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第5章-第44話 みぎうで

お読み頂きましてありがとうございます。

「よくもやってくれたな。この株価でまさか、増資するとは思わなかったよ。しかも、えらく有名人を引っ張り出して来たな。まあいい。早速進めてくれ。」


 臨時株主総会に出席した際に、にこやかな笑みを洋一社長に向け、言い放つ。一度、こんな悪役っぽいセリフを言ってみたかったのだ。対決姿勢を打ち出すことで、他の株主に対してはホワイトナイトとしてのゴン氏に、より一層の安心感を持つはずだ。


「では、臨時株主総会を始めさせて頂きます。まずは、この席で、上位の大口株主の入れ替えがありましたので、発表致します。筆頭株主、ゴン・和義・カルタス氏33.4%、山田取無氏32.6%、田畑洋氏30%・・・・となります。」


 結局、経営陣の独断で決められる敵対買収の条項を使って限度ギリギリまで増資を行ったようだ。株が薄くなってさらに株価が下がる。そうなれば他の一般株主からも突き上げがあるだろうに・・・。


 その分経営陣に波及しないように経営陣が握っていた15%は事件の責任を取って、田畑会長に委託されるという形になったのか。たしかに田畑会長のほうが、株主受けはよさそうだ。


「では、第1の議案であります。経営陣の退陣及び創業家の医療関係者以外の各種関連会社の取締役の解任の件でありますが、ゴン氏より対案が提出されておりますので読み上げます。」


 さてどんな内容なのか?


 俺が簡単に作った案を一蹴できる内容であろう。


「・・・・・・げ、現経営陣の退陣のみ要求し、新経営陣は創業者の血縁ではないものでかつ、現経営陣の直属の部下を除くものとし、ゴン氏側から2名の非常勤、山田氏側から1名の非常勤取締役を要求する・?」


 司会役の会社の人間に取って、都合の悪い内容ばかりだ。ドモってしまっても仕方が無いだろう。


 辺りは騒然となっている。社長を含め、現経営陣は皆蒼白となっている。


 しかし参ったな、非常勤か・・・誰に行かせればいいのだろうか。自分で行くしかないか?


「続きまして、第2の議案であります。新経営陣による今回の事件への加担及び他に横領等が発生していないか調査を行う件にも、ゴン氏により対案が提出されておりますので読み上げます。第3者委員会を設立し、調査を行うものとし、その結果がどのようなものであろうとも公表し、新経営陣がこれを厳正に処罰を行うものとする。」


 そうかやっぱり、ド素人の俺が作る案よりもゴン氏の専門チームが作成するもののほうが、いいものがでてくるな。


 もちろん、俺もゴン氏の出した対案に対し、票を入れた。


「以上をもって、第1の議案、第2の議案共にゴン氏の対案が成立しましたので、これにて閉会とさせて頂きます。ありがとうございました。」


・・・・・・・


 閉会後、洋一社長と洋会長、ゴン氏、俺とであるホテルの一室で意見交換を行うことになった。若干時間があいていたので、2.6%の株式を売り払った。上位3人だけでも96%では、上場廃止基準に引っ掛かるのだ。あとでゴン氏に言っておけばいいか。


「いやー、負けました。まさかゴン氏を持ってくるとは、流石に私では勝負になりませんでしたね。」


 俺は、小物感いっぱいな態度で言った。


「でも、これで満足だろ。俺を退陣させて!」


 それでも洋一元社長の勘にはさわったようで、怒り狂っている。それをこちらにぶつけられてもな。


「私が出した案は否決されたわけで、引導を渡したのはゴン氏でしょう。それに、またいつか復帰できるでしょう貴方は・・・。会長には、研究所所長として残ってもらいますので、その所長が将来世間を認めさせる新薬を開発すれば、経営陣に復帰することも容易だ。」


 とりあえず、茶番はこの辺にしておいて、真面目に言った。


「貴様、何を知っている。」


「洋一。この人は、Y1号とY2号案件を委託してくれたのだ。」


「あの、新薬ですか現存する滋養薬の数十倍の威力があるという・・・。」


「洋一さん、あなたはこれから2つの選択肢があると思う。一つは会長の下で一研究員として、新薬に携わること。もう一つは、ゴン氏の下で、さらに経営者としての能力を伸ばすこと。」


「ああ、そうだな。もちろん、受け入れさせてもらおう。だが、もう一つ、選択肢が残っているぞ。それは、山田殿の右腕として働くことだ。」


 ゴン氏は、驚きの提案を返してくる。


「な・・・。」


「洋一、もう、わかっているだろ。山田殿は決して敵ではない。敵ならば、会社は無くなっていただろう。山田殿、洋一にもアレを見せてあげてくれるか?」


 俺は懐から別荘で撮った洋治と組員が親しそうにしている何枚かの写真を取り出して、洋一さんに渡した。


「な・・・、・・・はぁー。とんだ茶番劇だったわけだ。」


「洋一!」


「解っていますよ。お父さん。」


「ゴン殿、ライター貸してもらっても、いいですかね。」


「ああ。」


 俺は灰皿の上で、写真を全て燃やした。


「これで、洋治氏が暴力団と関与があったと思われる証拠は無くなりました。私も被害届を出していないので、これから捜査の手が伸びることもありえません。唯一、洋治氏が行っていたと思われる暴力団への利益供与は、フィールド製薬に創業者の経営者が居なければ、乗り越えられると信じています。」


「お父さん、新経営陣の指名ですが、いっそのこと会長と社長はゴン氏から出してもらっては、どうでしょう。本社部長クラスは現取締役と結びつきが強すぎるので、各研究所の所長を取締役として抜擢しましょう。事件への関与及び横領の調査は関連会社を含め、課長以上として・・・・いや、これは、新経営陣の仕事でしたね。」


「おお、やっとヤル気になったようだな。」


「ええ。私は山田殿の右腕としてゴン氏側の経営をチェックする役割を担いたいと思いますが、雇って頂けますかな?」


「ああ、大した給与を出せなくて申し訳ないが、お願いするよ。」


ようやく、右腕が見つかりました。


期末時点で大口株主が95%以上の株を持っている場合、上場廃止されるというルールがありますが、この株主総会は期の途中で開催していますのでこの時点で市場に放出すれば、問題となりません。

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