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第10章-第93話 いちかばちか

お読み頂きましてありがとうございます。

「どうすっかな。このまま逃げるかジョージ。」


「何、やさぐれているんですか。貴方らしくもない。」


「どうしてなんだろうな。どいつもこいつも邪魔ばかりしおって・・・。」


「だから、それ悪役のセリフですって。」


 本庄2等空佐曰わく、俺にはトラブルが付き物で日本海で隼鷹に何かがあるとコネを使い、護衛艦を佐渡基地に寄港させていたそうだ。


「とりあえず、双方を刺激しないようにゆっくりと離れてくれ。」


 護衛艦の艦長は従兄弟だそうだ。いいのかそれで。絶対に後で何か言われるぞ。下手をすれば証人喚問だ。


「本当に逃げるんですか?」


 目の前では早くも魚雷の撃ち合いに発展していた。専守防衛はどうなったんだ。


『早く逃げてください。』


 自衛隊側からの通信もずっと無視している。情勢は南朝鮮の艦艇が魚雷を打つたび、ピンポイントで魚雷を放ち撃ち落としている。殆ど神業だ。


 魚雷がこちらに当たれば膠着状態も打破できるのに、全て撃ち落としている。


「あっ・・・。」「・・・魚雷の1発や2発では沈みません。」


 目の前で海上自衛隊の艦船が魚雷を食らった。護衛艦は気密性が高く、魚雷を食らっても閉鎖空間にするので沈まないことは知っている。


 このタンカーとてそうだ。外宇宙を想定した気密性を確保するために外壁に穴が空けば即座に2重3重に乗員もろとも隔壁が下りるように出来ている。まあ魚雷程度で穴は開かないが。


「俺たちが間に割り込んだら拙いよなあジョージ。」


 ハッキリ言って、護衛艦の盾になるのがこのタンカーにとって一番簡単なんだが。


「ダメです。彼らのプライドをズタズタにするつもりですか!」


 助けに来たタンカーを盾にして助かったなんて、幾らなんでも酷い。


「だよな。」


「何をノンビリしてるんですか。魔法でサッサとやっつけて下さい。」


 はあ。何のために、何百億円もつぎ込みタンカーを用意したんだか。


「でも言い訳が必要なんだよな。『ゲート』を使った言い訳が。」


 空間魔法で縦方向に切り取り、船の底を穴だらけにしてしまえば簡単に沈むが『ゲート』を言い訳に使えない。


「いっそのこと。タンカーで体当たりでもしては如何ですか。」


 そうだな敗色濃厚の日本側としては、一か八かという手段じゃなきゃ、言い訳が大変だ。


「良し。それで行こう! 全速力で相手艦の側面に回り込み体当たりだ。」


「本当に体当たりするんですか?」


 自分で言い出したくせに怖じ気づくなよな。


「大丈夫だ。船首は最も硬いオリハルコン製で尖らしてある。真っ二つだ。」


 しかし、船首はもろに船の骨組みに直結している。オリハルコンだけで作られているわけじゃない。後でオーバーホール決定だな。

 

「何故、そんな攻撃方法があるなら・・・。」


「最終手段なんだ。尖らしてあると言っても刃物じゃない。まともにぶつかれば船に対するダメージが計り知れない。普通は戦いの最終手段として、敵艦の傷付いた場所に突進するつもりだったんだ。」


 あくまで外宇宙での戦闘を想定していたのだ。こんなところで使うとは思わなかった。


「それならば、突進して当たる直前に魔法で敵艦を傷付ければいいじゃないですか。」


「なるほど、魔法で壊した部分は解らなくなりそうだ。良しそれでいこう。操舵は任せたぞ。」


     ☆


 この船の設計者は何を考えたのか船の先端に碇を上げ下ろしする穴がある。人の背の高さほどある穴の後方にある種の加工を加えれば大砲を撃てるように内部は拳銃の銃口を大きくしたような形をしている。


 敗色濃厚の気配を察したかのように装いつつ、海域を離脱する。


 敵艦船の一隻が追ってこようとするが、海上自衛隊の護衛艦が発射した魚雷を避けるとその場に取り残された。威嚇だったようだ。


「社長。どうされたんですか?」


 俺が船首に向かおうとすると渚佑子が転移してきた。次世代機型スマートフォンからリモートコントロールでタンカー備え付けのカメラを操り、様子を見ていたそうだ。


 この次世代機型はグアムにあるスペースコロニー相手に通信を行うため、アメリカの西海岸から中国まで通信可能な衛星電話だ。一部銀河連邦の技術が使われているため、ブラックボックスの部分が多く傍受不可能なのだそうだ。


「良いところに来た。これから、敵艦船に回り込み船をぶつけるから、船首の砲台から敵艦船に攻撃してくれ。」


 隼鷹に与えるダメージを最小限にする方法を説明する。砲台を上手く使えば、魔法を使っていても解らないに違いない。


「それならば、良い魔法があります。但し、唱えるのに時間が掛かるのですが宜しいでしょうか?」


「構わない。任せる。」


 なんといっても火力の強い魔法は彼女の方が詳しい。俺など敵艦船に乗り移って空間魔法で船の外壁を切り取るくらいしかできない。


「あれっ。戻って来られたんですか?」


 船長室に戻るとジョージが出迎えくれる。全てオートコントロールだからって、船員は彼と交代要員の2人で空間連結魔法の扉を使い、高層マンションから出勤してくるようにしたのは拙かったかな。


 船員との触れ合いが出来なくて少し寂しい。行きは各種情報収集のため、六菱造船所のスタッフが居たから寂しく無かったが。もう少し増やすか。


「渚佑子が来たんで任せてきた。大砲から何がしかの火力が発射されるらしい。カメラを船首に向けておいてくれ。」


「あと20分で敵の後方に出ます。」


「こちらに気付いている様子はあるか?」


「いいえ。海上自衛隊の応援が到着してさらに膠着状態になったようで睨み合いになっているようです。」


「なんだ。魚雷の一発でも期待していたのに。」


「それは拙いでしょ。渚佑子さまの集中力を邪魔するつもりですか。」


 まあ怒られるには船長であり、操縦士でもあるジョージだろう。


「そうか。それは拙いな。万が一、魚雷が来たら回避してくれ。この船の全速力なら楽勝だろ。」


「このタンカーの機動力は反則です。船首を持ち上げられるほどの推力ってどういうことですか。」


「ああエンジンは高層マンションの地下にあるからな、動力だけ空間連結魔法でこちら側に来ているんだ。」


「この船が沈めば、高層マンションも水浸しですか?」


「そんな訳あるか。空間連結魔法を維持している魔法陣は紙製だから一瞬で壊れる。」

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