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第9章-第81話 隼鷹型空母

お読み頂きましてありがとうございます。


ようやく500話目に突入です。


まだまだ道半ばですが毎週更新は必ず続けていく所存ですので

引き続きご愛読のほど、よろしくお願い致します。

「ようやく完成したな。隼鷹じゅんよう型空母。」


「違います。大型タンカー山田丸です。軽々しくその名前で呼ばないでくださいよ。今、日本には司令塔である空母は居ないことになっているんですから。」


 進水式に付いて来た千代子が悲鳴を上げる。本当に日本人って戦争が嫌いだよな。特に第二次世界大戦で活躍した艦艇の名前を出せば拒絶反応が返ってくる。


 六菱重工傘下の六菱造船に有事の際に空母転用可能なタンカーを造って貰ったのだ。普段はこの船で重油を運ぶ・・・ことになっている。まあ『ゲート』という名前の空間結合魔法陣から重油を取り出す紙袋みたいなものだ。


「隼鷹は凄いんだぞ。第二次世界大戦で唯一沈まなかった船だ。」


 散々、なんとかいうゲームに取り憑かれた友人が話してくれたネタだ。まあ船に穴を空けられて終戦時にはドッグに入っていたんだがな。


「だから言ってはダメですって。」


 俺は軍国主義者じゃないが、当時民間企業が開発していた船に対して援助を行い、有事の際に転用可能な艦船を作り上げたのは有意義な経済対策だったと言えるだろう。


 六菱航空機の開発の際にも政府が援助し爆撃機に転用可能な航空機を作り上げていれば、途中で資金が枯渇するようなことにはならなかったに違いない。


 実際にこの船には密かに電磁カタパルトが搭載され、F15戦闘機とF35戦闘機が積まれている。有事の際にはアメリカの宇宙軍から船員や戦闘機乗りが派遣されることになっているのだ。


「さて、乗り心地は如何かな。」


 この船の甲板は斜めに造られており、元の設計では煙突に代わりに煙を逃がす構造になっていたんだが船室になっている。動力源は空間連結魔法で月の核融合発電所に繋がっているので煙突など必要無いのだ。


 甲板が屋根代わりになっており、日の当たるところにはプールもあってリゾート気分を満喫できるようになっている。


 数十名規模ならばパーティーもできる大きさがあるので、今度のアキエの誕生日パーティーでも開こうかと画策しているところだ。


 進水式が滞りなく終わり出航する。派手な式典をやらなかった所為か見送る人々は僅かばかりだ。


「乗り心地って・・・全く揺れないじゃないですか。」


 もちろん、この船にも魔法陣や術式を組み込んでおり、全く揺れないのもその効果によるものだ。まあ洋上に出れば波が揺れている分、揺れている気分にはなるのだがな。


 しかも海面スレスレに浮くこともできるので船首を上げれば最大出力で100ノットを誇る設計だ。高速道路上のタンクローリーよりも早く移動できるのだ。


 本当は船後部に推進装置を取り付けて、宇宙にまで活動範囲を広げることができるのだが、何故か設計者に止められてしまった。その艦船は『隼鷹』では無く別の名前を付けて欲しいそうだ。


 こんなもの幾つも作れるかよ。


「やっぱり船旅はのんびりできるな。」


 絢爛豪華に造られた船長室で足を伸ばすとゆっくりと船が沖に出て行く。


「そこの扉を開けると社長室に繋がっているのに・・・ですか?」


 もちろん、船長として全航路乗船していられるわけでは無いので代理人を送り込むために社長室と繋げてある。


「うるさいな。気分だよ気分。さて、船内を探検するか。」


「社長の知らないところなんて・・・あるんですか?」


 痛いところを突かれた。設計会議どころか製造まで立ち会ったからな。スケジュール調整させては睨まれたっけ。


 仕方が無いだろう。異世界の機密情報の塊を傘下の企業とはいえ民間企業に造らせ、運用させるものだ。慎重にもなろうというものだ。


「お前ねえ。・・・設計通り造られたか確認も必要だろ。」


 魔法陣や術式を組み込む際には俺と渚佑子でやったが、その部分を覆い隠す作業は一般人だ。万が一のことがあるとどんな影響があるかわからないから最終確認も必要だろう。


     ☆


「ここが戦闘機の格納庫だ。」


 船長室から階段を使って降りていく。縦横無尽に造られている階段がこの船の特徴だ。


「ハァハァハァ・・・戦闘機なんか無いじゃないですかっ。」


 建物の高さにして3階分の螺旋階段を駈け降りると千代子はへばったのか。その何も無い空間に驚いたのか尻餅をついてしまった。だらしないなあ。


「普段は、その棚に入れてあるんだ。」


 この場所には壁に棚が作られており自動倉庫システムによりクレーンで簡単に取り出すことができるようになっている。もちろん壁にはハシゴも付けられており、クレーンが故障した際には使えるようになっている。


「棚って、こに2メートル四方ほどの空間のことですか?」


「そうだ。棚に袋が折りたたんで置いてあるだろう。これを甲板まで持って行き、戦闘機を取り出すんだ。この大きさの魔法の袋を作り上げるのは大変だったんだぞ。」


 この船にはエレベーターが無い。どの空母でもそうだが戦闘機を格納庫から出すためのエレベーターが真っ先に狙われるのだ。そうなれば空母はすぐさま劣勢に立たされ、無用の長物となってしまう。


 第二次世界大戦ではエレベーターが破壊された艦船の大部分が他の艦船の盾になり、沈んでいった。もったいない使い方だ。

終戦時に建造中だった艦船もあれば、生還して修理中だった艦船もあるわけです。

どちらもドックで終戦を迎えた艦船ですが、キズつきながらも生還を果たした『隼鷹』をモデルに選びました。

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