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第1章-第3話 けいたい

お読み頂きましてありがとうございます。


1つ前に投稿した番外編は、この話の途中に入ります。

「トム様。私、エトランジュと申します。お世話をお掛けしますが、どうぞ、よろしくお願いしますね。」


 王妃様は、その抜群のボディラインを惜しげもなく披露しつつ、優雅に頭を下げる。意外とおっとり喋る方のようだ。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


 そして、再び送還のための準備に取り掛かった時だった。


 ムームー、ムームー、ムームー。


 え、胸ポケットの中の携帯電話のバイブレーターが振動している。あれっおかしいな。こんな時間にアラームを設定した覚えはないんだけどな。


 携帯電話を取り出して開けてみると、なんと電話が着信している。あわてて通話ボタンを押す。


「オーナー、あ・・・よかった通じた。オーナー、今大丈夫ですか?」


 若干雑音が多いものの、この声はアルバイトの相馬くんの声だ。すこし、パニックになりながらも受け答えをする。


「ああ、そうだ。うん、いつもの通り発注を掛けておいてくれ。うん、もう少ししたらバックヤードのほうに行くから。うん、確認しておくって。うん、ごめんごめん。そうしてくれるかな。山崎さんにもよろしく言っておいて。じゃあ切るから。」


 信じられん。日本からの電話が通じた。携帯電話の画面を見てみると電波が2本も立っている。


 どういうことだ?ここは異世界だよな。まさか、この世界すべてがTVのセットか何かで、俺は騙されている?


 周囲を見渡しても、「どっきりカ○ラ」のプラカードを持ったオッサンが出てくる気配はない。


「トム殿、先程のはなんだ!その箱から声が聞こえてきたようだがのう。」


 セイヤの顔は驚きに満ちており、とても演技とは思えない。


「これは、携帯電話と言って、遠く離れた相手と会話できる装置です。」


「それは、ギルドカードの念話機能みたいなものかのう?」


「すみません。そのギルドカードなるものが何かわからないものですから、おそらくそうとしか言えないのですが・・・。」


「ああ、すまんすまん。ギルドカードというのは、その指輪のような魔法の道具である。ギルドとは、職業別の寄り合いだ。そのギルドで、身分証明に使われているものでのう。100メートル以内なら、そのカードを持つもの同士で頭の中で会話ができるのだ。もちろん、その指輪にも、その機能が内蔵されておる。」


「そうですね。よく似たものですね。これは100メートル程度ではなく同じ箱を持っていれば、国を跨いでも話ができるものです。」


「それは、すごいものだのう。でも、その箱は特別なのか?ここと日本は世界が違うはずであるぞ。日本の方と話していたようだが・・・。」


「うーん。それが、よく解からないんですよ。この場所って、何か意味があったりします?」


「ああそういえば・・・。まだ、話していなかったかのう。この場所は祖先が、神に強引に日本から連れてこられた場所だと言い伝えられておる。日本とこの世界との境には薄い膜があるだけで、神に連れてこられた際には、ほんの数メートル歩いてきただけという、眉唾な話が残っておるのう。」


「その話は本当かもしれないですね。」


 その話が本当だとするとその膜の開け方さえわかれば、こっちにくることは容易いかもしれないな。よし、今度呼ばれたときにいろいろと試してみよう。


「では、次の召喚は6日後の朝9時ということでお願いします。」


「ああ、あのトケイという箱の長い針が、真上で、短い針は左に向いている時だったな。」


 持ってきた商品の中に単3電池と目覚まし時計が3つあったので、携帯の時刻に合わせて、王宮の執務室と後宮の寝室、そしてこの召喚の間に置いて貰っている。


 自分の店の商品だが、さすがにこの重要な役割の時計を任せるのは今回だけだ。次に召喚される時は、もっと精巧な時計を持ってこようと思っている。


 一応この世界は日時計で運用されており、1時間毎に3種類の鐘が順繰りに鳴る仕組みである。例えば、午前6時の朝1つ目の鐘と午後0時の昼1つ目の鐘は同じメロディだ。実際に昨日の昼1つ目の鐘と今日の昼1つ目の鐘は、携帯電話の時計は午後0時を指していたので時差は無いと思われる。


・・・・・・


 送還のときも目の前がゆらゆらと揺れて、店のバックヤードに出た。店はもう閉店しており、もうアルバイトの相馬くんもパートの山崎さんも帰ったようだ。


 先程の電話で、お願いした通りセ○ムもまだ、カードを通していないようだ。警備がいれてあると、ここに帰ってきた際に警備員が飛んでくる。


 自分がオーナーであることを証明すればいいだけだが、時間もお金ももったいない。1回ごとに3千円取られるのだ。


 パソコンで発注をざっと見終わり、仮眠室に入る。店は午前10時開店の午後7時閉店だが年2回棚卸しを行う必要があり、最悪寝泊りできるように仮眠室を作った。といっても、発注用のパソコンの近くにベッド一つ分の個室を作っただけであるが・・・。


 1時間ほど仮眠をとった後、ポケットから袋を取り出し、逆さにして『全部出ろ』と唱える。


 ざくざくと18金のネックレスがベッドの上に広がる。かなり、あるなあ。思わずニタニタとしてしまう。全部一遍に現金化したいが、そうはいかないだろう。まずは明日、近くのジュエリーなんとかという、買取専門ショップを周ってみよう。


・・・・・


「ですから、刻印のないものは、買取できません。」


 貴金属の買取専門ショップのおそらく、アルバイトの姉ちゃんは、そう言う。近くにある買取ショップの3つのチェーン店にそれぞれ、1店舗ずつ行ってみたが、皆答えは同じだ。


 店舗には、特別な装置がおいてあるわけではなく、普通のパソコンとプリンター、そして、アルバイトの姉ちゃん、どこ行っても同じだった。


 アルバイトの姉ちゃんに詳しく聞くと、手作りの商品でないかぎり、必ず、商品には刻印が彫られており、それで純度を判断するらしい。それ以外の品物を取り扱わないこと、身分証明書の提示でほぼ偽者の対策ができるということだった。


 くそっ、1日の大半を使っても1円にも、ならなかったじゃないか。


・・・・・・・


 夜、家に帰ってから、パソコンで検索サイトを開き、検索文字列に「金買取」と入れる。いくつか質問サイトで、買い取りについて質問されていた。

 やはり、多くの買取ショップでは刻印で判断しているようだ。但し、大昔から買取を行っている老舗では、刻印なしのものも扱っているらしい。


 そういう店は、大都市に1店舗ずつあるくらいで、そんなに沢山の店を回ることはできなさそうだ。


「ええ、そうです。父の経営していた店舗の倉庫を片付けていたら、こんなにゴッソリと出てきたのですよ。帳簿で確認したところ、もう償却が済んでいる商品でした。」


 ここは近隣の政令指定都市にある、大黒田金属店さんだ。


「解かりました。では、この計測装置に置いていただけますか?」


 この比重計という装置で、金の含有量を調べることができるらしい。


「はい、たしかに18金のようです。詳しく調べますので、3日ほどお時間を頂けますでしょうか?」


「はい」


「それでは、お預かり証はこれです。」


「ありがとうざいます。では、お願いします。」


 少々話をでっちあげ異世界から持ってきた貴金属を、全てあずかってもらうことに成功した。でも困った、そう何度も使える手段では、無いのではないだろうか?


・・・・・・・


 3日後、結果が出たというので、再度、その店に向かった。


「意外な結果が出ました。合金として使用されている金属の内、1割ほどプラチナが使用されておりました。ですので、ご説明した見積額から幾分アップした金額が買い取り額となります。」


 俺が了承するとその場でネットバンクから、振り込んでくれた。金額は1000万円を少し越えたようだ。


 まだ、すべての倉庫の調査は終わってないので、またあったらと話をでっちあげ店を後にした。


 この手段が使えたとしても、後数回だろう。それまでに何とか別の換金手段を見つけなくてはならない。


・・・・・・・


 また検索サイトで、いくつかの文字列を入力し検索する。やはり、この方法しかない・・・か。

 早速、説明会に参加して質問してみると自己責任でなら構わないと言われた。とりあえず、この方法なら何とかなるか。


さて、どんな方法なんでしょうね。

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