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第9章-第84話 しごとにんしょうこ

お読み頂きましてありがとうございます。

「えっ。もしかして操縦は社長が行うんですか?」


 翌朝、千代子さんをフライトシミュレーター装置まで連れて来るとコックピットに座る。


「なんなら、お前が操縦するか?」


 操縦桿を握り、『センサーネット入力』装置のヘッドギアを装着する。この装置は脳から直接指示を出せるもので、ヴァーチャルリアリティー時空間用にカスタマイズされている。


 通常、ヴァーチャルリアリティー時空間で装着するヘッドギアには歩く、手足を動かすといった簡単なものを付けられているのだが実際に手足を動かしたという感覚によるタイムロスが発生するので、現実世界の装置と結びつけると脳に入ってくる情報との時間差により、酷く酔うのだ。


 『センサーネット入力』装置では、入力情報の細かさによりその時間差を極限まで減らしている。まあどちらにしてもヴァーチャルリアリティー時空間と現実空間の伸張された時間差の中では僅かで見た目大差は無かったりする。


「いえいえ遠慮します。」


 まあそうだろうな。いくら戦闘機に詳しくてもフライトシミュレーターまで使いこなすとなると一部のゲーマーか一部のマニアに限られている。それにゲームのフライトシミュレーターとは違い、空での飛行特性などは航空機毎に違うらしいので役に立たないらしい。


「空路も決まっているし、殆ど自動操縦だ。」


「それなら私でも。」


「だがアクシデント発生時には千代子が対処しなきゃならないぞ。」


「無理です。何を笑ってるんですか。からかいましたね。」


「もちろんだ。お前の秘書としての能力は買うが、人数を揃えれば誰にでも出来る。逆らったお前を渚佑子に処分させないのは・・・なんだろうな。」


「処分って・・・。私を殺そうと思っていたということですか?」


「さあな。処分方法は渚佑子に任せるつもりだった。アイツのことだから死ぬほうがマシと思うような方法かも知れんがな。魔法使いにしてしまったからには放置出来ない。」


 奥さんたちは俺が希望しないことはしなくなったが、従業員や友人は危ない。善意でしてくれている分厄介なのだ。


「それは私を愛して・・・無いですよね。しかも精神的なオモチャですか。まあそれでも傍を離れるよりは良いです。きっと肉体的なオモチャに昇格してみますからね。・・・何を頭の先から下まで見ているんですか・・・首を振るなんて・・・あんまりです。」


「これ以上逆らうなよ。俺が放置しても、渚佑子が放置しないとは限らないからな。今回も散々甘いと言われてな。今後は渚佑子に一任するということになった。」


 俺が処分を決めると甘いことは自覚している。渚佑子なら信頼できるし、信頼するしか仕方がない部分もある。だから一定以上問題行動をした人間は渚佑子に丸投げすることにしたのだ。


 千代子さんも冷酷非情な渚佑子を見た人間のようだ。顔が引きつっていた。


「それじゃあ、社長は私をからかえるけど、私は社長をからかう場合は氷の上を歩くみたいなものじゃないですか。」


 どうやら、この辺りが今回の動機だったようだ。それでも、からかわないと明言しないあたり、あまり変わらないんだろうな。困った性格だ。


「お前なあ。何しに会社に来てるんだ。今回も宥めるのが、どれだけ大変だったか。・・・まあそれは置いておいて飛行試験に入る!」


「お呼びですか?」


 突然、渚佑子が現れる。千代子さんは声にならない悲鳴をあげている。相当怖いらしい。


「俺が戦闘機の操縦を行っている間じゅう周辺の警備とアクシデントがあった場合、人命救助を頼む。」


「人命救助って、誰かが死ぬということですか?」


 情報の漏れ方に寄っては戦闘機に併走くらいはされるかもしれない。


「予定空路にお待ち頂いているかもしれないだろ。」


 中国かロシア、はたまたインド辺りかな。


「戦闘にはならないとお考えですか?」


「攻撃してくるようならば叩き潰せ。それよりもレーダー装置を元にシステムが組まれている戦闘機ならば制御不能になりかねない。そうなったならば人命のみ救助を命じる。」


 壊れても無人機の試作品だ。残骸を回収すれば、それほど問題じゃない。反転の魔法陣は量産の目途がついているからな。


「それで、コチラはどうなりました?」


 渚佑子が千代子さんの方向に向く。名前を呼ぶのも嫌みたいだ。ここまでロボットのように俺の意図する行動を行うのも、なんだかなあ。


「もうオイタは慎むそうだ。そうだな千代子。」


 壊れた人形のようにカクンカクンと千代子さんは頭を縦に振る。取りあえず、組織的な問題行動は無くなるだろう。日常的なものが嫌なときは渚佑子を傍につけることにしよう。


「そうですか残念です。」


 何をするつもりだったんだか、渚佑子は本当に残念そうな顔をしていた。


従業員や友人に甘い主人公にも限界があるようです。

常人の限界点に比べれば遥か遠くですが。

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