第8章-第77話 たね
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「ねえ。ちょっと待ってよ。夜伽の相手なら候補が沢山居るから、その中から選んで。」
大女を持ち上げてベッドルームに連れて行こうとすると拒否られた。
「お前も俺を種馬扱いする気か?」
チバラギでは王族だから仕方が無いにしても、日本でも種馬扱いだ。科学技術と魔法を融合した世界を作り上げるには魔法の素養のある人材が必要で俺の子供なら高確率で必要な人材になれる。
解ってはいるんだがやっぱり抵抗があるのは確かなのだ。
「そうよ。貴方はこの世界では大切なタネなの。」
正面切って種馬扱いされたのは初めてだ。ここまでくると怒る気にもなれない。
「なんだ。150年の間に女しか生まれなくなったのか?」
日本では環境ホルモンが原因と思われる現象のひとつに胎児の性別が男から女に途中で変化することがあるらしい。数千年先には女性しか生まれてこなくなり人類が滅びるという説もある。
しかし150年程度では寿命が短い犬猫であってもそこまで変化しないはずだ。
「違うわよ。貴方の子孫が優秀すぎるの。」
「それは幾らなんでも買いかぶりすぎだ。優秀かどうかは親の教育が大部分を占めると思うぞ。」
「ううん。貴方の子孫は異常なほど魔法を使えるようになる確率が高いわ。だから、この世界の要職は貴方の子孫に占められてしまっているの。150年前に来てくれたときも王が独占したと責められているのよ。」
そういえばセイヤがチバラギの王族は8割の確率で魔法が使えるようになると言っていたな。だが世界の仕組みからすれば、それは思い込みなのだ。魔法使いになると思い込んでいれば、余程適正が無いかぎり教会で鑑定してもらう際に『魔術師』となる。
この世界でも俺の子孫だから魔法を使えるようになれると思い込んでいれば高確率で魔法使いになれるかもしれない。俺がこの世界から去って数百年の時が流れている。鼠算式に俺の子孫が増え魔法使いが増えていっているのか。その分、俺の子孫じゃないから魔法を使えないと思い込んでいる輩も多そうだ。
「俺の子孫で魔法が使えるから要職に就けるのは余り良くないな。王なんだから、本当に優秀かどうか。しっかりと見極めろよ。」
この世界の王は長寿なのだ。大抵のことは見極められるはずだ。
「見極めているわよ。でも本当に優秀なんだもの。貴方に子種を貰った女性が皆、優秀な教育者だったわけね。それが代々受け継がれていっているようよ。」
あのとき、子供が出来たと言った女性たちの顔を思い出してみる。この世界で衣食住を共にした仲間だ。俺はかなり侮られていたと思っていたんだが、そんなにも尊敬されていたのだろうか。なんか照れくさいな。
彼女たちの子供に優秀な教育者になれるような女性しか娶ってないのだろう。理想といえば理想なんだが、そうでない人間からしてみれば理不尽この上無い。
「拙いな。持たざる者の不満は溜まっていくばかりか。その辺りは王の裁量で何とかしてくれ。」
「その王がタネを独占したと非難されているの。貴方の責任よ。」
うわっ。全く隙が無い論理展開だ。150年も時間があったんだ当たり前か。
しかし渚佑子を連れてこなかったのは失敗だったな。何処かに嘘があっても見破れない。
「解った。その候補者とやらを俺に着けてくれ。行動を共にして貰う。気に入れば手を出せばいいのだな。」
30日もあるんだ。気晴らしのゲームだと思えばいいか。前みたいに強引に襲われるよりはいいだろうし、嘘があって見破ればゲームオーバーだ。
うーん。ますます不思議だ。俺と肉体関係を持とうと襲ってきた女性が優秀な教育者ねえ。顔を思い出しても、全く想像ができない展開だ。
「ちょっと解ってないじゃない。何で私にキスするのよ。」
ベッドの上に運んだ大女に対する行為を再開する。
「その女たちに手を出す日以外は、お前が相手だ。拒否する権利は無い。」




