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第10章-第94話 けんぶつ

お読み頂きましてありがとうございます。

「あれは・・・。」


 画面には船首の大砲の入口が開き、何やら光の粒が集まっていく様子が映っていた。


「光魔法の一種だとか言っていたから大気中から何かを取り込んでいるみたいだな。」


「大丈夫なんですか?」


「魔法で大気が汚染されたとか聞いたことが無いから大丈夫だろう。」


 闇魔法には広範囲の植物が枯れるといった作用のものはあるが土壌が汚染されて何も生えなくなってしまうようなものでもない。魔族とて生き物だという証しだ。


 そう言う意味ではこちら側の人間の使う兵器のほうが悪魔の所業としかいえないものが沢山ある。


「そうじゃなくて。敵艦船が一瞬にして蒸発とかだったら人類の敵と見なされてしまいますよ。」


 ジョージが指し示す方向を見ると政府の警告を無視した新聞社のヘリらしきものも来ている。日本政府が舐められているとしか言いようが無い。自分たちだけは攻撃を受けないと思い込んでいるようだ。


「これは戦争なんだぞ。・・・面倒なことだ。・・・幾ら渚佑子が強くても、そんな魔法は無い。安心していいぞ。破壊された敵艦船の乗員は海上自衛隊が助けるさ。日本はおめでたいからな。」


 そんな魔法があれば、魔王を退治するために召喚された彼女の仕事は簡単だったろう。あそこまで性格が歪んだだけのことがあったのだ。けして日本に帰還してからの仕打ちだけでなったわけではあるまい。


「それは捕虜としては当然のことです。」


 アメリカもおめでたいらしい。異世界だったら、禍根を残さぬように殲滅するのが常道だ。


「この船には乗せないからな。まあ助け上げる人員も居ないがな。民間船だ。捕虜条約も関係無いね。」


「だったら私が。」


「操舵を放り出してか。」


「そうは言っても戦争が始まったらアメリカ海軍の籍に自動的に復帰しますから。そういう契約でしたよね。」


 面倒だな。確かに現時点ではアメリカ海軍の将校扱いになっているはずだ。この船の通信手段を使い連携する権限も持っている。


「それでどうやって助け上げるつもりだ?」


「援軍を呼びます。」


「ダメだな。俺が有事認定していない。この船はまだ民間船のままだ。」


 有事の際には幸子のところに設置した空間連結の扉から、高層マンションを経由して、海軍の部隊が乗り込んでくることになっている。


「大統領の自宅を経由する手段が残っています。」


 ジョージがなんでも無いことのようにシレっと言い放つ。


「それをどうして・・・大統領が知恵を授けたというのか?」


 確かに高層マンションとアメリカ大統領の自宅は管理人に言えば、無条件に通すことになっている。


「大統領はあなたが悪く言われるのが嫌なんだそうです。」


「ちっ。アイツもか。俺の名誉よりも優先すべきことなんて沢山あるだろうが。」


「もう1度言います。大統領はあなたが悪く言われるのが嫌なんだそうです。」


「・・・・・・ああ解った解った。好きにしろ。俺は手伝わないからな。渚佑子のコントロールも任せた。」


 やっとれん勝手にしろ。攻撃してきておいて人道的見地も無いと思うんだが。そう言う理屈はこちら側では通用しない。


 他はどうでもいいが渚佑子を宥める役目は俺に回ってくる。確実に回ってくる。最近、こればっかりだ。


「それが一番問題なんじゃ無いですか。あなたから一言くらいあっても。」


 放置したとしても人が死ぬところを見るのを俺が嫌がる所為か。人殺しは滅多にしない。死ぬよりもツラい地獄に送り込んでいる気はするが、かろうじて日本人としての常識の範疇にあると思う。


「まあ刺激しないことだな。幾ら渚佑子でも殲滅なんて面倒なことはしない。捕虜が暴れ出したら知らないがな。」


 最近解ってきた。渚佑子は冷酷でも非情でも無い。合理的なだけだ。面倒を非常に嫌う。偶にヌケていると思う時があるが同じ失敗は2度としない。


 世界の統一を彼女に任せれば簡単だ。全てを破壊して更地にするくらいのことはやってのけるだろう。それが一番合理的だからだ。


「教えてくださいよー。いったい、どんな魔法なんですか?」


 これから、どんなことがおこるか想像も出来ないようだ。


「まあまあ、ほらもうすぐ発射されるみたいだぞ。」


 画面には大砲の先端まで真っ白になった光景が映っていた。更にみるみるうちに膨れ上がっていく。


 こうして見ると面白いよな。物理法則を全く無視している。だからこそ魔法と言うのだろうか。


 その瞬間は数秒くらいだろうか。目標に向かっていく光の先端に渚佑子の姿を見た・・・気がする。曲がりくねり5隻の敵艦船全てを包み込み貫くと霧散した。


「目標接触まであと1分。どうなったんですか?」


 後に残った光景は何もかわらず、目の前に立ちふさがる敵艦船だった。


「何かがぶつかればすぐに壊れるそうだ。」


 敵の防具の耐久性を99パーセント削ぐ。凄まじい魔法。


「接触します。 ! !!!?」


 ジョージが驚くのも無理は無い。まるで豆腐を殴ったかのように敵艦船が崩れていく。


「ジョージ驚いている暇は無いぞ。右舷前方に居る艦船に目標変更しろ。」


「は、はい。」


 タンカーの卓越した機動力とジョージの操舵により全ての敵艦船を破壊したのだった。

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