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第5章-第45話 かいしゃ

お読み頂きましてありがとうございます。

 その後の対応は早かった。まず関連会社の取締役が退陣し、生え抜きの社員が取締役になり、フィールド製薬もゴン氏が製薬業界から引き抜いてきた人物が会長と社長を兼任する形で新経営陣が発足した。


 発足後、即座に第3者委員会を立ち上げ、内部調査が始まったことが新経営陣によって発表された。発表の際にゴン氏も登場し、筆頭株主として支持を打ち出し協力を約束したことで、株価は一気にストップ高に転じた。


 洋一さんは閑散としていた自社ビルの2階の一角を占領している。結局、洋一さんだけではなく、洋一さんの個人スタッフ3名もすべて入社してきたので、とりあえず投資部として発足させた。


 洋一さんと個人スタッフ3人共、契約社員だ。投資部が配当で利益を生み出すようになれば、正社員にするつもりだ。彼らほどの人間たちを雇うならば当然正社員とすべきだが、いきなり後から入社した人間が正社員では、やる気をそぐ原因になりかねない。


 あとゴン氏からも、約束通り、内密で経理に明るい人材が数名送られてきたので、経理部として総務を含め統括してもらうことになった。既に相馬さんの知り合いで契約社員でも構わないと言ってくれた人物を増やして3名体制になっており、ようやく部門としての形ができた。


「すまんね。相馬さんを蔑ろにするつもりはない。まあ、育児休業明けとなるだろうが、どこかできちんと正社員にするから待っていてくれないか。」


「いいえ、不満などありません。育児休業中に任せられるスタッフをこんなに増やして頂いて申し訳ありません。これで、安心して育児に専念できますわ。」


・・・・・・・


「森くん、どうだね。経理のほうは・・・。」


「そうですね。ここ数ヶ月の著しい成長を、よくこの人数のスタッフで達成できましたね。ただもう破綻しかけていましたが、私達に任せて頂ければ大丈夫です。社長は絶妙なバランス感覚をお持ちのようで、貴金属ショップ部門で上がった利益をうまく、他のFCへの契約に結びつけて、ぎりぎり黒字が達成できそうです。」


「そうか。来年はどうだ。」


「そうですね。おそらく、投資部門から多額の配当と各FC部門も黒字となりますので、さらに拡大路線に走れるかと思います。」


「そこはバランス良く、予算を立てておいてくれ。あと、俺の個人資産のことなんだが・・・。」


「はい。大半は分離課税ですので、問題ないですが、やはりカジノと馬券と不動産収入は、しっかりと税金を払って頂く必要があります。」


「いくらになった?」


「はい、10億円ほどに・・・。」


 詳細な明細をもらい、確定申告のための資料にする。


「マイヤーは、俺個人の秘書ということで問題ないか?」


「できれば、コスプレは止めて頂きたいのですが・・。」


 これまで、ずっと静かに控えていたマイヤーに声を掛ける。


「マイヤー、その耳を隠せるヘアースタイルでも構わないか?」


 その尖った耳は、割と簡単に髪の毛の中に隠せることは解かっているが、種族としての特徴を隠すことに自尊心が傷つけられないか心配だったのだ。


「ええ、もちろんですわ。でも、逆にずっと不思議でしたわ。こんな姿見ても、皆結構平気なんですもの。」


 まあコスプレもファッションの一部として、世間に認められてきているからな。でも社長秘書がするには問題があるかもしれないな。


「洋一さん。投資部のほうは、どうだ?」


「驚くほど失敗が無いな。できれば、スミス金属のほうも非常勤取締役として取締役会議に参加したほうがいいのじゃないか?」


 まあ危ない橋は、個人資産の方で渡っているからな。


「ああ、そちらも打診があったので受けようと思うが・・・。こちらは洋一さんに行って貰おう。」


「俺でいいのか?」


 これは、そんなに俺を信用していいのかということだろう。


「ああ、別に問題ないだろう。それとも好奇の目に晒されるのが嫌なのか?」


 非常勤取締役の候補になると前歴などが株主に通知されてしまうため、解るひとには解ってしまうだろう。あれだけ敵対していた男の下で働いていることを好奇の目で見るやからも多いはずだ。


「いやそんなことはない。」


 洋一さんは、真剣な目で訴えてくる。全く舌を巻くような男だ。こんな人間に俺などが教えれることがあるのだろうか。


「まあ、嫌でも働いてもらうぞ。うちは、タダでメシを食わせるほど余裕は無いんだ。それとも、FC店に行って1店員になるか?」


 試しに聞いてみる。


「ああ、もちろんだ。一度は現場も経験しておきたいからな。」


 凄い人物が入社してきたものだ。てっきり、断られると思ったんだがな。


「わかった。一度とは言わず、すぐに現場にヘルプに行けるくらいになってほしいもんだ。早速、スケジュールに入れておくよ。」


・・・・・・・


 一連のフィールド製薬のごたごたが片付いた金曜日の昼に1本の電話が入った。ツトムの母親からだ。話を聞くとツトムが居なくなってから、周りに暴力団風の男が現れるようになり、怖くなって実家のほうに戻っていたそうだ。


 警察からツトムと暴力団の関係を聞かされていて、報道で暴力団が壊滅したことを知り、改めて俺に連絡をくれたらしい。


 俺はツトムを匿っていることを告げ、その場所に連れて行くから1週間分の旅行の用意をしてもらい。自社ビルの前で明日の朝8時半に待っていてもらうことにした。


 翌日、俺とマイヤーが同時刻に自社ビルに向かうとツトムの母親がスーツケースを持ってやってきていた。自社ビルの社長室に入ると既に指輪は光っている。指輪を『送』に切り替えてツトムの母親の腕を俺とマイヤーで握る。逃げられたら困るからな。


「な・・・・。」


今度は、勉の母親は、どんなリアクションをするのか?


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