑子と打ち解けたのか楽しそうにお喋りするジョンジュに割り込むのは忍びなかったが用件は緊急を要する事態だ。


 周囲の視線が俺に突き刺さる。大部分が軍服を着ているところを見ると側近たちらしい。


「誰です?」


 俺がスマートフォンを手渡すと訝しげに聞き返してくる。


「アメリカ大統領だ。」


 俺がそう言うと周囲がざわつき出す。以前はあったアメリカ大統領とのホットラインは凍結されており、西側諸国との連絡は南朝鮮政府が必ず介在しているらしい。南朝鮮政府に都合の悪い情報は伝達されないという噂だ。


「北朝鮮国内に張り巡らされた5G機器は南朝鮮製です。南朝鮮政府が傍聴しているという噂ですが大丈夫ですか?」


 5G機器は中国製、南朝鮮製、韓国製、日本製など独自の発展を遂げており、一応端末との互換性は保証されているが、時折ノイズが入る中国製と南朝鮮製は各政府が傍聴できるように部品が組み込まれているらしい。


「大丈夫だ。これは我が社で開発中の衛星電話だ。地球上の技術では解析できないほど強固な暗号化技術が使われている。」


 普通、アメリカ西海岸以東はアメリカの通常回線を経由してしまうが、高層マンションから幸子が滞在しているホワイトハウスの一室へ直接回線を通しているため、誰にも傍受できないはずだ。


 安心したのかジョンジュの顔に笑みが戻る。そしてスマートフォンで話し出すと緊張の色が走り出す。


 既に北朝鮮を標的にしたICBMの準備は止めて貰っているがジョンジュの態度如何では再開するらしい。


     ☆


「終ったか?」


 歓迎式典が行われた会場の別室で行われたホットラインによる電話会談は2時間に渡って行われた。北朝鮮の最高指導者とアメリカ大統領で行われた会談内容は聞かない。俺の要求は大統領に伝えてある。


「はい。ありがとうございました。」


 ジョンジュの持つスマートフォンをそのまま押し返す。


「そのスマートフォンは友好の証として進呈します。有効利用してください。」


 北朝鮮の市場を世界経済に組み込むには多くの課題がある。1番の問題点は諸外国と交渉をするには南朝鮮政府を経由するか中国を経由するしかできない点だ。トップ会談を行おうとすると中立的立場の外国へ出て行くしか手段が無い。それでは余りにも危険だ。


 このスマートフォンがあるのと無いのでは交渉の進み具合が天と地ほど違うだろう。この国のICBMに匹敵するに違い無い。


「ありがとうございます。よろしいのでしょうか?」


「ああ、ICBMの代金だと思ってもらえばいい。それだけの価値はあるだろう?」


 これからホットラインを築こうにも傍受の可能性のある南朝鮮製の機器を使わざるを得ないのでは本末転倒だ。


「ええ。もちろんです。」


 即座に答えが返ってきた。執政者としての資質も高そうだ。


「そういえば渚佑子と何を喋っていたんだ?」


「友だちになって頂きました。」


 物凄く嬉しそうな顔をする。


 ジョンジュは天涯孤独の身の上であり、北朝鮮の最高指導者だ。世界で一番孤独な人間と言っても過言じゃない。韓国の大統領も友人に相談もできない孤独な人間だと言われているかジョンジュほどでは無いだろう。


「そうか。渚佑子。ときどき遊びに来てやれよ。」


 渚佑子も孤独な人間だ。周囲の人々とは表面上上手く付き合っているようだが、真実友人と言えるのは異世界召喚前からの友人たちぐらいじゃなかろうか。


 俺が高層マンションに居る間は彼女の自由時間だ。どんな使い方をして貰っても良いのだが、高層マンションに引き篭もってしまっている。


「は、はい。」


 友人でも作ればいいのだが、流石にそこまで口を出せない。


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