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第8章-第80話 あらたなねっとわーく

お読み頂きましてありがとうございます。

「今日は何台だ?」


 俺が高層マンションの道路上で子供たちを庇って死んだあと、高層マンションの周囲に張り巡らせた混乱の魔法陣以外に主要幹線道路から高層マンションを含む敷地内に入る道路には俺に害意を持つ人間が入り込まないように結界の術式を組み込んである。


「今日は少なくて2台です。」


 俺が内閣総理大臣の任命を受けないことが伝えられると何処とも無く多数の街宣カーが集まってきているのだ。その内、何台かが無理に高層マンションの敷地内に入ろうとして運転を誤り、川の土手からダイブしている。


「皆、暇だな。」


「そういう問題ですかっ。余りにも事故が多すぎて心霊スポット化してるんですよっ。」


「何を怒っているんだ?」


「誰の所為だと思っているんですかっ。」


「千代子の所為だろ。それに霊現象は得意分野なんだから、そっちで処理しておいてくれよ。」


 俺を内閣総理大臣にする案は鷹山が出したそうだが、根回しは目の前の女が全て行ったそうだ。


「やはり怒っているんですね。」


 昔、調べたことがあるが千代子さんは陰陽師協会に所属しているのだという。内情を調べてみると殆ど活動らしい活動はしていないのだが、その会の賛助会員たるや1万人を超え、有名な実業家から世襲制の政治家まで名だたる家の方々が名を連ねている。


 協会には会費だけで億を超える金が集まっているらしい。神主資格も持つ彼らには地鎮祭などの仕事の斡旋も行われているらしいがそれだけでは無いと睨んでいる。


 今回、そのネットワークを使い、手の込んだ仕掛けを作り上げたのだ。コイツ実は裏から日本を牛耳ろうと思えば簡単なんじゃ無いだろうか。


「怒って無いと言っただろ。想定とは随分違うが、今度こそ国民に俺の意思は誰にも捻じ曲げられないと解っただろう。」


 予定通り、ヴァーチャルリアリティー時空間関連法案さえ通れば次期衆議院選挙には出馬しない。


 だから内閣総理大臣なんかになる必要は無い。どうしても津波対策が必要なら、数千億規模でも予算を組むだろうし、俺がかき集めた1年生議員たちが次も当選すれば大臣に任命して、連絡を取れるようにしておけばいいのだ。


「心霊スポットはどうするんですか?」


 いやに心霊スポットに拘るな。


「それは千代子に・・・いや。小さな祠を建てることにするよ。」


 スルーしようと思ったが、あるアイデアが浮かぶ。


「マジですか? 悪霊が寄ってきたらどうするんですかっ。()える人間にとっては怖いんですよ。」


 千代子さんには悪霊が見えるらしい。そういえば『勇者』の『鑑定』スキルで霊魂が見えると誰かが言っていたな。指環の『鑑』でも見えるかな。まあ見たくはないが。


「大丈夫だ。そこでは人が死なないから。」


「そこではって、何処で死ぬんですかっ。」


 千代子さんがヒステリック気味に捲くし立てる。余程怖いらしい。


「祠に移動の魔法陣を仕掛ける。そうだな。移動先は皇居のお堀なんかどうだろう。」


 右の人間か左の人間か真ん中か知らないが皇居のお堀に落ちたら、天に唾を吐くも同然の行為だ。少し・・・ちょこっとくらいは反省・・・してくれればいいなあ。


「それは、いい案ですね。あの辺りならば戦時中将校の地縛霊に取り込まれるでしょうから気になりません。」


 道理で俺が私人だったころから、千代子さんは中央官庁街には付いてこないわけだ。


「イヤな話を聞いたな。」


「大丈夫。大丈夫。見えなければ全く無害ですから。」


「見えると有害なのか?」


「うーん。虫の大群みたい。いや意志を持った霧かな。だから私たちは運転が出来ないんですよ。視界を塞がれれば簡単に事故りますからね。」


 なるほど。突然、視界を塞がれたら追突事故くらい起こしそうだ。高速道路上ならば死亡事故だ。


「そうすると陰陽師は本当に人を殺せるんだ。」


 悪霊が人を呪い殺せなくても、交通事故で死ねば。全く証拠を残さずに人を殺すことができる。


「無理ですって。ここ数百年、他人に霊を見せられる能力や霊を操る能力を持った陰陽師は出ていません。そもそも善良な人間には近づけ無い。殺したいと怨まれる人間だけに悪霊が近づくんです。」


 じゃあ、千代子さんが所属している陰陽師協会は詐欺だな。過去に人に霊を見せる能力が居たというだけで、年間億を超える金を集められるのだ。それが今じゃ紙飛行機しか飛ばせないなんて知られたら、あっという間に解散だ。


「俺の周囲に悪霊は多そうだな。」


「社長の周囲には居ません。ただの悪霊が近付いてきても『誑し』の能力でしょう。社長に悪意を維持できなくて、直ぐに昇天してしまうんです。特定の人や場所に取り付いた霊は無理ですけど、そこらのフラフラしている霊はイチコロですね。」


 まあ余程の強敵でも渚佑子の聖魔法なら祓われるだろうから、心配していないがな。


 しかし、これも獅子身中の虫というのだろうか。何か違う気がする。

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